フォロワー89万人超の『家事ヤロウ!!!』、“自粛”の影で「落ちこぼれ」が成功したワケ

フォロワー89万人超の『家事ヤロウ!!!』、“自粛”の影で「落ちこぼれ」が成功したワケ

『家事ヤロウ!!!』は毎週水曜 後11:15〜放送(※一部地域を除く)(C)テレビ朝日

バカリズム、カズレーザー、中丸雄一が出演する番組『家事ヤロウ!!!』(テレビ朝日系)の公式インスタグラム(@kajiyarou)が、バラエティとしてはダントツ1位のフォロワー89万人を突破し、話題に。外出自粛で自炊をする人の多かった4月29日の放送では、視聴率も自己最高を更新したという。インスタを活用した取り組み、そして番組の好調の理由とは? プロデューサーに聞いた。

■バラエティで一番のフォロワー数、レシピSNS好調の影響は?

 同番組は「ワンオペ家事」が問題視される社会的背景から、独身男3人が将来のために「主婦が夫にやってほしい家事」について学習するというコンセプトでスタート。料理を中心に、素人でも手軽に取り組めそうな家事を紹介するほか、バカリズムやカズレーザー、中丸による率直でシニカルな反応でも人気を集める。

 現在、同番組公式インスタグラムのフォロワー数は89万人(6月17日現在)。このフォロワー数は、テレビ番組としては佐藤健、上白石萌音出演ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)の102万人(現在)に次ぐ第2位であり、バラエティ番組としてはトップ。制作側は、この数字をどのように受け止めているのか。

 「番組の宣伝になれば…くらいの気持ちで始めましたが、フォロワー数という具体的な数字で出てくると嬉しいですね。出演者の3人や制作陣の士気も上がっているのではと感じます」(プロデューサー・鈴木忠親氏/以下同)

 最初の投稿は2019年9月。2018年4月に開始した同番組は翌年10月に全国ネットになっているので、ちょうどその直前にインスタがスタートしたことになる。料理研究家・リュウジ氏のTwitterが144万人(現在)のフォロワーを獲得するなど、料理やレシピとSNSの親和性が認められている昨今。『家事ヤロウ!!!』のインスタも、宣伝はごく少数でレシピがほとんどを占めているだけに、そういった時流に乗ったのかと思いきや、そうでもないらしい。

 「もともと、よく出演していただいている、食育インストラクターの和田明日香さんが、番組で紹介したレシピをご自身のインスタに上げてくださっていたんです。それを知って、ゲストの方に申し訳ない気持ちと、焦りが…(笑)。ちゃんと公式でやるべきだろうということで始めたので、今の状況はあくまでその“結果”ですね」

 とはいえ、現在は制作ディレクターが担当しているというインスタは、料理写真が数枚と簡潔なレシピというシンプルでわかりやすい構成。「ディレクター自身、料理をする人ではない」というだけあって、家事素人にもとっつきやすい内容だ。また、写真にはYou Tubeのサムネイルのような文字を入れ、ユーザーの興味を喚起。自粛期間中には「#enjoykaji」というハッシュタグを付けるなどの工夫が施された。

 「気をつけているのは、放送中や放送直後にインスタをアップすること。この番組を観てくださる方は、そこまで料理好きでも、興味があるわけでもないと思うんです。番組を観ながらついでにスマホでインスタを見て…というリアルタイム感がないと見てもらえない。アップされるのを待って後からチェックしてくれるほど、優しくないだろうなと思っています(笑)。だから、そこにタイムラグが出ないようにはしていますね」

■自粛期間に最高視聴率をマーク、「そこまで興味のない」3人の反応とSNSがリンク

 まさに「そこまで料理好きでも、興味があるわけでもない」視聴者を想定しているところが、『家事ヤロウ!!!』という番組の特徴であり、好調の理由とも言える。それが、くしくもコロナ禍による自粛生活の時期に浮き彫りになった。

 「コロナで撮影ができないなど、もちろん不便もありました。ですが、実は番組の視聴率は4月以降好調で、29日には最高視聴率を更新。普段料理をしていなかった人が自炊が必要になり、家にもいるので初めて番組を観てくれたという人も多くいたと思います。料理コンテンツはもともと人気なのですが、レベルが高い人は意外とごく一部で、『家事ヤロウ!!!』くらいが世の中の大半なのではないかと感じたりもしましたね」

 実際、同番組で紹介する料理は、ベースとなる知識や腕前は必要なく、「こんな簡単に美味しいものができるのか」「これなら自分でも挑戦できるかも」という声も多い。バカリズム、カズレーザー、中丸の3人による反応もまた、視聴者と通じるものがあるそうだ。

 「そもそも、料理にそこまで興味のない3人がやっていますし、バカリズムさんやカズレーザーさんは、今でもプライベートではあまり料理をしないと聞いています。そんな彼らだけに、少し難しかったり興味がわかない内容だと、明らかに『面倒くせえ!』という顔をするんです(笑)。面白いことに、それはSNSやネットの反応ともリンクしている。だからこそ、制作側は“演者=視聴者”と考えることができ、3人の反応がいいバロメーターになっていますね。あの3人でもギリギリできる、やる気になる内容や、今さら聞けないアレコレを扱う。それが、他の番組との違いではないでしょうか」

 たしかに、世に料理や家事を扱う番組は数々あれど、ここまで初心者向けの内容はなかなか見当たらない。むしろ、普段料理をしている人にプラスαの情報を与えたり、もともとやっている家事の裏技を教えるような番組が多かった。

 「私たちはそこに置いていかれた、言わば落ちこぼれ(笑)。でも、上級者向けジャンルも色々あるなか、『家事ヤロウ!!!』のようなものも観てもらえるようになった。こぼれた部分かと思いきや、実は求められていたというのが、インスタのフォロワー数にも表れているのかなと思います」

 「遅い時間にテレビをつけたらたまたまやってた…くらいの、ラクに観てくださる視聴者が多い気がする」と鈴木氏。「今後も、世の中の感覚とズレないように、奇をてらわずに作っていきたい。家事力ゼロの3人の反応を楽しんでほしいので、彼らにはこれからも変にこなれないでほしいですね。視聴者のみなさんも、今後も過度な期待をせずに、ラクに観ていただけたら」と語る。

 ちなみに、バカリズムは昨年、元でんぱ組.incの夢眠ねむとの結婚を発表。当初のコンセプトであった「独身男3人」の定義が崩れてしまったことになる。これについても「あの時は結婚の報告とともに、『“独身”が使えなくなってしまった』と謝罪を受けたんです(笑)。でも、『安心してください。家事のレベルは成長しません』とも言っていただけて(笑)」と、同番組らしい、そしてバカリズムらしいユニークなエピソードを教えてくれた。

 「最近では、お笑いトリオのポンポコ団のキングさんなど、反響を呼ぶ出演者も増えてきました。今後、そういった新たなスターをこの番組から出すことができたらと考えています。また、『フォロワーが70万人を越えたら、リモート飲み会をする』という公約を掲げていたので、それも近々に放送できれば」(リモート飲み会は6月10日に放送)。

 今回のコロナ禍で甚大な影響を受け、いまだ模索を続ける番組が多いなか、危機をチャンスへと変えた『家事ヤロウ!!!』。料理・家事コンテンツ自体は目新しいものではないが、その隙間に、いま求められているものがあった。時勢と視聴者の実際をとらえたこの番組に、今後も注目したい。

(文:衣輪晋一)

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