史上初、大晦日生放送の『SASUKE』。総合演出×チーフプロデューサーが語る「打倒紅白」と「こんな人たちに出てもらいたい」

史上初、大晦日生放送の『SASUKE』。総合演出×チーフプロデューサーが語る「打倒紅白」と「こんな人たちに出てもらいたい」

チーフプロデューサーの村口太郎さん(左)と『SASUKE』総合演出の乾雅人さん(右)


平成最後のSASUKEは番組史上初の一部生放送! 

TBSが「打倒紅白」を合言葉に大晦日の大バクチを決めた経緯を、総合演出を務める乾雅人氏と、番組のチーフプロデューサー村口太郎氏に語ってもらった。

■初めて尽くしの大晦日放送

 もともと、2013年くらいから「3rdステージとFINALステージを生放送にしてはどうか」という構想はあったんです。でも、そもそも何人進むかもわからない。生放送でやるメリットとリスクを天秤(てんびん)にかけたときに、あまりにも現実的ではなかった。

それが今回、SASUKEは大晦日放送に。そこで村口氏は、乾氏にこう話を持ちかけた。「FINALだけでも生放送でやれないか――?」

近年のSASUKEは恐るべき進化を遂げており、完全制覇はおろかFINALステージ進出者が出るのも数年に一度という局面を迎えている。もし誰もFINALに進まなかったら、どうするのか――。

村口 当然、上からは言われました。「行かなかったら仕方ない」と答えました。それもSASUKEだ、と。今のSASUKEはスポーツ局という部署が番組制作をしているのですが、僕らは常々「生のスポーツに勝るものなし」と思って中継に携わっていますので。

今年3月に放送された前回大会では、ゼッケン100番を背負った森本裕介が3年ぶりにFINALステージに進出。それも決断を後押しした。

 前回、現状の3rdステージを超えられる選手が出てきて、FINALの最後の綱登りまでは行けた。「完全制覇の可能性があるんだ」というのをみんなが思えたというのが大きかった。ひとり出たなら今度はふたり、3人がFINALまで行くかもしれない。そうやって紡いできたSASUKEの歴史というのを僕らは知っているので、選手の進化を信じている、そこにかけたかった。

そして村口氏はひとつ、打倒紅白の秘策を教えてくれた。

村口 FINALステージの実況は、うちのエースアナ、安住紳一郎君が務めます。実は昨日の1stの収録にもお忍びで来ていて、(2nd、3rdを収録する)今日もこの後来ます。ひとつもふたつも新しいことをのっけて、「大晦日に紅白を本気でぶっ倒しに行くぞ」というTBSの気持ちの表れだと思っていただければ。

■求む!最強の自衛隊員

一方、こんな問題もある。新エリア「ドラゴングライダー」が猛威を振るった前回大会で、1stステージをクリアできたのはたったの8人。SASUKEのエリアが進化するあまり、常連陣と初出場プレーヤーの間の「格差」も広がりつつあるように見える。

村口 とはいえ、あの森本君ですら最初の頃は1stステージで何回も落ちていたわけですからね。失敗を糧(かて)に選手が成長して、その結果エリアがどんどん難しくなっていっているので、初挑戦の方がいきなりクリア、というのが大変なのは事実です。が......。

 もともと最初の完全制覇は誰だというところから始まって、毛ガニ漁師の秋山(和彦)君が第4回(1999年)で完全制覇して、それから1stステージにトランポリンや「そり立つ壁」が登場して、次の回は1stをクリアできたのは3人だけだった。そのひとり目が初出場だった"元祖・最強の消防士"の竹田敏浩君(今大会はゼッケン85番で登場)で、というようなことを繰り返してきている。

エリアが変わる。選手も進化する。そのなかでも今のSASUKEは森本君の進化に合わせているので初めて出る選手たちは大変ですが、例えば1stステージの最初のエリアで失敗してしまった選手にも物語はあるんです。だから「格差」という言い方が正しいかは僕にはわからない。難しくなったから全滅だ、という番組ではなくて、出場者100人分の物語をつなぎ合わせてひとつの番組を作る、それがSASUKEなので。

村口 本当はその100人を選出するために365日オーディションをして、1万人と会いたいくらいなんですよ。

SASUKEには現在も、数千に上る応募が全世界から届く。あらためて、その狭き門をくぐる秘訣(ひけつ)を尋ねた。

村口 とにかく印象ですよね。あの予選会も、腕立て伏せ100回やってもらっていますけど、腕立てができる人を探しているわけじゃない(笑)。

 予選ではなくて、オーディションですから。印象に残るような武器をなんでも提示してもらいたい。極端な話、美人の奥さんがいるならその写真を見せてくれるとかでもいい。「こんなに美人の奥さんを娶(めと)るこの人には、きっと何かあるんだろう」とわれわれは考えるわけですから。

宇宙飛行士、現役のプロ野球選手、現役の国会議員......出てもらいたい職業の人はたくさんいる。

 あとは、長らく消防士のスターがいない。竹田君以降。

村口 自衛隊もいないよね。毎回、必ず枠を取っているけどなかなか活躍できない。それは僕らも悲しい。みんなの町で何かあったとき、助けてくれる人が警察官なり消防士なり自衛隊員なりだと思うんですけど、女子のアイドルより行かなかったりするので。

 まず自衛隊の中でオーディションをやってほしい。

村口 それで一番すごい人を出してほしいですね。そうじゃないと、番組を見ている人が不安になると思う。

初出場の後、結果が振るわなくてもその後、何回か番組に呼ばれる選手もいる。

村口 例えばふたり目の完全制覇をした長野誠さん。彼も、初出場のときは1stステージでリタイアして放送も全カットでしたけど、見ていて光るものがあった。「2、3回呼んで、じっくり育てていこう」という場合も多いです。

乾 その逆で、オーディションでは面白かったけど、現場に呼んでみたら輝かなかったという人もいます。本当になんでもいいんです。応援に来ていた職場の上司が面白い、子供が面白い、とかでもいい。

村口 あとは熱意です。例えば今大会は、前回初出場だった佐久間光太先生という小学校の先生がまた出場されますが、彼は勤務先が川崎市なのに、北海道のオーディションまでやって来た。東京でもオーディションはやるのに。

乾 佐久間先生はわれわれの印象に残ったということです。

対談の最後に、村口氏に定番の質問をした。

――あなたにとって、SASUKEとは。

村口 原点であり、自分を育ててくれた番組です。僕がTBSに入社した1年目が、SASUKEの1年目で。選手の前でルール説明をしたり、バーとかを拭いたり......そのときも乾さんが総合演出として入っていて、僕はADで。

 怒鳴っていました(笑)。

村口 だから、自分がここで育ててもらったように、今の若いスタッフにも育ってもらいたい。今回も、普段は違う番組をやっている若い子たちもたくさん手伝いにきてくれて、ストーブを運んだり、タオルでコースを拭いたり、テレビの大変さとかを学んでいってもらってね。そうしてこの先もSASUKEという番組を続けていきたいですね。

(協力/TBS)

●村口太郎(チーフプロデューサー)
1997年にTBS入社。これまで『S☆1』『世界バレー』『WBC』などの担当を歴任してきたスポーツ番組のエキスパート。記念すべきSASUKE第1回大会ではAD(アシスタントディレクター)として乾氏の下、出場者集めに奔走

●乾 雅人(『SASUKE』総合演出)
1964年生まれ、テレビ演出家。番組制作会社FOLCOM.代表。『ゼウス』『KUNOICHI』など数々の番組演出を手がけ、『SASUKE NINJA WARRIOR』は第1回大会から制作に携わる。SASUKEの"城主"として知られる

■SASUKE
今年で放送開始22年目を迎えるTBSの名物番組。4つのステージを一般人やプロアスリートが己の肉体のみを頼りにクリアしていく形式でヒットし、今では世界165の国と地域で親しまれる大人気番組に。第36回大会は12月31日(月)18:00〜TBS系で、一部は生放送で中継予定

撮影/本田雄士

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