空気階段「僕たちがのぼってきた、人生の階段」デビュー当初のバイト話から結婚、離婚、健康まで、ブレイク中のコンビがリアルを語る

空気階段の鈴木もぐら(左)と水川かたまり

テレビのネタ番組が相次いで終了し、残ったのは、キングオブコント、R−1、THE MANZAIの賞レースだけ。そんな、お笑い冬の時代だった2011年に養成所の門を叩いた空気階段のふたりに聞いた、これまでの道のり。売れない時代のバイト、結婚、離婚、健康、お金......。今だからこそ話せる、芸人のリアル(!?)。

■バイト先は壮絶な現場ばかり

――キングオブコントで初めてファイナルまで進出し、世間から注目され始めたのは、おととしの2019年秋のこと。コンビ結成は2012年ですが、それまでの生活はどんな感じでしたか?

水川かたまり(以下、かたまり) NSC(吉本の養成所)に入ったとき、講師の方に「お笑い氷河期といわれる時代に、なんでこんなところに来てるの?」と言われたのを覚えています。デビューしてから3、4年はコントや漫才をやる番組がありませんでしたからね。

鈴木もぐら(以下、もぐら) だから、いろんなところで働いて食いつないでいました。ただ、芸人は急に仕事が入って、バイトを休むことが多いんです。そんなことがあっても大丈夫なバイト先ですから、変なところというか......普通じゃない現場が多かったですね。

――どんなところでバイトをしていたんですか?

もぐら 店員がもれなくゴミ扱いされるカラオケバーとか。

かたまり あの店はひどかったね。僕も体験入店したけど1日で辞めました。

もぐら その店は、キャバ嬢やホストがアフターでやって来る店なんです。だから来店してきた時点で、客はめちゃめちゃ酔っている。で、入ってくるなりいきなり「おい、酒持ってこい!」と。

――それはひどい。

もぐら ある日、来店したキャバ嬢に「腹減った。特上のすしを注文しろ。サビ抜きな!」とオーダーされまして。従わないと何をされるかわからないので注文したんですが、電話したときにサビ抜きと言うのを忘れてしまって......。キャバ嬢がすしを口にした瞬間に「これ、ワサビ入ってんじゃねえか、てめぇ!」と怒鳴ってきて。

かたまり でも、あの店で、素直に謝罪したら地獄だよね。

もぐら そんなことをしたら、自腹を切らなければならない。10人ぐらいのグループだったから、すし代は全部で5万円ぐらい。そんなの出せるわけない。だから、「電話でうまく伝わらなかったんですかね」なんてはぐらかそうとしたんですけど、キャバ嬢の怒りは収まらない。もし「すし屋に直接文句言ってやる!」ってなったら、自分のせいだとバレてしまう。

かたまり バレたら終わりだね。

もぐら なんとかしようと思って、すべてのすしのワサビ部分をスプーンですくって、大さじ1杯ぐらいになったワサビの固まりをパクッと食べたら、キャバ嬢が「まじウケる〜」って急に上機嫌になって。あれは助かりました。

――かたまりさんのように、普通なら1日で辞めますね。

もぐら そんな仕事をおととしまで、5年ぐらいやってましたね。

かたまり 僕も当時、マンションの建設現場で10も年下の16歳の子に「資材を落としてんじゃねぇよ!」ってよく怒鳴られたなぁ。とにかく腕力がないんですよ。

――年下といえば、お笑いの世界では第7世代が台頭していますが、何かと下の世代からの突き上げもあるんじゃないですか?

もぐら そのあたりは、場当たり的に流される感じですね。

かたまり 僕たちは、30代ということもあって、ちょうどハザマ世代なんですよね。だから、第7世代からの突き上げがあって仕事が奪われているみたいな番組にも出ますし、そうかと思えば、自分たちが第7世代を代表する芸人として番組に出るときもあります。

もぐら そうそう。「第7世代、勘弁してくださいよ〜」なんて言った次の現場では「第7世代といえばこのコンビ!」なんて、くくられたりしますから。おトクだなと思ってます(笑)。

歌舞伎町のカラオケバーのほか、風俗案内所、高速道路の橋梁部分の塗装はがしなど、さまざまな過酷な現場で働いた経験を明るく語る鈴木もぐら

■もぐら→結婚 かたまり→離婚

――そんな仕事をしているなか、もぐらさんは結婚して、現在はお子さんもふたりいます。

もぐら 当時は一緒に住める家を借りられなかったので、僕が住んでいた高円寺の3畳のアパートにふたりで暮らしていました。でも子供ができて、親子3人で3畳の部屋でというわけにはいかず、奥さんが出産のために北海道の実家へ帰りまして。やっと去年の初めぐらいに広い部屋を借りることができたんですけど、今度はふたり目ができて、また北海道へ帰ってしまって。そしたらコロナで......。

――一方のかたまりさんは、去年1年間で結婚と離婚の両方を経験。

かたまり 1年もしないうちの離婚なので、財産分与とか子供のことみたいなこともなく、手続きとしては比較的スムーズに別れられたと思います。同棲を解消したみたいな感じで。ただ、「これは離婚しそうだな」と感じてから離婚を発表するまでの間がいろいろ大変でした。

もぐら 去年の9月にキングオブコントでファイナルステージまで進んだことで、いろんな番組に出させてもらったんですけど......。

かたまり 結婚が去年の1月で離婚したのが12月。キングオブコントで注目していただいた頃は、離婚がほぼ決まっている状況。でも番組では「1月に結婚したばかりですが、新婚生活はいかがですか?」とか「夫婦の絆を感じるエピソードってありますか?」なんて聞かれることが多くて。収録中に思考停止しちゃって30秒ぐらい何も話せないこともありました。

もぐら あのときはカンベンしてくれよという感じでしたね。

かたまり あと、離婚を発表した後は、ご祝儀をいただいた方たちと顔を合わせるがつらかったですね。お祝いをいただいたのに1年もしないで別れてしまって。結婚直後にコロナで人が集まれない状況になったので、披露宴もしなかったですし、新婚旅行も行ってない。だから、今でもご祝儀が手元に残っている状況で。申し訳ないです。

もぐら 大丈夫! 歌舞伎町でも店の売り上げを持ち逃げして高飛びするヤツがいるけど、そういうヤツって結局同じような仕事でしか働けないのよ。だからしばらくすると札幌のすすきのとか福岡の中洲とか、ほかの夜の街で働き始めて、夜の街のネットワークで居場所がバレて、持ち逃げされた店のオーナーからボコボコにされる。だけど結局は許されて、また一緒に仕事するんだよね。なんだかんだ世の中って優しいから。ご祝儀のことは気にしないでOK!

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――夜の街ではそうでも、お金の問題ってやはりシビアでは?

もぐら 大丈夫! 昔、デニスの(植野)行雄さんからお金を借りまくっていたんですが、最近は劇場で会うたびに「売れたんだから金返せ!」って言われるけど、まだ全額返してないし。返したら返したで、向こうも僕と話すきっかけがなくなって寂しいでしょう。

かたまり クズな相方ですみません。

――もぐらさんといえば、お金もそうですけど、時間にもルーズと聞いたのですが。

かたまり もうルーズっていうレベルじゃないですよ。普通の人の遅刻って20、30分ぐらいじゃないですか。でも、こいつの場合、5、6時間は当たり前。ひどいときは1日とかありますからね。何度電話してもつながらない状態が1日続くと「死んだんじゃないか」と心配しますよ。そしたら急に「今起きた」って電話が来て。

もぐら いやぁ。わかっているんですけど起きられないんですよね。

かたまり 以前、もぐらが遅刻した時間をマネジャーと記録したら、1年間で3万分を超えて。3万分って、20日と20時間ですからね。約3週間ですよ!

もぐら ホント、申し訳ない。

かたまり 初めて学園祭に呼ばれたときも、現場に入る時間に「今起きた」って連絡が来て。そこからこいつが来るまでの45分間、事務所の担当者からひどい怒られ方をして。そうこうするうち、もぐらが到着したんですが、そのときちょうど、僕のことを怒っていた担当者のところに電話がかかってきて。どうやら別件のトラブルが起こったみたいで、もぐらは「遅刻した分、取り返せよ」みたいなことをサラッと言われて終わり。

もぐら 全然怒られなかったです。

かたまり 理不尽だけど舞台の時間も近いので、僕も「じゃあ、頑張ろう」みたいな感じで。

――怒られているときは、どんな気持ちなんですか?

かたまり ただただ、時が過ぎるのを待つ感じです。

大学をすぐ辞める、結婚生活が1年で終わる、遅刻常習犯の相方の代わりに怒られ続けるなど、意外とハードモードな人生を送っている水川かたまり

■世の中は理不尽。逃げたきゃ逃げろ!

――最後に、今後の展望は?

もぐら 奥さんに「いびきがうるさい」と言われて病院に行ったら、無呼吸と診断されまして。以来、定期的に病院に通ってるので「まずは家族のために健康に気を使う!」と言いたいところなんですけど......。歯痛で歯医者行けば治療が終わった後も「ホワイトニングもやりましょう」とか面倒だし、とりあえず、いろんな人からあまり怒られない生き方ができたらと。

かたまり 僕は、今までいろんなイヤなことから逃げ続ける生活を送ってお笑いの世界に流れ着いたので、ネタ作りやお笑いに関することは逃げずに踏ん張って、それ以外は精神的にやばいなと感じたら"逃げる"スタンスでいこうかなと。逃げるという選択肢がまったくない生き方は精神的にきつい。結果逃げなかったとしても「最悪、逃げようか」と思っているだけでラクになることもあるので。

もぐら そういう意味でもぜひ、パチンコをやってください。パチンコはものすごい理不尽です。大当たりの確率が100分の1の台でも、当たらないときは全然当たらない。300、400と回してもまったく当たりが来ない。と思ったら、当たるときは当たりまくる。確率5分の1じゃないかと思うほどバンバン当たる。

結局は平均すると100分の1の確率になるのですが、それはさておき、この300、400と回しても当たらないことを経験すると、世の中の理不尽さに慣れてきます。パチンコを通して理不尽なことに慣れておけば、いい流れになったとき、ほかの人よりもハッピーに感じられるし、悪い流れになっても耐えられる。だから皆さんもパチンコをやるべきです!

――なんだかよくわからないアドバイスですが、どうもありがとうございました!

昨年は人気番組『有吉の壁』などで注目されたほか、今やさまざまなお笑い番組に引っ張りだこのふたり。今年はさらに飛躍しそうだ

●空気階段
2012年結成のお笑いコンビ。昨年のキングオブコントでは3位の実力派コント師。水川かたまり。1990年7月22日生まれ、岡山県出身。憧れの人に会うと性的興奮ゼロでも股間が反応する不思議な体質を持つ。鈴木もぐら。1987年5月13日生まれ、千葉県出身。ギャンブル好きで、お金を借りた人の数も額も数え切れないほど

■空気階段、単独ライブDVD『anna』
2月に行なわれた単独ライブを完全収録。コント8本が収められた本編の収録時間は128分と長丁場だが、「最初に見るときだけは、エンディングまで一時停止せずに一気に見て、ライブと同じ感覚で楽しんでほしい」とのこと
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取材・文/渡辺雅史(リーゼント) 撮影/下城英悟

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