『グラビアの読みかた ーWPBカメラマンインタビューズー』桑島智輝 編「自己表現にもがいた学生時代」

安達祐実『私生活』、今田美桜『生命力』などを手掛けたカメラマン・桑島智輝氏のルーツとは?

いつもはあまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していく連載コラム『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』が、『週プレ プラス!』にて好評連載中だ。

"カメラマン側から見た視点"が語られることで、グラビアの新たな魅力に迫る。週プレに縁の深い人物が月一ゲストとして登場し、全4話にわたってお送りする。

第3回目のゲストは、安達祐実『私生活』、今田美桜『生命力』、大原優乃『吐息』、川津明日香『明日から。』などのグラビア写真集のほか、俳優やコスプレイヤーの写真集も手掛けている桑島智輝(くわじま・ともき)氏。商業カメラマンとして、その幅広い活動にかける想いを聞いた。

* * *

――カメラマンになるまでのルーツをお聞きするにあたって、まず学生時代のことを教えていただきたいのですが、高校時代は電気グルーヴ(以下、電気)のコピーバンドを組まれていたんですよね

桑島 そうそう。「中国人」っていうバンド名で(笑)。というのも、中学時代は授業中に廊下を原チャリが走り回っているようなヤンキー校に通っていたから、自分は勉強ができる方だって思い込んでいたんですけど、高校で進学校に通い出してから、一気に授業についていけなくなっちゃって。

その劣等感に折り合いをつけるべく、奇を衒(てら)った行動で、学校に対する反抗心を少しずつ表に出すようになったんですよね。学校をいきなり無断欠席して、翌日、頭を坊主に丸めて金髪にして登校するみたいな。進学校だったからすっげぇ怒られましたけど(笑)。

ただ、そのとき初めて、人と違うことをする気持ちよさを知って。そんなタイミングで"電気"に出会ったんです。もちろん楽曲も好きだったけど、とにかくライブパフォーマンスがカッコよくて、それにめちゃくちゃ憧れて。それで、友達とコピーバンドを始めたんですよ。

――ヤンキー校から進学校、ですか。確かにギャップが凄そうです。

桑島 勉強はできなかったし、暴力的なことは嫌いだったけど、自分を何かで表現したい気持ちは人一倍強くて。そのなかで自分にできることは、人と違ったことをすることだって、変な方向に突き進んでいっちゃったんですよね。

とはいえ、基本的な性格は目立ちたがり屋の引っ込み思案なんです(笑)。目立ちたいのに、目立つのが恥ずかしい、みたいな。いまだにそうですけど、当時からこの二律背反な感覚はずっとありました。

――ちなみに、写真はいつ頃から撮るようになったんですか?

桑島 写真も高校生の頃から撮っていましたよ。ちょうど90年代のガーリーフォトブーム(HIROMIXや長島有里枝、蜷川実花などの若い女性が撮った写真が注目を浴びた流行現象)ど真ん中の世代で、その代表的な作品をまとめた『シャッター&ラヴ』(INFAS)という写真集に強く影響を受けていました。「写真って、こんなにもおしゃれで解放的なものなんだ」って。

東京での日常を切り取った写真が多かったので、僕も、地元の岡山で真似して撮ってみるんですけど、空とか雲とか稲とか、渋い写真しか撮れないんですよね(笑)。それでも、まだフィルムカメラの時代だったし、自分が撮った風景が写真として形になる感覚を楽しんでいたのは覚えています。

――そうだったんですね。そのときは、既にグラビアに対する意識もあったんでしょうか。

桑島 カメラマンになる意識はなかったです。ただ、カルチャー誌やファッション誌をよく読んでいたので、好きなページの切り抜きはやっていました。そのファイリングは今でも残っていますし、最近も気になるページがあれば残しておくようにしています。

例えば、高校生だった僕が最初に心惹かれたのは、カルチャー誌『H(エイチ)』(ロッキング・オン)に載っていた新津保建秀さん撮影の緒川たまきさんのグラビア。

あと、篠山紀信さんが『SPA!』(扶桑社)で連載していた「ニュースな女たち」や、佐内正史さんが『relax』(マガジンハウス)で連載していた「a girl like you 君になりたい。」みたいな連載モノも大好きでした。

どちらも女の子のポートレートをメインにした連載なんですけど、そういうのに影響されて、何となく女の子を撮ることに憧れを抱いていたのは事実ですね。実際に女友達を撮ろうとすると、どうしても自分の中にあるよこしまな気持ちが拭えなかったから、男友達を面白がって撮ることの方が多かったですけど。

――音楽と写真に夢中になった高校時代だったんですね。

桑島 勉強ができない自分を受け入れるには、音楽や写真といったカルチャーに没頭するしかなかったんです。当時は今以上に、自分を何かで表現したいって気持ちが強かったですしね。でも、絵は描けないし、コピーバンドはやっていても音楽が作れるわけではなかった。そういう意味で写真は、自分にとっていちばんライトな自己表現方法でしたね。

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――なるほど。

桑島 でも、高校卒業を控えたとき「好きなカルチャーを突き詰めた先に、一体何があるんだろう?」と考えるようになって。ちょうどそのタイミングで、写真家の荒木経惟さんとその妻の陽子さんのエッセイを題材にした映画『東京日和』を観て、とても感動したんです。当時付き合っていた彼女と映画館に何回も通うくらい魅了されました。

それを機に、この映画で監督を務めていた俳優の竹中直人さんに感化されていくんです。竹中さんが出演していた舞台を観て、エッセイも読んで、「おれ、竹中直人になりたい!」って(笑)。

――俳優を目指すようになったということですか......?

桑島 そうですね。とにかく竹中さんに憧れていました(笑)。で、竹中さんが多摩美術大学の卒業生だということをエッセイで知って、僕も同じ大学に通いたいと思っていろいろ調べてみると、入試の必須科目にデッサンがあったんですよ。

絵は描けなかったから諦めるしかなかったんですけど、エッセイには、竹中さんが当時付き合っていた彼女が武蔵野美術大学(武蔵美)に通っていたとも書かれていて。武蔵美にはデッサンができなくても入れる学科があったので、じゃあそこに行こうと。一浪して、武蔵美のデザイン科に入学しました。完全に全部、竹中さんの影響です(笑)。

――本当に竹中さんになりたかったんですね(笑)。

桑島 デザイン科に通ってはいたけど、デザインには全く興味がなかったし、授業よりも劇団サークルでの活動が楽しくて大学に通っていました。でも、やっぱり目立ちたがり屋の引っ込み思案だったから、練習はよくても本番が全然ダメで。

本番に弱いなんて、俳優として致命的じゃないですか。「もしかしたら、俳優は向いていないのかなぁ」って、途中から裏方に回ることも考えるようになって......。そうこうしているうちに、周りが就職活動をし始めるんです。みんな「デザイン事務所に内定が決まった」とか言っていたし、そろそろ自分も就職先を考えないといけなくなって。

――俳優になる夢は......。

桑島 まぁ、難しいですよね(笑)。で、「自分には何があるんだろう?」って考えてみると、唯一、写真だけはずっと続けていたんですよ。カメラマンになるつもりも、撮った写真を作品にする気もさらさらなかったけど、撮り溜めた写真はたくさんあって。そこで初めて、「カメラマンがいいかもしれない」って思ったんですよね。

――コピーバンドや演劇サークルでの活動を通して自己表現方法にもがいた結果、いちばん写真がしっくりきたと。

桑島 そうですね。今でこそ思うんですけど、カメラマンって作品のなかで適度に目立てるポジションだから、目立ちたがり屋の引っ込み思案にはちょうどいいんですよ。

現場をディレクションするときは、ある意味センターに立っているわけだけど、世に写真が出るときは、タレントさんの名前が大きく出るから、自分は半分隠れていられるじゃないですか。

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――でも、誰が撮ったかは写真に大きく影響するという。確かに、ちょうどいい目立ち具合なのかもしれません。ここでひとつお聞きしたいのですが、写真を撮ることで、高校時代の強い表現欲求を満たせたのはなぜなんでしょう?

というのも、音楽や描画と違って、写真は自分のなかにあるイメージを形にしたものではないじゃないですか。これが自己表現であるという感覚をどう掴んでいたのか、ふと気になりまして。

桑島 写真を自己表現と思えた理由かぁ......。何なんだろうね。まぁ、表現欲求はあっても、アウトプットの仕方は知らなかったんですよ。それこそ、撮った写真を組み直して、一冊にまとめる方法も知らなかったし、とりあえずアルバムに収納しておいて、たまに見返して、「ふむふむ」と自分のなかで楽しんでいただけで。

自分なりの表現で、周囲の人や社会に対するアプローチがしたかったわけではないんですよね。むしろそういうのは苦手でした。

――撮った写真を自分で見返す行為が純粋に楽しかったんですね。

桑島 そうそう。何でか分からないけど、撮り続けることで自分の表現欲求が満たされる感覚は確かにあったから。今もほぼ毎日、安達(祐実)さんの写真を撮っていますが、やっていることは、あの頃からほとんど変わっていないんですよね。

今現在、アルバム約150冊分の写真が撮り溜まっているものの、これらを全部世に出すわけじゃないですし。

日々撮り続けるってことが、自分にとって重要なんです。撮り続けるなかで満たされたはずの表現欲求がさらに大きくなったとき、一冊の写真集にして、みなさんに見てもらいたいというか。

あとは、自分に対する執着もあるから、自分がやってきたことをアーカイブとして残したい気持ちもあるんですよね。撮って、記録して、たまに見返して。その繰り返しが好きなんです。その感覚は、高校生の頃、何気なしに写真を撮り始めたときからずっと変わらないですね。

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●桑島智輝(くわじま・ともき)
商業カメラマン。1978年生まれ、岡山県出身。
趣味=DJ、ラジオDJ
写真家・鎌田拳太郎氏に師事し、2004年に独立。2010年、株式会社QWAGATAを設立。
主な作品は、今年10月に発売された川津明日香1st写真集『明日から。』のほか、篠田麻里子『SUPER MARIKO』、安達祐実『私生活』、指原莉乃『猫に負けた』、今田美桜『生命力』など。溝端淳平『熱風少年』や新田真剣佑『UP THE ROAD』などの男性タレント写真集や広告写真も多く手がけている。また、2014年に女優・安達祐実と結婚し、その生活の様子を収めた写真集『我我』(2019)と夫婦旅の記録を収めた『我旅我行』(2020)を発表したことも話題となった。

取材・文/とり

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