おぎぬまXのキン肉マンレビュー【コミックス第2巻編】

キン肉マン大好き漫画家のおぎぬまXが、コミックス2巻を熱く語る

今回レビューする第2巻、実はレビューにかなり気合いが入っています! 『キン肉マン』がギャグからストーリー路線へ転換していくこの素晴らしい瞬間を熱く説明いたします!!

『キン肉マン』第2巻

キン肉マン2巻書影.png

レビュー投稿者名 おぎぬまX
★★★★★(星5つ中の5)●ストーリーの完成度と密度はさらなる高みへ!

僕の印象としては、この第2巻、作品自体がダイナミックに転換していく直前の過渡期特有のエネルギーにあふれる、個人的超オススメ巻なんです。正直、この巻を語るのは第1巻以上に緊張します。が、また前回同様、絞りきれないなか選んでみた僕個人のベスト3エピソードを挙げていく形でその魅力をお伝えしていきたく思います!

では早速、おぎぬまX的第3位「なんでもかんでも腹の中の巻」。家でも人でもなんでも吸い込んで、おなかに入れてしまう底無し星人という怪獣が現れ、キン肉マンたちものみ込まれるという話です。のみ込まれた先でキン肉マンが驚いて、こう言うんですね、「ま...まるで陸上豪華船じゃないか!!」。要はのみ込み規模が大きすぎて、その怪獣の胃の中にひとつの町ができちゃってる。でもやがてその町に胃液の洪水が迫ってきて、そこで暮らす人たちはどうなるという......もうこれ、世界観の設定がハリウッドのSFパニック映画級ですよ(笑)。

そして、とうとう迫ってきた胃液の海にアデランスの和雄さんが真っ先に転落。この先がまたすごい。たったひとコマで溶かされて、次のコマでは、やけに頭のでかい骨だけ浮いてくるテンポ感が抜群に面白い! ギャグじゃないのに、何度見てもこのシーンはなぜかめちゃくちゃ笑えるんですよ。普通怖いじゃないですか、人が死んでるんですから。

しかも『キン肉マン』で初めて死者が出たという大事件。それなのに、ここは何度見ても面白い。見せ方のバランス感覚が絶妙なんですよね。そして、最後はその死んだ和雄がお土産に残した餃子のニンニクでキン肉マンが巨大化して敵を倒す。和雄の死が実は重要な伏線だった。極めつきは最後のミートのセリフ「底無し星人は食糧難で苦しむ地球の象徴だったんですよ......」。こんな深いメッセージまで添えて合計たったの13ページ!?

その密度が今読んでも漫画として恐ろしすぎて......まさに傑作短編≠ニ呼ぶにふさわしい一話だと思います!

●わずかひとコマで表したキン肉マンの魂!

続いて第2位「天丼怪獣の復讐の巻」。衝撃なのは前回、非業の死を遂げたはずのアデランスの和雄の出前配達から始まります(笑)。前話の胃液で死んだのはなんだったんだよ!......って言いたくなるんですけど、『キン肉マン』の死んだ超人は生き返るってのはここから始まると思うと、それも感慨深いです。

そして本編。牛丼と間違えて配達された天丼をキン肉マンが無下にしたので、恨みを抱いて怪獣化したエビの天ぷらが大暴れという流れなんですが、このエビ天怪獣テンドンのデザインがとにかくグロテスク。ただただ怖い。そんな怖いテンドンとキン肉マンの闘いの最終局面は第1巻でのザンギャク星人との対決を思わせるセリフ一切ナシのサイレント、そして紙一重の差で敗れたテンドンが死の間際に語るセリフ「みばえは悪いがくってみるとけっこういけるんだぜ...」。今までひたすら怖かった怪獣の心に染みる切ない最期、助かるわけでもなく死んでいきます。

この展開は、この次の話「とまれ!マラソン怪獣の巻」でも同じで、死ぬまで走り続ける長足ゴンは最期、ひっくり返ったままバタバタと足だけ動かし、力尽きてやはり死ぬ。でもキン肉マンは助けることもできず、その死をただ見守るしかない。ギャグ漫画なのにまさかの2回連続ハードボイルド!?(笑)。『キン肉マン』はどんな漫画か、と問われるとひと言ではくくれない懐の深さがありますが、その印象が第2巻にして極まってきたなと感じられる珠玉のエピソード2連発です!

そして第1位「パーティーへの招待の巻」。美女たちからパーティに招待されたキン肉マン。でも結局、彼女らはキン骨マンたちの変装で、キン肉マンはこれまで倒してきた怪獣たちに、よってたかってリンチされます。そんな回を選んだ最大の理由はあるひとコマ。リンチを受ける最中に、キン肉マンが「ギロ...」ってものすごい怖い顔で睨むシーンがあるんですよ。これ初めて見たとき、子供の僕も「キン肉マン怖っ!」って思ったほどの怖い顔。でも、普段おちゃらけたキン肉マンがごくまれに見せるこの顔に、僕はキン肉マンの果てしない底力を感じたんですよね。ああ、やっぱりキン肉マンって怪獣もビビるくらい強いんだよなとか、これがあるから完全にはナメられないなって。作中だけでなく読者からも。それを思うとこのひとコマがどれだけキャラに魂と奥深さを与えているか。漫画ってそういうことができるんですね......とひたすら唸らされる必見のひとコマです。

この第2巻は、それ以外にも読者募集企画が本格始動したり、ナツコやキン骨マンも出てきてキン肉マンの立ち位置が定まったり、作品の土台を一気に築き上げた超重要巻。カバーに自分のイラストを紛れさせちゃうゆでたまご先生のセンスも爆発してて最高です!(笑)

mdam_20210908_2252上.jpgmdam_20210908_2252下.jpgこんな見どころにも注目!

この巻でほかにも特筆したいのが、毎回のラストカットの作り方。例えば「キン肉星SOSの巻」では、この回ほぼ存在感を消していたナチグロンがラストひとコマだけ現れて謎のひと言「流れ者にゃあ...女はいらねえ............」。「なんでもかんでも腹の中の巻」ではキャラのシルエットにセリフすらなく、ただ描き文字「はははははははは」で終了!? 余韻を残すちょっとひねった締め方の工夫に、ゆで先生の非凡なセンスと今に続くサービス精神が感じられます!

●おぎぬまX
1988年生まれ、東京都町田市出身。漫画家。2019年第91回赤塚賞にて同賞29年ぶりとなる最高賞「入選」を獲得。21年『ジャンプSQ.』2月号より『謎尾解美の爆裂推理!!』を現在も好評連載中。小説家としての顔も持ち、『地下芸人』(集英社)が好評発売中。『キン肉マン』に関しては超人募集への応募超人が採用(JC67巻収録第263話)された経験も持つ筋金入りのファン!

構成/山下貴弘 撮影/中里 楓 ?ゆでたまご/集英社

関連記事(外部サイト)