逃げ恥、けもフレ…異例が相次ぐ地上波の“再放送”事情

逃げ恥、けもフレ…異例が相次ぐ地上波の“再放送”事情

今では貴重な“逃げ恥”2ショット(左から)新垣結衣、星野源 (C)ORICON NewS inc

 2016年のヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)が2017年12月31日〜2018年元日にかけて一挙再放送されることが報じられた。年末年始となれば特番が放送されることが半ば当然となっているテレビ番組のタイムテーブルにおいて、これは異例の出来事だ。そのほかにも2017年は、アニメ『けものフレンズ』なども再放送が行われたほか、安室奈美恵のドキュメンタリー特番も視聴者の要望で年明けに再放送が決定。そこで今回、改めて現状の地上波における”再放送事情”について考えてみた。

■2018年元日の再放送で改めて立証 いまだ尾を引く“2016年”の「逃げ恥」ブーム

 「“再放送”は、今現在の人気事情や“今という時代”を映す鏡のようなものとも言える」とメディア研究家の衣輪晋一氏。2017年9月27日、来年9月の引退を発表した安室奈美恵の場合、今年11月23日に放送された彼女のドキュメンタリー特番『告白』(NHK総合)が視聴者からの熱い要望により2018年1月8日に再放送されることが決定した(本放送時の「総合視聴率」は12.1%)。同番組は番組放送後、再放送を希望する声が殺到。その数2万7,000件以上で、放送から1週間で寄せられたもののなかでは今年最多となった。

 また2017年を振り返ると、大ヒットアニメ『けものフレンズ』がテレビ東京系の朝7時30分の枠で再放送。再放送当時SNSでは、熱狂的な“フレンズ達(同アニメのファン)”が、「おはよー!」「『けもフレ』再放送観るために早起き』「フレンズのみんな始まるよ!」などと大騒ぎ。さらに同アニメのメインキャラクターである「サーバルキャット」も注目され、動物ドキュメンタリー『ダーウィンが来た』(NHK総合)では、過去に放送された「サーバルキャット」回も再放送されるなど、その余波は局をまたぐほどのムーブメントとなった。

 そんな中でも異例なのが来る年末年始。この特番ラッシュのタイミングで『逃げ恥』が一挙再放送される。「12月30日に放送される大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK総合)総集編の第3章に『逃げるは恥だが時に勝つ』と、明らかに“逃げ恥”を思わせる章タイトルが。これを見ても、2016年の人気ドラマである“逃げ恥”の影響力が今もなお尾を引いているといえるでしょう」(衣輪氏)


■再放送ながら本放送を圧倒する“化け物番組”も

 一般的に今の再放送枠で思い浮かぶのは、午後帯と深夜だ。深夜はアニメの再放送が多い印象があるが、午後帯では2時間ドラマがよく再放送されているほか、フジテレビでは人気のあった連ドラや新ドラマがスタートする前、その新ドラマの主人公が出演する過去の連ドラ再放送のあるイメージ。テレビ朝日では「木曜ミステリー」枠や『相棒』などが再放送されている。こと『相棒』に関してここ数年、再放送ながらの高い数字(今期10月16日〜22日週は10.9%)を獲得し、同時間帯のライバル番組を圧倒する“バケモノコンテンツ”として定着している。

 このほか、局イチ押しの連ドラを、放送同週〜翌週の短いスパンで「見逃し再放送」をするパターンも連ドラファンにはありがたいサービスだ。さらには視聴率低迷が叫ばれる昨今、インターネットでは「あの番組を再放送したらテレビも観るのに」などの声が挙がるのもよく見られる。“逃げ恥”をはじめ、過去を遡ればいくらでも“お宝番組”は存在するはず。その往年の名作も地上波では再放送が行われにくくなってきているのはなぜか?


■かつての再放送は“名作を語り継ぐ”役割が…近年は規制により放送できない作品多数

 「まず一つに肖像権や著作権の問題。また今放送できるものとできないものも存在します」と話すのは前出の衣輪氏。一般に再放送されにくい理由として挙げられるのは、出演者の引退、不祥事、逮捕による解雇などがあった場合。このケースでは肖像権を事務所が管理できないため登場する映像を使うことは困難だ。また木村拓哉主演ドラマ『ギフト』(1997年/フジテレビ系)では、劇中に登場するバタフライナイフを使用した刺殺事件が発生したため、局側は再放送を自主規制。「社会に広く影響を与えるテレビというメディアの“強み”が同時に“弱点”でもあるということを象徴する事例です」(同氏)

 この“弱点”ではほかに、女性の裸体の映った作品が自主規制されている例も挙げられる。また時代を超えて愛されるアニメ『あしたのジョー』ではドヤ街など物語の舞台設定や、丹下団平とのやりとりからの台詞に放送自粛用語が多すぎることが問題に。『機動戦士ガンダム』では39話のセイラのセリフ「兄は鬼子です」の表現が問題になったり、『巨人の星』では当初のサブタイトル自体が放送自粛用語となり再放送では「日本一の父一徹」というサブタイトルに差し替え。このように過去作品は、台詞や各話のサブタイトルに不適切な表現を含むこともあり、自主規制にひっかかりやすい。「テレビ業界もビジネスであるため、自主規制が起こってしまうのは仕方ない面もある」と衣輪氏は語る。


■確実に視聴率が見込める人気番組の再放送、現役テレビマンとしての想いは…?

 地上波における再放送は、単純にコストパフォーマンスが高いからだけではない。ジブリのアニメなど不朽の名作は繰り返し地上波でも放送されているように、過去の地上波再放送では、視聴率を取るだけでなく、リアルタイム放送世代の視聴者でなくてもドラマ・アニメともに“名作を語り継ぐ”という意義があった。

 こうした名作を受け継ぐ枠の例のひとつに1990年までのテレビ東京の夕方アニメ枠がある。『まんが猿飛佐助』や『ムーの白鯨』『ドロロンえん魔くん』などが再放送されており、それら名シーンが脳裏に浮かぶ人も少なくないだろう。再放送により、名作は受け継がれていき、時代を超えて人々の記憶に宿る――。

 余談だが、このぶれない姿勢(?)は、“テレ東伝説”を生むにも至っている。例えば、1991年の湾岸戦争時にテレ東は、『楽しいムーミン一家』『三つ目がとおる』を放送し、高視聴率を獲得。1995年地下鉄サリン事件では、さらに『ムーミン』の再放送。2001年の9.11同時多発テロでは『人妻温泉』、最近では今年8月29日、北朝鮮ミサイル発射の際に『けものフレンズ』最終回再放送が放映。テレ東の徹底ぶり(?)に、アニメ『ケロロ軍曹』(テレビ東京系)からは「テレビ東京が特番を放送したら地球滅亡」といった意味の台詞まで登場した。

 とはいえ先述の通り、地上波では再放送したくても再放送できないこともある。一方でabemaTVの「なつかしアニメ」チャンネルでは、先ほどの『あしたのジョー』をはじめ往年の名作が軒並み放送されている状況。衣輪氏は「“地上波再放送事情”を見ると、現在の地上波テレビの問題点も浮き彫りになる。そんな状況の中、地上波が今やるべきことは?」と問いかける。

 「年末年始の『逃げ恥』再放送は、ユーザーの望みもかなえつつ、視聴率も間違いなく獲れるはず。しかし、年が明けたら2018年の元日に、2016年の人気ドラマを再放送することになる。時代の鏡でもあるテレビ地上波、その意義とは何なのか、それは新しいコンテンツを発信していくこと。しっかりと新規コンテンツを作って勝負したいテレビマンとしては内心悔しいところもあるはず」(同氏)。“誰もが再放送を強く望み、語り継がれるべき上質な番組”が、地上波で今後も生まれることを期待したい。

(文/西島享)

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