『少年寅次郎』毎熊克哉、“渥美清さんの寅さん”をほうふつとさせる熱演

『少年寅次郎』毎熊克哉、“渥美清さんの寅さん”をほうふつとさせる熱演

NHK総合の土曜ドラマ『少年寅次郎』寅次郎の父・車平造を演じた毎熊克哉 (C)ORICON NewS inc.

国民的映画『男はつらいよ』(山田洋次監督)の主人公・車寅次郎(渥美清)の少年時代を描く、NHK総合の土曜ドラマ『少年寅次郎』がきょう16日放送(後9:00〜9:49)の第5話で最終回を迎える。寅次郎の幼少期を演じた藤原颯音、思春期を演じた井上優吏が、“渥美さんそっくり”と話題だが、寅次郎の父・車平造を演じる毎熊克哉も若かりし日の渥美さんをほうふつさせる熱演を見せている。

 映画シリーズの第1作(1969年公開)は、中学生の頃に父とケンカして家を飛び出した寅次郎が、20年ぶりに故郷・柴又に帰ってきたところからはじまった。ドラマ『少年寅次郎』の最終回では、その柴又を離れる決定的な親子ゲンカが描かれる。

 平造は、血のつながりがあるにも関わらず寅次郎のことを毛嫌いしてきた。寅次郎も父親のことを苦手にしつつ、育ての母・光子(井上真央)を悲しませないために、何とか踏みとどまってきた。しかし、中学生になって家族以外の人との関わりが増えると、父親との関係に屈託を抱くようになる。父親に対する嫌悪が澱のように溜まっていき、第4話のラストで寅次郎はついに爆発してしまった。

 SNS上でも、平造のクズ親父っぷりは大きな反響を呼んでいる。「長年映画の『男はつらいよ』を観てきましたけども、毎熊さんの車平造役に寅次郎に繋がるDNAを感じました」「個人的には父ちゃん車平造の一挙手一投足に目が行ってしまう。寅さんの振る舞いのルーツを感じさせててスゴい」と、毎熊の演技を称賛する投稿に、記者も激しく同意する。

 制作統括の小松昌代氏に「毎熊さんが演じる平造が、渥美さん演じる寅さんに見えた」と伝えたところ、“狙い通り”と言いたげな反応を見せた。「調子良くとぼけるところなど、まるで渥美さんの寅さん。平造のDNAは確実に寅次郎にも受け継がれている。寅次郎を見ていると、自分を見ているようで素直になれない不器用さを毎熊さんも意識して演じていたと思います」と小松氏。

 寅次郎に対する平造の言動は、近親憎悪ともいうべきもの。「ご本人はすごく真面目な人ですから、特に小さな寅ちゃんを罵るせりふに苦労していました。しかし、自分の中にない感情を芝居で表現した時にこそ、役者としての味が出る」(小松氏)。その味が最高潮に出ているのが最終・第5話だ。

 毎熊は、ちょうど1年前に同局で放送されていた連続テレビ小説『まんぷく』に、ヒロイン・福子(安藤サクラ)の夫・萬平(長谷川博己)が開いた製塩会社の従業員・森本元役で出演し、一躍有名に。

 その朝ドラ出演につながったのが、15年の『第28回東京国際映画祭』日本映画スプラッシュ部門で作品賞を受賞した、小路紘史監督の長編デビュー作品『ケンとカズ』(主演)で、「遅咲きの新人」として脚光を浴びると、出演オファーが殺到。昨年は、吉永小百合主演の『北の桜守』、是枝裕和監督の『万引き家族』、長瀬智也主演の『空飛ぶタイヤ』、「私の奴隷になりなさい」シリーズなど、大作からインデペンデント作品まで、10本以上の映画に出演した。

 今年5月公開、水谷豊監督の『轢き逃げ 最高の最悪な日』では、刑事役でコンビを組む岸部一徳との軽妙なやりとりが話題に。平造役にキャスティングされた決め手は、今年5月の主演舞台『後家安とその妹』で見せた、クヤクザ紛いの放蕩三昧の日々を送る元御家人役の演技。「ダメ男なのに、ものすごく色気があった。お芝居で出してくる魅力と、ご本人とのギャップも魅力的だと思いました」(小松氏)。昭和の香りが漂うルックスも相まって、クズ親父だがどうも憎めない、いい加減で頼りにならないがモテてしまう、平造像を見事に体現した。

 『男はつらいよ』ファンには、「おいちゃん(泉澤祐希)もおばちゃん(岸井ゆきの)も御前様(石丸幹二)も、映画のキャストとは別人ですが、20年経ったら映画の第1作になんとなくつながるね、と思っていただけたらうれしい。それを目指してドラマを作ってきました」と、小松氏。

 一方、『男はつらいよ』に触れたことがなかった人には、「平造みたいに素直になれない人、愛情表現が不器用な人がいて、腹が立つこともあるけれど、まぁまぁ許せる寛容さが昭和の時代にはあった。今の価値観では『えっ?』と驚いたり、疑ったりするようなことも、正しいと信じていた時代があった。それをドラマの中でちゃんと描いて、昭和の庶民の泣き笑いを楽しんでもらえれば。そして、映画が観たくなったと思ってもらえたらうれしいです」。

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