“自虐ネタ”で寄席を中心に活躍、ウクレレ漫談家・ぴろきとは?

“自虐ネタ”で寄席を中心に活躍、ウクレレ漫談家・ぴろきとは?

9月6日に「明るく陽気に、いきましょう。」でメジャーデビューした、ウクレレ漫談家のぴろき

“お笑い界のゆるキャラ珍獣”の異名を持つウクレレ漫談家・ぴろき。コメディアンの東八郎に師事し、88年には浅草ロック座の専属になっていたというから芸歴は豊富。しかし、イギリスのネッシー同様、知る人ぞ知る存在として生息を続け、脚光を浴びるようになったのは近年のこと。ところが、人気を集め出したと思ったら、9月6日にはメジャーデビューを果たしてしまった。しかも、収録の2曲はいずれも自作。一体、ぴろきとは何者!? 長い潜伏期間を経て、いよいよ頭角を現した珍獣の実態に迫る。

◆サーカスのピエロに憧れて

――まず、音楽との出会いを伺えますか?
【ぴろき】 母親がピアニストを目指した人で、よくピアノを弾いていましたから、生まれる前からおなかの中でクラシックを聴いたのが最初だと思います。母はリストの曲を弾くところで挫折して教員になったそうですが、音楽が好きだったし、素養もあったんでしょう。それを少しだけですけど受け継いでいるのか、僕には音楽の才能なんてありませんけど、不思議なことに和音だけはわかるんです。それで、ウクレレも弾けているんですね。

――初めて演奏できるようになった楽器は何ですか?
【ぴろき】 ギターです。中学の時にフォークギターを弾くようになって。

――好きだったり、憧れたりしたアーティストはいましたか?
【ぴろき】 そういう人はいないですね。全般的に聴いていましたけど、特に好きだったのはコミックソングでした。自分のキャラクターを考えると、そういうかっこいい路線ではないと自分でわかっていたんでしょうね。

――かっこいいと言われるより、友だちを笑わせるようなタイプ?
【ぴろき】 そうですね。物心ついた時から、お笑いが好きで、特にサーカスのピエロが好きだったんです。ぴろきの“ぴ”は、ピエロの“ピ”ですから。小学校に上がる前に初めてサーカスを観たんですけど、空中ブランコとか猛獣使いみたいな花形よりも、幕間に出てくるピエロに憧れたんです。みんなを笑わせて楽しませる姿に魅力を感じたんですね。

――でも、ピエロというのは観客を笑わせながら、自分は涙をこぼしていたりする、どこかに哀愁を漂わせるキャラクターですよね。
【ぴろき】 そこなんです。それが僕の自虐ソングに繋がっているんですよ。空中ブランコや猛獣使いは、ブランコや猛獣があってのものじゃないですか。でも、ピエロはピエロ自身のキャラクターでお客さんを惹きつける。僕はそこに魅力を感じるから、時事ネタなんかをやらずに自虐ネタでいっているんですね。

――メジャーデビュー曲「明るく陽気に、いきましょう。」のフレーズは、いつ頃から使っているんですか?
【ぴろき】 20代の時に漫才をやっていて、8年くらい続けて解散したんです。その後、ピンになった時に、お客さんに向けてというより、自分を奮い立たせるために発していたものなんです。

――だから妙に身につまされる感じがあるんですね。でも、せっかくのキメのセリフなのに、大体ハッキリ聴き取れないくらいの声で歌っていますよね。
【ぴろき】 1つには、そのほうが「なんて言っているんだろう?」って気にしてもらえるというのもありますけど、もともと「陽気に」という言葉とあのメロディーだと、どうしても聴き取れない感じになるんですね。しかも、今までに数えきれないくらい歌っているからお座なりにもなっています。そう、お座なりなんです。

――でも、その歌い方が自信なさげな雰囲気と重なって、いい味を生んでいると思います。ところで、お笑いの道に進む際に、ほかの職業との間で迷うようなことはありませんでしたか?
【ぴろき】 なかったと思います。学生時代は偏差値重視の時代で、高校に入ったところで見事に落ちこぼれましたから、それを幸いに真っ直ぐにお笑いの世界へ進みました。

◆自虐的な出来事を笑いに変える、天才的な才能があるのかも

――漫才では芽が出なかったということですが、かなり苦労されました?
【ぴろき】 いや。それが、時代が良かったんでしょうね。売れないコンビでもけっこう声がかかって、食うには困らなかったんです。

――いわゆる、どん底みたいな生活を知らないから、自虐ネタが悲惨にならないのかもしれませんね。ネタ自体は気の毒なんだけれど、でも、どうにかなるだろうって笑って聞いていられます。
【ぴろき】 悲惨すぎたら笑ってもらえませんから。自分でも自虐的な出来事を笑いに変える、天才的な才能があるのかもしれないって時々思います(笑)

――もともと楽天的な方なんでしょうか?
【ぴろき】 それもあると思います。でも、それだけじゃなくて、誰かと話すなら少しでも楽しい話、笑える話をしたいっていう気持ちがあるんだと思います。うーん…、でも、こういうことって、あまり深く考えない方が良いかもしれないですね。ネタを作る時に考え込んで、迷いそうな気がしてきました。あんまり考えない方が良いんですよ。考える能力もないし。以前よりも仕事が増えて、こうやってCDも出せる。周りには時流に乗ったんじゃないかなんて言う人もいますけど、策略を練りながらやってきた結果じゃないですし。そんなことできるわけがない(笑)

――考えて作り込んだのではなく、人柄とその人柄ゆえの暮らしから自然に生まれるネタだからこそ、ウケているんだと思います。
【ぴろき】 人柄を言ったら、ブラックな面もありますけどね(笑)

◆ネタがウケた時が一番幸せ

――ところで、ウクレレを使うほかの芸人さんを意識されることはありますか?
【ぴろき】 (漫談で)ウクレレを弾くようになったのは昨年の11月からで、それまではミニギターを使っていました。ウクレレと言えばこの人って方がいらっしゃったので、それまでその領域には入れませんでしたから。うまく弾けもしないのに、ずっとウクレレが好きで、集めてもいたんですけどね。気に入った木目のものがあったら買っちゃって、今までにウクレレで300万円くらい使ってます(笑)

――なぜ、そこまでウクレレに惹かれるんでしょう?
【ぴろき】 そうですね……、そこにウクレレがあるからじゃないですか?(笑)

――どこかで聞いたような答えですね(笑)。いずれにしろ、好きなウクレレを弾きながら漫談を届けられるようになりました。今では「ウクレレ漫談」のネット検索で、ぴろきさんがトップに表示されます。
【ぴろき】 とは言っても、“♪あ〜やんなっちゃった〜”のフレーズには、まだまだ追いつけませんけどね。

――CDの表題曲「明るく陽気に、いきましょう。」は、舞台でのネタを1曲にまとめたものですから、耳馴染みのある方も多いと思いますが、カップリングの「笑いが、一番。いつまでも!」も、明るく軽快なポップソングで、ソングライターとしての活躍にも期待したくなりました。
【ぴろき】 いや、それはないでしょう。音楽は好きですから蓄積したものはあるでしょうけど、そんなものすぐに枯渇しますよ(笑)。それに歌い手という意識はないですから、「明るく陽気に〜」はネタだからできても、「笑いが、一番〜」の方は照れくさくて人前じゃ歌えないんじゃないですかね。

――そういう、芸人にしては目立とう、売れようという意識をあまり感じさせないところも魅力ですね。
【ぴろき】 これじゃいけないんでしょうけどね。僕だって一発でもいいから当てたいって思いますよ、それは。一発当てれば、その後、人気が落ちても「あの人は、今」みたいな企画でまた使ってもらえるかもしれないし。でも、僕の場合は、まだ当ててないから「あの人は、誰?」ですからね。

――これ、ネタですね。ありがとうございます(笑)
【ぴろき】 いや、こちらこそ笑っていただけて、ありがとうございます。気取って言うわけじゃないですけど、僕はネタがウケた時が一番幸せですから。それは忙しくてギャラがたくさん入るのももちろん嬉しいですけど、まずはネタがウケることですよね。それが僕の幸せですね。

――人としての美徳を感じます。
【ぴろき】 芸人の先輩に、芸には人が出るから、芸と同時に人間を磨けと言われたことがあって、その言葉は今も大事にしているつもりです。僕自身は、そんな偉そうなものでも立派なものでもないですけど。ただ、時々ゆるキャラっぽいって言われたり、可愛いって言われたりすることはあるんですよ。

――やっぱり、そのほのぼのとしたキャラクターが大きな魅力なんですね。
【ぴろき】 女子大生に「ペットにしたい」って言われたこともあるんです。でも、「家の中では飼いたくない」って(笑)

――……最後まで楽しませていただいて、ありがとうございました(笑)。ますますのご活躍を楽しみにしています!
【ぴろき】 ありがとうございました。

(文・寧樂小夜)

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