石井裕也監督が「一人だけ異彩を放っていた」と絶賛する、注目の新人俳優・細田佳央太の素顔に迫る

石井裕也監督が「一人だけ異彩を放っていた」と絶賛する、注目の新人俳優・細田佳央太の素顔に迫る

映画『町田くんの世界』で主人公・町田くんを演じる細田佳央太 撮影/草刈雅之(C)Deview

映画『舟を編む』「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」などを手掛けた石井裕也監督の最新作、映画『町田くんの世界』が、本日6月7日より公開。主役級の豪華キャストが脇を固める中、1000人超えオーディションを勝ち抜きW主演に大抜擢された、"真っ白な新人"細田佳央太と関水渚が注目を集めている。

 同作は第20回手塚治虫文化賞で新生賞を受賞した安藤ゆきの同名コミックの実写化。岩田剛典、高畑充希、前田敦子、太賀、池松壮亮、戸田恵梨香、佐藤浩市、北村有起哉、松嶋菜々子と、日本映画をリードする主役級の顔ぶれが揃う中、演技経験ほぼゼロの“超新人”の2人が主演に抜擢された。細田が主人公の「町田くん」を、関水がヒロインの「猪原さん」を演じている。

 主演の選抜にあたっては1000人を超えるオーディションを実施。その中から石井監督が「一人だけ異彩を放っていて、理屈でも経験でもない、作品に人生を捧げられる人だと感じました。この人と組めば間違いないと16歳に思わせられました」と絶賛したのが、現在は高校3年生の細田だ。オーディションサイト『Deview/デビュー』では、そんな注目の新人・細田に、本作のオーディション秘話や豪華キャストだらけの撮影現場について、今後の目標などをインタビュー。

 オーディションを勝ち抜き、見事“主演”を勝ち取った細田だが、オーディションを受けた際の手応えに関しては、「正直まったくなかったです」と明かし、「オーディション自体も石井裕也監督が審査してくださったのですが、ダメ出しばかりで……。その度に修正しながらお芝居をしたのですが、結局、監督に納得してもらえないまま1日終わったことも多くて、悔しいなあという気持ちが大きかったんです。なので、絶対選ばれないだろうなと思っていました」と吐露。

 そのため、主演に決まった際は「本当にびっくりしました」と言い、「ある日、またオーディションをやるということで呼ばれていったら、(猪原さん役の)関水さんがいて、そこで2人でお芝居をしたんです。そしたら監督が『いいんじゃないですかね』と。最初、僕はその監督の言葉を聞いたときに『今日はもういいです』という意味かなと思ったんです。それが、僕と関水さんで行きましょうという意味だということが、周りの雰囲気でだんだんわかってきて。なので、嬉しさとか実感も、徐々に湧いてきた感じでした」と出演が決まった際の状況を振り返った。
 
 細田が演じる「町田くん」は、ルックスも地味で勉強も運動もまったくできないが、人を愛することにかけてはズバ抜けた才能の持ち主。困っている人は決して放っておけないその優しさが関わった人々の心を癒し、いつしか世界まで変えてしまう(!?)奇跡のような人物だ。それだけに役作りも、「原作や台本を読んでも、自分の中で“町田くん”という人物がなかなか掴めなくてとても難しかったです。普通に“優しい”、“思いやりがある”とかを超えた、今まで会ったことのないような人物だったので、どうやったらいいのか頭を抱えてしまいました」と悩みに悩んだことを明かしている。そこから抜け出すヒントとなったのが、「監督が『町田くんは世界中の人を家族だと思っている。それって神様だよね』という言葉を投げかけてくださって。“町田くん=神様”という、僕と監督の間での共通ワードができたことで、迷いがなくなったようなきます」と、監督との二人三脚での役作りを語ってくれた。

 ちなみに町田くんと自身の共通点に関しては、少し考えた後に「あそこまで、すべての人を分け隔てなく愛することはできないかもしれないけど……。ただ、わからないことがあっても投げ出さないこと、問題から逃げないで真正面からぶつかりにいくところは近いものがあるのかなと思います。今回の町田くんの役作りもそうでしたし、わからないことは答えが見つかるまで考えたいほうです」と返答。取り組んだことを全力で全うするその姿勢は、「作品に人生を捧げられる人」という石井監督の絶賛コメントにも通じるところがあるだろう。
 
 新人だったら怖気付いてしまいそうな豪華共演陣が発表された際には、「本当にびっくりしましたし、不安やプレッシャーもありました。だけどそこに負けている場合じゃない、食らいついていこうというスイッチも入りました」と熱い一面をのぞかせた。しかし、並み居るキャストとの経験の差だけは埋められない。「どんなに食らいついていっても、みなさんが倍以上の芝居の力で返されてくるので、とても及ばなかった。自分の技術の足りなさが悔しかったし、もどかしかったです」という新人俳優が必ず経験するであろう"通過儀礼"を本作で味わったようだ。

 約1ヵ月におよぶ撮影は刺激に満ちていたようで、なかでも「後半に池松壮亮さんと本音をぶつけ合うシーンがあるのですが、そのときに芝居をしていて初めての感覚を味わいました。池松さんがバーッと言ってくる言葉に対して、自分もわけがわかんないけど言葉が溢れてしまうという芝居で、池松さんの熱量に引っ張っていただいた面は大きかったと思うんですけど、ものすごい高揚感があったんです。OKが出てからも、しばらくその熱が収まらなくて、“なんだろう、この気持ち、芝居ってこんなに楽しいんだ!”と感じた出来事でした」と、初めて味わった役者としての喜びを興奮気味に語ってくれた。

 現在、高校3年生の彼が芸能界に入ったのは小学2年生の時。「テレビを見ていて、純粋に『この中ってどうなっているんだろう? 入ってみたい』と思って、そのことを母に話したら(現在の事務所に)書類を出してくれたんです」と"幼かった動機”を語る。そこからいくつかの現場を経験していく中で、「初めてテレビに出させていただいたときに、マネージャーさんからいくつかダメ出しがあって、自分ができないことがすごく悔しかったんです。それで“もっと上手くなりたい”と思うようになったのが、中3くらいの時で、この『町田くんの世界』で、その思いはもっと強くなりましたね」と役者業への思いを明かす。

 彼のコメントにしばしば出てくるのが「自分ができないことの悔しさ」。柔らかい口調や雰囲気からは意外なほどの“負けず嫌い”一面を持っており、そして「できない自分」を決して諦めないこと。それが彼の原動力となっているようだ。
 
 なお、完成した『町田くんの世界』を見たマネージャーからは「映画の中心にはなれていたよ」との評価をもらえたという。「ただ、それはやっぱり監督やスタッフさん、キャストのみなさんに支えていただいて、ようやくなれた“真ん中”だから、『これからはもっと頑張って、自分の力で真ん中に行けるようにしないとね』とも言われました。今回の作品を通して一歩前進はできたのかなと思うけど、まだまだです」と俳優への決意を新たにしている。
 
「今までの人生で一番頑張った1ヵ月間だった」という本作を経て、今後は「誰みたいになりたい!というような、明確な目標は立てないようにしています。決めてしまうと、その人のことを超えられないよって言われたことがあって……。いろいろな現場に挑戦して、どんな役にもなれるふり幅の広い俳優さんになれるよう、勉強していきます!」と抱負を明かした。

 映画『町田くんの世界』は、6月7日(金)より全国ロードショー。なお、オーディションサイト『Deview/デビュー』では、本作で主演を務めた細田佳央太、関水渚のインタビューをそれぞれ掲載中。

取材・文/児玉澄子

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