馳星周氏 初候補から23年、7度目ノミネートで直木賞に率直な思い「一生懸命向き合ってきたのが評価された」

馳星周氏 初候補から23年、7度目ノミネートで直木賞に率直な思い「一生懸命向き合ってきたのが評価された」

第163回「直木賞」を受賞した馳星周氏 (C)ORICON NewS inc.

日本文学振興会は15日、『第163回芥川龍之介賞・直木三十五賞』の選考会を東京・築地「新喜楽」で開き、馳星周氏(55)の『少年と犬』(文藝春秋)が直木賞に輝いた。1997年のデビュー作『不夜城』での初候補入り以来23年、7回目ノミネートでついに受賞を果たした馳氏だが、生まれ故郷の北海道・浦河町からリモートで喜びの声を届けた。

 司会者から「喜びの声を」と向けられると「オレに聞いてるの? 今のお気持ちは、受賞の知らせを聞いてから、これが始まるまでが長かったです。あ、スベった?」とにっこり。「7回もノミネートされて、6回落選しているわけなので、別に身構えて受賞を待つとか、そういうのはいいので。ちょうど、生まれ故郷の浦河町で住むようになっていて、今回候補になったということで、だったら浦河町で待つのもありかなと思い、なんかめぐり合わせとして面白いんじゃないかなと。生まれ故郷で合否を待つという…」と語った。

 今作の選評の中で、動物を出すことによる是非も論じられていたが「動物を出す小説がズルいってわかっています(笑)。でも、ずっと一緒に暮らしてきて書かざるを得ないんですね。今回の小説の中にもあるんですけど、神様が人間につかわせてくれた生き物だと思っていて、そこを僕なりに書きたかった。動物出すのはズルいと思っています。でも書きたかったんです。人間同士では救いは生まれないですけど、動物が関わってくることで救いが生まれる」と率直な思いを吐露。

 続けて「僕は30歳くらいでデビューして、直木賞も何回か候補にしていただきまして、若い時はノワール(暗黒小説)しか書かないと思っていたんです。40歳半ばくらいから、そういうこだわりはなくなってきて、書きたいものを書きたい時に書く。それで直木賞をいただいたことに関しては、純粋にありがとうございます」と感謝。「オレたち人間はどう生きるべきかを考えながら、これからの小説を書いていくんだろうな」と意気込みながら「競馬のGIレースに勝ったような気分です」と喜びをかみしめた。

 7度目のノミネートでの快挙について「直木賞を取ることが目標で書いているわけではないので…」と淡々。「今まで取れなかったのは未熟だったんだろうと思うし。20数年間、一生懸命向き合ってきたのが評価されたのかなと思います。直木賞を取れるとか、そういうことを考える人が小説家になってはいけないと思います」と言葉に力を込めていた。

 両賞は1935(昭和10)年に制定。芥川賞は新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品、直木賞は新聞・雑誌(同)・単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品の中から優れた作品に贈られる。前者は主に無名・新進作家、後者は無名・新進・中堅作家が対象となる。贈呈式は8月下旬に都内で行われ、受賞者には正賞として時計、副賞として賞金100万円が与えられる。

 芥川賞は3回目の候補入りとなった高山羽根子氏(45)『首里の馬』(新潮三月号)、初ノミネートの遠野遥氏(28)『破局』(文藝夏季号)2作が受賞した。

■第163回芥川龍之介賞 候補作(掲載誌)※作者五十音順・敬称略
石原燃『赤い砂を蹴る』(文學界六月号)
岡本学『アウア・エイジ(Our Age)』(群像二月号)
高山羽根子『首里の馬』(新潮三月号)
遠野遥『破局』(文藝夏季号)
三木三奈『アキちゃん』(文學界五月号)

■第163回直木三十五賞 候補作(出版社)
伊吹有喜『雲を紡ぐ』(文藝春秋)
今村翔吾『じんかん』(講談社)
澤田瞳子『能楽ものがたり 稚児桜(ちござくら)』(淡交社)
遠田潤子『銀花の蔵』(新潮社)
馳星周氏『少年と犬』(文藝春秋)

■選考委員
【芥川賞】小川洋子、奥泉光、川上弘美、島田雅彦、平野啓一郎(新任)、堀江敏幸、松浦寿輝、山田詠美、吉田修一
【直木賞】浅田次郎、伊集院静、角田光代、北方謙三、桐野夏生、高村薫、林真理子、三浦しをん(新任)、宮部みゆき
※五十音順・敬称略

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