元テレ東名物P・佐久間宣行が語る30代、40代の仕事のベースになる、企画力の"原液"の作り方

「自分の中の『面白い』は、いつでも出せる形にしておいたほうがいい。それが間違っていたとしても『準備しているやつなんだな』と思われますから」と語る佐久間宣行氏

フリーランスのプロデューサーとしてさまざまな番組を世に送り出す一方で、ラジオパーソナリティとしても活躍する佐久間宣行(さくま・のぶゆき)氏。『佐久間宣行のずるい仕事術』は、テレビ東京で過ごした22年間をベースに、「いい仕事」をするための秘訣(ひけつ)をまとめた本気のビジネス書だ。

『ゴッドタン』や『あちこちオードリー』など、人気番組を数多く手がけてきた佐久間氏の仕事術に迫る。

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――テレビ東京を離れ、フリーランスの立場になってちょうど1年がたちます。会社員時代との違いはなんですか?

佐久間 会社員時代にはできなかった仕事ができているというのが一番ですが、その半面、会社のありがたみも痛感しています。会社員って失敗しても守ってもらえる立場じゃないですか? だから、もっと失敗しておけばよかったと思います。

今、Netflixで配信中の『トークサバイバー!』にしても、テレ東時代とは予算規模が違うので「これでコケたら大ごとだぞ」と、不安はありました。

――本書では新人時代の苦悩についても触れられていますが、自分の仕事に自信が持てるようになったきっかけは?

佐久間 本にも書きましたが、入社直後、ドラマのADをやっていた頃の経験は大きいですね。撮影用の小道具を調達するのはADの仕事ですが、ある日の撮影後、監督から「女子高生の手作り弁当を明日までに用意しろ」と言われ、途方に暮れました。

学生時代の飲食店のバイト先で厨房を借りて、徹夜で悩みながら弁当を考えていたところ、ふと「そうだ、ドラマの主人公はサッカー部のマネージャー役だから......」と、ノリを六角形に切って、サッカーボールに見立てたおにぎりを作ったんです。

すると翌朝、それを見た監督が「いいじゃないか。この弁当をストーリーのメインにしよう」と、急遽(きゅうきょ)台本を変更したんです。下っ端の雑用でも、工夫して自分の色を出すと喜んでもらえるんだと、仕事にやりがいを持てるようになりました。

――佐久間さんは3年目にして自ら立てた企画が通り、プロデューサーデビューを果たします。企画力の素地はどのように養われたのでしょうか。

佐久間 僕は昔から、自分が面白いと思った映画や本などを、周囲の人によく薦めるんですが、実はこれがいいトレーニングになっていたと今になって感じます。その作品がどう面白いのか、ネタバレせずにうまく伝えなければ相手は共感してくれない。

いろんな人に話すうちに、面白さの要点を端的にまとめる勘所がわかってくるんです。言い換えればこれは、面白がってもらう方法を磨いていたわけで、企画書の構成や見せ方を考える上で大いに役立っています。

また、何かを面白いと感じた際に、なぜそれが面白いと思ったのか、逆になぜそれがつまらないと思ったのか、つぶさにメモを取って分析した経験も糧になっていると思います。自分の中に企画力の"原液"みたいなものが徐々に出来上がり、これが30代、40代の頃の仕事のベースになった。

"原液"さえ作り上げてしまえば、それに少しずついろんな味を足してアレンジすることができます。深夜のお笑い番組から子供向けのバラエティまで、僕の企画はすべて同じ原液の応用です。

――それは企画の新しさにもつながっている、と。

佐久間 そうですね。結局、面白そうなものや数字の取れそうなものをそのまま企画にしても、どうしてもほかの人が書いたものと似たり寄ったりになってしまいます。

その点、自分が世の中に対して感じている違和感を煮詰めた"原液"を使えば、独創性が生まれるし、「だからこの企画をやる意味がある」という理由づけにもつながります。

――しかし、自分が面白いと思っている企画が必ずしも理解されるとは限りません。企画を通すために大切なことは?

佐久間 企画というのはフリップ芸のようなもので、何を書くかということ以上に、自分が何を出せばウケるかが重要だと思います。実際、若手が出しても通らない企画でも、ベテランの先輩が出すと通るケースってありますよね。

そこを見極め、自分に何が求められているのかを考えるべきでしょう。僕の場合この、「人によって通る企画が違う」という事実に3年目で気づけたのは大きかったですね。

――では企画が通っても、結果が伴わなかった場合は?

佐久間 大切なのは「ダラダラ負け続けない」ことです。例えばテレビでいえば、視聴率が振るわないまま低空飛行を続けると、数字の取れないやつだという印象を周囲に与え、いい仕事を回してもらえなくなってしまいます。

企画が通っただけで喜んでいてはダメで、最低限の目標を設定し、それを実現するため次の一手を用意しておく。それでも結果が出なければ、潔く撤退するという、損切りのマインドを持つことも大切です。

――コロナで働き方も大きく変わりました、4月に入社して働き始めた人にアドバイスをするとしたら?

佐久間 やりたいことや面白いと感じたネタは、日頃からストックしておく習慣をつけることです。「企画書を出せ」と言われて慌てて考えるものより、普段から興味を持っていた企画のほうが面白いのは言わずもがなです。

自分の中の"面白い"は、いつでも出せる形にしておいたほうがいい。それが間違っていたとしても「準備しているやつなんだな」と思われますから。僕自身も、誰にも頼まれていないときに考えた企画のほうが圧倒的に当たります。

コロナで行動が制限されることも多いですが、だからこそ空いた時間を生かして、面白いことに目を光らせておくようにしています。受け手である消費者としての自分をアップデートすることも大切ですよ。

――チームを率いるリーダーはどうすべきでしょう。

佐久間 対面する機会や飲み会の場が減ったことで、コミュニケーションの総量が減ってしまい、リーダーやマネージャーにとっては大変な時代です。でも、そんな今こそ、自分が目の前のプロジェクトに対していかに真摯(しんし)に向き合い、そして楽しみながら取り組んでいるかを行動で見せることが大事だと思いますね。

たぶん、今はそれしかないんじゃないかな。僕も今朝、新番組の企画会議の場で、「よし、この番組は面白いぞ!」と大きな声で宣言してきたところですが、それだけでメンバーの士気は違ってきますから。

●佐久間宣行(さくま・のぶゆき)
1975年生まれ、福島県いわき市出身。テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティ。『ゴッドタン』『あちこちオードリー』『ピラメキーノ』『ウレロ☆シリーズ』『SICKS〜みんながみんな、何かの病気』『キングちゃん』などを手がける。元テレビ東京社員。2019年4月から、ラジオ『佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)』のパーソナリティを担当。YouTubeチャンネル『佐久間宣行のNOBROCK TV』も人気。著書に『普通のサラリーマン、ラジオパーソナリティになる』(扶桑社)がある

■『佐久間宣行のずるい仕事術―僕はこうして会社で消耗せずにやりたいことをやってきた』
ダイヤモンド社 1650円
『ゴッドタン』『あちこちオードリー』などの番組を手がけるプロデューサーの佐久間宣行氏が、テレビ東京に入社した当時の絶望から20年以上かけて身につけた、仕事を進める上での作戦の数々を一冊に凝縮。「仕事術編」「人間関係編」「チーム編」「マネジメント編」「企画術編」「メンタル編」に分けて、入社したばかりの人、責任が重くなって岐路にいる人、やりたいことが見つからない人などに向け、本当に役に立つ仕事術を開陳
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インタビュー・文/友清 哲 撮影/村上宗一郎

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