DJ和のコンピCDが異例のヒット、なぜ30代の思い出を刺激するのか?

2000年代のJ-POPヒットソングコンピレーションCDが異例のヒット カバーは広末涼子

記事まとめ

  • 昨年発売の『ラブとポップ〜好きだった人を思い出す歌がある〜 mixed by DJ和』
  • 30万枚に届くロングヒットで、61週連続TOP30入りの異例のチャートアクションとなった
  • Every Little Thing「fragile」など“思い出がまとわりついている歌”を収録している

DJ和のコンピCDが異例のヒット、なぜ30代の思い出を刺激するのか?

DJ和のコンピCDが異例のヒット、なぜ30代の思い出を刺激するのか?

広末涼子が飾った、DJ和『ラブとポップ 〜好きだった人を思い出す歌がある〜 mixed by DJ和』のジャケット写真

J-POP DJのトップランナーであるDJ和が昨年8月に発売したミックスCD『ラブとポップ〜好きだった人を思い出す歌がある〜 mixed by DJ和』が30万枚に届くロングヒットとなっている。初動型のヒットが多いなか、2000年代のJ-POPヒットソングをミックスした本作の61週連続TOP30入りは、近年では異例とも言えるチャートアクションである。なぜ今、00年代のコンピレーションCDが、多くの人に受け入れられたのか、その理由を探る。

◆『ラブとポップ』のコアターゲットはDJ和と同世代

 DJ和がこれまで発売してきたミックスCDは、24作を数える。第1作目の『J-ポッパー伝説[DJ和 in No.1 J-POP MIX]』(08年)は、CDデビュー前に日夜クラブで繰り広げていた、「日本の曲だけを回して、カラオケ気分で歌いながらフロアで踊りまくる」DJイベントの集大成ともいえる作品だった。その後も同シリーズをはじめ、『J-ロッカー伝説』、『J-アニソン神曲祭り』、『A GIRL↑↑』等々、時代をジャンルやキーワードで切り取り、名曲に新しい息吹をもたらしてきた。

 そのCDデビューから10年、満を持して発売された『ラブとポップ〜』では、00年代にフォーカスし、当時のJ-POPヒットソング36曲を集結させた。80〜90年代のヒットコンピレーションCDは多いが、00年代のそれはリリースされていないことや、自身の青春時代に重なるこの時代に流行った楽曲を、今一度を輝かせたいという思いもあった。

「今、30歳前後の僕らの世代は、小・中学生の頃までは情報が遮断されてました。中3くらいでガラケーを持つようになって、高校に入ると皆が持っている感じ。遠出するわけでもないから生活圏も狭くて他人の影響を受けやすい。クラスという狭い世間の中で音楽を共有していました。だから、その頃にヒットした曲を聴くと、当時の思い出がふわーっと膨らんで、懐かしさが増すんですね。今の若い子たちは、ほぼスマートフォンを持っているので、SNSを通して趣味の合う人と繋がることができるから、クラスの仲間と無理に話を合わせる必要もない。そういう意味では、00年代までがギリギリ、みんなの共通の音楽、共通のJ-POPが存在していた時代なんじゃないかと思います」(DJ和/以下同)

◆ヒット曲に法則のない00年代は多様化の時代

 青春時代に共有したJ-POPの中から選曲された36曲の共通点を尋ねると、“久々に聴いても、ふと歌えてしまう歌”、そして、“思い出がまとわりついている歌”という独特の言い回しの答えが返ってきた。

「1曲目の「fragile」(Every Little Thing)からしてそうですね。この曲は『あいのり』の主題歌で。僕らの世代にとってあの番組には思い出がまとわりついているんですよ(笑)。そう考えると、00年代はドラマよりバラエティの時代だったのかもしれませんね。90年代はドラマと音楽の関係が密接で、双方がヒットしましたが、00年代はまたそれとは違って。だから、00年代を「LOVE」ひと言では括れなくて、「POP」も付けたんです」

 配信時代の幕開けで始まった00年代は、女性シンガーの活躍、R&BやHIP HOP、青春パンクの台頭、カバーブーム、大規模なフェスの活況等々、目まぐるしくムーブメントが移り変わり、音楽も多様性を増していった。この時代のヒットコンピレーションCDがリリースされていない理由は、その“変化”にあったようだ。

「10年代からの音楽は急激に変化を遂げたと思ってるんですが、その手前の00年代は徐々に多様化していったというか、ヒット曲に法則がないんです。いろんなジャンルが混じり合っていて定まっていない難しい時代だと、ミックスしていて感じました。着メロが始まって、着うたが流行って、YouTubeが台頭したこの時代に何を聴いていたかで、その後の音楽との関わり方が定まったような、そんな分岐点になった時代とでも言えばいいでしょうか。僕自身もその頃、HIP HOPや打ち込みのR&Bが好きで聴いていて、それがきっかけでクラブミュージックに入っていきましたからね」

◆「サービスエリア」という、非日常空間での実演販売DJイベントが大好評

 国内の活動に留まらず、最近では、海外イベントにも出演するなど活動の幅を広げているDJ和だが、実は現役のソニーミュージックのスタッフという顔も持ち合わせている。そのため、企画立案から社内プレゼン、楽曲の権利許諾作業と、ミックスCD制作にまつわる作業を行い、プロモーション展開も考える。まさにCD制作の川上から川下まで、一気通貫でこなしているのだ。その過程で養われたマーケティングの視点は、本作でも活かされている。

 今回、彼は、自身の原点とも言える海老名サービスエリアでの実演販売DJイベントを行った、同所は、08年のゴールデンウィークにデビュー作『J-ポッパー伝説』を携えてDJ実演販売を行った思い出の場所でもある。

「こういったコンピレーションCDは、家でじっくりと聴くようなものではなく、通勤や通学、ドライブ中など、移動している際の“ながら聴き”が合っていると思ったんです。10年前のゴールデンウィークに、海老名SAで『J-ポッパー伝説』の実演販売をしたときに、家族連れやカップル、友だち同士が行楽のお供に1枚、みたいな感覚で購入してくれたことを思い出して、今回もやってみようと。いろんな曲が入っているので、人数が多いほどそれぞれの思い出でワイワイ盛り上がれるんですよね」

「僕らは下り方向でプロモーションを行うことが多いんですが、あそこは、これから行楽に出かけようとする人が立ち寄る場所ですよね。トイレに行ったり、屋台で腹ごしらえしたり。車から降りた瞬間からワクワクする非日常な空間、観光地なんです。だから、CDの実演販売もけっこう自然に入り込めている気がしました。「久々にCDを買った」という声を聞くと、SAってそういう衝動を起こさせることができる場所なんだなって」

◆J-POPミックスへの理解を深め、新たな楽しみ方を提案した10年の歩み

 本作を聴いたリスナーが抱くであろう甘酸っぱさや、懐かしさ、といった情感を見事に表現した、広末涼子のカバーヴィジュアルのインパクトも大きかった。このジャケット写真で、一気に当時にタイムスリップ。ダメ押しは、1枚2000円という衝動買いを誘発する価格だった。

「今の30歳前後くらいまでが、ギリギリ衝動買いした経験のある世代だと思います。これだけのヒット曲が入っていたら、本当は安すぎるくらいなんですが、CDを久々に購入する層に関心を持ってもらうには、「お得感」の創出は重要だと思って、思い切ってこの価格にしました」

 10年間ミックスCDを出し続けていることもあって、今でこそ、楽曲の利用許諾も得やすくなったようだが、1作目を発売した頃は、なかなかミックスCDに対する理解が得られず、困難の連続だったそうだ。「今でも、もちろん断られてしまうことはあります。1曲も断られなかったコンピはなかったですね」と笑うが、DJ和のこの10年の歩みは、J-POPミックスへの理解を深め、「つなぐ」ことでJ-POPの新たな楽しみ方を根づかせることに成功したと言えるのではないだろうか。

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