【ひよっこ】脚本家・岡田惠和氏が明かす 既定路線と想定外の結果

【ひよっこ】脚本家・岡田惠和氏が明かす 既定路線と想定外の結果

NHK連続テレビ小説『ひよっこ』ヒロイン・みね子を演じた有村架純と脚本を担当した岡田惠和氏 (C)ORICON NewS inc.

 きょう30日に最終回を迎えるNHKの連続テレビ小説『ひよっこ』。実在の人物の生涯をベースにするのではなく、昭和の高度経済成長期を生きる、ごく普通の人々が織り成す物語を脚本家の岡田惠和氏がゼロから書き上げた。連続テレビ小説の執筆は『ちゅらさん』(2001年上半期)『おひさま』(2011年上半期)に次ぐ3作目。4月から26週にわたって放送された全156話、「1話ずつ書き進めて、現時点での自己ベストは苦しみながらも出せたかなと思っています」と、達成感をにじませた。

■ヒロイン・谷田部みね子について

 東京オリンピックが開催された1964年当時、高校3年生だったみね子は、卒業後は当たり前のように家業の農業を手伝おうと思っていた。しかし、出稼ぎに行った父親が消息不明になってしまったために、東京に働きに行くことになる。就職先のトランジスタラジオ工場で働き、寝食をともにした女子寮の仲間と友情を育み、工場が倒産した後は、縁あって赤坂の洋食店「すずふり亭」のホール係として働き、恋もして、さまざまな人間関係の中で悲喜こもごもの毎日を過ごしていく。ただそれだけのヒロインだった。それは何かを成し遂げてきたこれまでの朝ドラのヒロインとはちょっとタイプが違っていた。

 「朝ドラのヒロインといえば、『明るく前向きに夢に向かって』が定番だから、あえて違うものにしようといった意図はなく、自分が一番愛せる人物像をヒロインとして描きました。それは、そんなに前向きでもなく、リーダーシップをとるタイプでもなく、無謀な行動もしないけれど、つらいことも、楽しいこともある毎日を大事に生きている人。そういう人をヒロインにして物語が描けたのも、有村架純さんが演じてくれたから、とも言えます。

 ドラマの流れをほかのキャラクターが握っていても、彼女なら埋没しない。ヒロインのキャスティングを含めて、すごくやりたいことができた感じがしています。実際、生きていく中で、高い目標を持って、自己実現していく人ばかりではないですし、むしろそうでない人の方が多いくらいだろうし、誰もが自分の中で折り合いをつけたり、喜びも悲しみもあったりしながら生きていると思うので、朝ドラのヒロインとしては珍しいタイプだったかもしれないけれど、人物像としては珍しい人ではないと思っています」

■ヒデと結ばれるのは、既定路線だった

 特別何かを成し遂げる人ではなかったけれど、すずふり亭で一緒に働いていた見習いコックの秀俊(ヒデ)と結ばれて幸せになっていく。みね子とヒデが結ばれるのは、「規定路線」とキッパリ。

 「秀俊役の磯村勇斗さん本人は知らなかったと思いますが、規定路線でした。最初からみね子はヒデと結ばれるつもりで物語を書き進めていました。演出部にもお願いして、すずふり亭の厨房の中で、ことあるごとにヒデにワンフックつける撮り方をしていただいていました。みね子のことを気にしているな、というのはわりと初めの頃から出ていたと思います」

■想定外だったのは、4年しか時間が進まなかったこと

 「当初のプランからの一番の変更点は、物語のはじまりから4年しか時間が経過しなかった、ということです。書き始める前は1964年から10年くらいの時間の中で、ヒロインの成長を表現しようと思っていたんですが、わりと早い段階でこれは絶対にそこまで行かない、ということがわかり、そのことはなるべく口にしないようにしていました(笑)。

 156話で4年しか時間が進まなかったのは、登場人物一人ひとりを丁寧に描いた成り行きであって、自分としてはこれでよかったのかなと思いますし、こういう朝ドラがあってもいいのかな、と思っています。

 脚本の設計をする上で、物語を進める役回りを考えながら登場人物を作っていきますが、いざ書き始めると演じる役者さんとの相乗効果もあって、どんどん登場人物たちのことが好きになっていくんです。登場人物とそれを演じる役者さん全てが物語の中で楽しめるようにしたい。ご都合主義で配置されたコマではなく、登場人物全員にそれぞれ人生があって、喜怒哀楽がある。それを描いていくことで、すべてのキャラクターを人気者にしたかった。それをやっていたら4年しか進まなかったという感じです。そういう意味ではもっとやりたいこともあったし、もうちょっと先まで書きたいこともあったけど、今回の最終回にたどり着いたことに満足しています」。

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