約2万人の義勇兵がウクライナに集結。"空の義勇兵パイロット"は「ミグ29」に乗って現れるのか?

義勇兵バイロットの搭乗した戦闘機が、ウクライナ上空を飛ぶ日がくるのか?
3月8日、ポーランドは自国が保有する「ミグ29」全機30機をドイツの米空軍基地に送り、それを「F16」と交換することを提案した。しかし翌9日、米国防長官はその提案とウクライナへの戦闘機譲渡を拒否。さらに翌日、米副大統領がポーランドを訪問し、ウクライナへの支援について協議している。

そんな中、ロシアとの戦闘状態が続くウクライナに、世界各国から約2万人もの義勇兵が集結している。

義勇兵といえば、1940年「フライングタイガース」と呼ばれるアメリカ義勇軍が、カーチスP40戦闘機を使用し"空の義勇兵"として中国戦線で戦ったことがある。21世紀の今、再びそんな義勇空軍が出来る可能性あるのだろうか?

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空軍に詳しいフォトジャーナリストの柿谷哲也氏は、戦闘機を運んだり空軍の相手をする民間人戦闘機パイロットに注目しているという。

米国には民間会社で、「A4スカイホーク」のような戦闘機を運用する会社がある

「アメリカの『ドラケン・インターナショナル社』は米空海軍の相手をするため、世界の空軍からミグをはじめ中古戦闘機を購入し、民間人戦闘機パイロットを雇用している。そのような会社はいくつもあります。

民間戦闘機パイロットたちはこうした企業で空戦をする仕事を得る一方、アフリカ諸国などで空戦の教官をしたり、個人取引でどこかの国まで戦闘機を輸送する仕事したりと、意外に多くいるのです。

モルドバ共和国にあった「ミグ29」は、イランに転売されるのを防ぐために米国が買う事になった

さらに、1997年にモルドバがアメリカに21機の「ミグ29」を売却し、それによってパイロットが失職したように、東欧諸国には元ミグ29乗りがたくさんいて、彼らが"空の義勇兵"となりうる素地はいくつもあります。

「ミグ29」は分解されて、米空軍「C17」輸送機で米国に運ばれた

「ミグ29」は米国内で再組立てされて、徹底的に研究された
さらに柿谷氏は続ける。

「3月8日にミリー米国統合参謀本部議長が、ウクライナへの兵器輸送の拠点になっている欧州東部の極秘飛行場(ニュース原文では『Secret Airfield』)を視察したとのCNN報道がありました。その極秘飛行場とはどこなのか? 米軍は今までにもサウジ、イエメン、イラクの砂漠に鉄板を敷いて小さい極秘飛行場を作っていますが、東欧は地形的にそんなものを作ればすぐに分かるはずです。

ウクライナ国境沿いを調べたら1か所、ルーマニア国境から100キロ、ウクライナ国内西南部の「Kolomyia」に、旧ソ連が作り今は使ってない空軍基地があります。そこは2500m滑走路と広いエプロンが残り、極秘飛行場とはここのことではないか?と大胆に推測しました」(柿谷氏)

そこで、柿谷氏はポーランドからウクライナへの「ミグ29」移送作戦を明かしてくれた。

ポーランド・ワルシャワにある「ミグ29」の基地に、アメリカ情報機関工作員に雇われたフェリーパイロットたちが集結、「ミグ29」に乗りこみ夜間に離陸。15機の「ミグ29」は南下し、スロバキア、又はハンガリーの国境からこの極秘飛行場に着陸する、というものだ。

アメリカが表面的に何かの動きを拒否した時、CIAなどの情報組織が暗躍する作戦が始まることは、珍しくない。

この作戦案を外務省勤務経験のある元空自302飛行隊長・杉山政樹元空将補はこう分析する。

「成功する可能性はあると思います。しかし、作戦としては、ポーランドに非はなく、同国がロシアに攻撃されないような形をとるべきです。その為には、ポーランドはドイツの米軍基地に「ミグ29」をフェリーするつもりが、義勇パイロットたちが勝手にウクライナへ飛び去ってしまった、とするほうがいい。コソッと運んでしまえば、ロシアも手は出せない。

この手の話に乗ってくるフェリーパイロットは、金を積めば幾らでもいます。ただし、その「ミグ29」でウェポン選択をするような、現代の空戦は難しい」

杉山氏は「今の米軍パイロットたちは、義勇兵パイロットにならない」と言い、柿谷氏は「東欧の元空軍ミグパイロットは、義勇兵パイロットに志願するでしょう」と言う。そうなれば、首都キエフ陥落危機に際して、"空の義勇兵"の操縦するミグ29編隊が離陸する可能性はあるのか?

「私が冷戦の時から研究してきた経験からすると、ロシア空軍の侵攻開始からの動きを見ると、NATOとの正面切った空戦に備えて今は温存しているように思える。しかし、ウクライナ空軍が真っ向から空の戦いを挑んだら、ロシア空軍は受けて立つと思う。

1940年の頃のように、義勇兵パイロットがプロペラ機で個々に戦える空戦ではもはやない。今の戦闘は、早期警戒管制機や電子戦航空機が加わっての組織戦闘となる空戦だからです。ウクライナ空軍と"新生フライングタイガース"は1時間とかからずに落とされていくと思う。

そうなると、陸の義勇兵が使用する携帯型地対空ミサイルと対戦車ミサイルなどの個人兵装で戦うべき、ということになる。今、ウクライナは実情として捨てられてしまっているようなもの。だから、可能な限り犠牲が出ずに終って欲しい、というのが今のアメリカとNATOの考え方だと思います」(杉山元空将補)

1日も早い平和の実現が待たれる。

取材・文/小峯隆生 写真/柿谷哲也

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