確固たるジャンル築いた“声優アーティスト”、その変遷と令和時代の注目株とは?

確固たるジャンル築いた“声優アーティスト”、その変遷と令和時代の注目株とは?

次世代を担う声優アーティストとして注目の逢田梨香子 (C)ORICON NewS inc.

元来はアニメのキャラクターに声を当てるのみの存在だった声優だが、今や音楽にグラビア、テレビやラジオまでマルチに活動。“声優アーティスト”として、ひとつのジャンルを築いている。かつての音楽業界では、“声優”であることがある種の足かせになることさえあった。そんな声優アーティストたちは、いかにして現在の位置を築いたのか。これまでの変遷を振り返りつつ、令和時代を担う注目の声優アーティストに触れたい。

■声優ブームの先駆けとなった林原めぐみ、だが音楽業界では“偏見”も

 声優の歌といえば、70年代半ばから『宇宙戦艦ヤマト』の麻上洋子、『Dr.スランプ アラレちゃん』の小山茉美らがレコードを出していたが、スポーツ選手などの歌と同じく、“企画もの”の位置づけだった。

 声優で初めてレコード会社と専属契約し、継続的に音楽活動を行ったのが林原めぐみだ。1991年からコンスタントにリリースを続け、アルバム、シングルと声優ソロ初のTOP10入りを記録。歌唱力や表現力も評価されていたが、彼女のスタンスは「声優第一」。シングル曲は『スレイヤーズ』など自身が出演するアニメのテーマ曲が中心で、ライブは「声の仕事に支障が出る」とやらなかった。

 しかし、結果的には林原の活躍が呼び水となり、90年代半ばには声優のCDリリースが一気に増えて、声優雑誌も相次ぎ創刊。元々は裏方だった声優自身が表に出て、ブームが生まれた。その中で人気を呼んだ双璧が、椎名へきると國府田マリ子だ。

 椎名は可愛らしいルックスに反してハードロック志向を強め、97年に声優初の日本武道館ライブを開催。國府田は後に椎名林檎などの名プロデューサーとなる亀田誠治らと組み、良質な作品を生み出し続けた。彼女たちは林原と逆に、ライブも精力的に行いつつ、声優活動と音楽活動に線を引いていた。当時の音楽業界では声優の歌に偏見を持たれがちで、音楽に真摯に取り組むほど声優色は消さざるを得ない状況が一因だった。

 この頃には『美少女戦士セーラームーン』の三石琴乃、『新世紀エヴァンゲリオン』の緒方恵美、ゲーム『ときめきメモリアル』の金月真美らもアーティスト活動を行う一方、声優人気に乗ろうとアニメに数本出ただけの新人のCDデビューも多く、クオリティは玉石混交。“声優バブル”の様相を呈して、淘汰も起きた。

■水樹奈々の活躍で認知拡大、平野綾らはビジュアル生かしグラビアも

 そうした中で、90年代末から2000年代始めに頭角を現したのが、堀江由衣と田村ゆかり。彼女らは林原と同じく自身が出演するアニメの主題歌を歌いつつ、椎名や國府田のようにライブ活動も行った。声優かアーティストかと肩肘張らず、まさに声優アーティストして歌とアニメをリンク。また、この頃には声優の音楽活動が業界にも一般にも広く認知され出して、土壌が出来上がってきていた。

 そして、2000年には水樹奈々がCDデビューする。『魔法少女リリカルなのは』や『バジリスク〜甲賀忍法帖〜』などアニメで数多く主役級を演じつつ、幼少期から演歌歌手を目指して鍛錬し、チビッ子のど自慢荒らしとして鳴らした歌唱力は圧倒的。シンフォニックロックなどもいち早く取り組み、アニメと音楽の双方から幅広いファンを得た。アルバムとシングルで1位、ドームやスタジアムでのライブ、『NHK紅白歌合戦』出場(6年連続)ほか、数々の“声優初”の快挙を達成。押しも押されぬ声優アーティストの第一人者となった。水樹と同い年の坂本真綾も、音楽的な評価は極めて高く、ミュージシャンにもファンが多い。

 06年に大ヒットアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』で主人公を演じた平野綾は、『DEATH NOTE』、『らき☆すた』など話題作で相次ぎヒロインを演じる一方、アーティスト活動でもヒットを連発。さらに『少年マガジン』や『週刊プレイボーイ』などコミック誌、一般誌の表紙グラビアもたびたび水着で飾っている。それまでの声優にはなかった展開で、声優界と芸能界の垣根はさらに低くなった。

 ソニーミュージック系のレーベル、ミュージックレインが行った『スーパー声優オーディション』では、「声優のみならず歌手、俳優、モデルなど幅広く活躍できるスーパー声優」を募集。モデル体型でスタイル抜群の戸松遥ら4人の合格者で結成したユニット・スフィアが2009年にデビューし、成功を収めている。また2011年には、大手芸能事務所のホリプロが、深田恭子、綾瀬はるか、石原さとみらを輩出したオーディション『タレントスカウトキャラバン』で“次世代声優アーティスト”に特化して募集。グランプリの田所あずさのほか、大橋彩香、山崎エリイらがデビューしている。

 一方、2010年代には、女子高生バンドを描いた『けいおん!』など音楽をモチーフにしたアニメから、声優たちが劇中のキャラクターとして歌ったヒットが生まれるように。その流れで大ブレイクしたのが、2013年より放送の『ラブライブ!』から生まれたμ's(ミューズ)だった。アニメ内のスクールアイドルが3次元に飛び出したようなライブを声優たちが行って人気を呼び、2015年には『NHK紅白歌合戦』に出場。翌年に東京ドームでファイナルライブを行った。90年代には声優の“本業”とされなかったパフォーマンス力とビジュアルが、2次元を具現化できるレベルになったからこそ成立したユニットだった。

■令和時代を担うのは?「声優界最高の美女」逢田梨香子に注目集まる

 そして、令和の時代を担う若手声優アーティストの中で、とくに注目を集める3人がいる。中でも水瀬いのりはまだ23歳だが、キャリアは9年になる。NHK朝ドラ『あまちゃん』に劇中のアイドルグループのメンバーとして出演した経歴もありつつ、声優としては2015年の劇場アニメ『心が叫びたがってるんだ。』の主人公役で広く知られるように。同年末にCDデビューし、透明感と力強さを兼ね備えた高い歌唱力を発揮。CDセールスも好調だ。

 社会現象化した『けものフレンズ』のメインキャラクターを演じた尾崎由香は、昨年8月にソロデビュー。キャラクターのイメージと自身の独自性を両輪にしたシングルを出してきて、この8月には1stアルバムをリリースする。よりアーティスト色を強める一方で、水着を含む写真集も発売していて、身長150センチの愛くるしいルックスも魅力だ。

 『ラブライブ!』の新シリーズ『ラブライブ!サンシャイン!!』のユニットAqours(アクア)からは、逢田梨香子がこの6月に1stEP『Principal』でソロデビューした。元より『週刊ヤングジャンプ』で表紙グラビアを飾り「声優界最高の美女」と銘打たれたビジュアルの良さは際立つ。アルバムには自らも出演するアニメ『川柳少女』のEDテーマ「ORDINARY LOVE」などを収録して、声優活動と連動。しかし、Aqoursのキャラクターとはひと味違う繊細な表現を試みている。

 「今回の制作で一番大きかったのは、自分自身の声というものを知れたこと」と語り、ワンマンライブが目標とも。そんな逢田は、声優アーティストの歴史が生んできたものがすべて流れ込んだ存在のようでもある。そこから未来へ、何を生み出すかが注目される。

※環境により逢田梨香子の「逢」のしんにょうが1点で表示される場合がありますが、2点が正式表記です。

(文・斉藤貴志)

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