人気芸人を続々と輩出し存在感を増す「大学お笑いサークル」の超ストイックな生態

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大学サークルは基本的に学生同士の楽しい交流の場と思いきや、最近はお笑いサークルが体育会系の部活動並みにガチ化! 学生主体の大会も開催され、卒業後にプロになる人も。その実態に迫るべく、全3回にわたり各大学のサークル代表や、学生大会の運営スタッフなどの現役学生やOBに聞いた。(全3回/第1回目)

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■サークル活動でプロ同様の経験ができる強み

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昭和の時代はベテラン芸人に弟子入り。平成なら大手事務所の養成所に入所。それが、お笑い芸人になるためのスタンダードな道だった。

そんな芸人への道≠ェ、令和の時代にまた変わるかもしれない。なぜなら、現在のお笑い界で活躍している芸人に、大学のお笑いサークル出身者がじわじわと増えているからだ。

加えて、お笑いライブで腕を磨き、「次にブレイクするのでは」と目される芸人の中にも、お笑いサークル出身者が増えている。大学のお笑いサークルに今何が起こっているのか。

「各大学でお笑いサークルが誕生した15〜20年前は、学園祭や学校の大きな教室でライブを行なうといった活動が中心だったそうです。ですが、今は『三大大会』と呼ばれる大きなコンテストが開催され、その頂点を目指すためにサークル所属の大学生芸人は日々腕を磨いています。

また、ライブハウスで大学生芸人限定のお笑いライブが日々開催されていて、サークル活動の時間にネタを作り、空いている時間でお笑いライブに参加。大会へ向けてネタをブラッシュアップするという、プロの芸人と似たようなサイクルでネタに向き合っている大学生がけっこういます」

今年の新歓ライブの様子。大学公認のサークルということで、学校によっては入場制限など、ソーシャルディスタンスを考慮したスタイルで開催

自身の大学時代のサークル活動をこう振り返るのは、明治大学のお笑いサークル出身で、卒業後に構成作家となった平山 森氏だ。

「学園祭では、たくさんのお客さんの前でネタができる。大学生芸人限定ライブでは、ライブハウスの現場の空気がわかる。三大大会では、勝ち負けという厳しい世界を実感できる。今の大学お笑いサークルは、プロのような経験が積めるんです」

さらに平山氏が続ける。

「私が所属していたサークルの場合は歴史が浅いということがいい方向に作用しているかもしれません。歴史が浅いので上下関係が緩く、下の学年でも気軽に意見を言える。

身内の小さなライブなどの機会も多く、そこでたくさんの人にネタのダメ出しをしたり、されたりすることで改善点が見つかるなど、新たなアイデアが生まれやすい環境でした」

■大学の枠を超えたスタッフのつながり

お笑いサークルには舞台に立つ出演者(演者)と、ライブを開催するために必要なスタッフ(裏方)が所属。スタッフは女性が比較的多いそう

三大大会を通して、運営スタッフの人たちのすごさを感じたというのが、明治大学お笑いサークル出身で構成作家の大矢一登氏。

「お笑いサークルには、舞台に立ちたくて入ってくる人と、舞台の照明や音楽、ライブ中に流す映像の編集といった裏方的なスタッフの仕事をやりたくて入ってくる人がいます。このスタッフたちが大学の枠を超えて連携し、三大大会を運営している。

エントリーする大学生芸人への連絡はもちろん、会場の手配、ゲスト出演をお願いするプロの方への出演交渉、舞台のセッティングなどなど、すべて無償で請け負ってくれる。だから舞台に立つ人は、安い参加費で大きな規模の大会に出場できる」

かつては各大学でお金を出し合い、イベント制作会社にライブの運営を依頼していたという。それをすべて学生たちによる運営へ切り替えたことで、よけいなコストを減らすと同時に、連絡も密に行き届くようになり、ライブの開催がスムーズになったそうだ。こうしてお笑いサークルは活躍の場を広げ発展していった。

だが、やはりお笑いサークルは舞台でネタをやりたい人が集まるイメージだ。スタッフ希望者なんてどれくらい集まるのか?

「どのサークルにも、スタッフ希望で入ってくる人はけっこういます。多ければ出演者とスタッフの割合が5対5。少ないサークルでも7対3ぐらい。横のつながりがしっかりしていて、スタッフの少ないサークルがライブを行なう際は、ほかのサークルから応援が来てくれたりするそうです」(大矢氏)

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■お笑いサークルあるある! 大学を卒業すると......

大学お笑いサークルには、もうひとつ大きなメリットがある。M−1グランプリは結成15年、R−1グランプリだと芸歴10年までという出場制限があるが、この年数に大学お笑いサークルでの活動年数はカウントされないのだ。

「アマチュアとして大学時代に大きな舞台を経験して、卒業後にプロとしてのキャリアが始まります」(平山氏)

だが、プロを目指す人にとっては思わぬ壁も。

「大手の事務所が運営している養成所ではなく、しょせんは大学の一サークルですから、卒業後は普通に就職する人が多い。プロを目指すのはやはり少数派です。サークル活動がきっかけでプロを目指す人もいますが、三大大会で決勝に行くようなコンビでも、大学卒業のタイミングで解散というパターンが多い。

プロを目指してふたりで頑張っていたのに、卒業がきっかけで解散するというのは、大学お笑いサークルあるある≠ナす。相方が就職してしまったので、卒業後に養成所に入って新たな相方を探すという人もいます」(平山氏)

希望する会社や条件のいい会社の内定が決まれば、芸人への道を諦めるのは仕方のないことなのかもしれない。

だが一方で、卒業後しばらくして、芸事の世界に戻ってくる人も少なくないという。

「一度就職したものの、舞台でウケたときの体験が忘れられず、仕事を辞めてお笑いを再び始める人もけっこういます。これもお笑いサークルあるあるです。自分が所属していたサークルのOB、ママタルトの大鶴肥満さんはそのパターンです」(大矢氏)

ちなみに、コロナ時代らしい、こんなあるあるも。

「サークルの後輩に聞いたのですが、1年生がリモートでコンビを組んで、リモートでネタ合わせをして、緊急事態宣言やまん延防止解除後に初めて顔合わせしたら『想像していた以上にガタイがデカい!』なんてケースもあったようです(笑)」(平山氏)

■名物プロデューサー誕生の可能性も!?

大学お笑いサークル出身で活躍する芸人は今後も増えていくのか。平山、大矢の両氏に占ってもらった。

「三大大会のひとつ『NOROSHI』は、吉本興業も関わっている大きなイベント。ほかの大会にもお笑いサークル出身の芸人がゲスト出演するなど、プロの関係者にネタを見てもらうチャンスが増えています。

最近はお笑いサークルがテレビ番組でクローズアップされたりして、プロを目指してサークルに入ってくるような人も多いと思うので、お笑いサークル出身のプロは今後も増えていくと思います」(平山氏)

「スタッフ希望でお笑いサークルに入った人が、テレビ局、芸能事務所、出版社などに続々入社しています。今後はサークル出身の芸人だけでなく、テレビディレクターや芸能マネジャー、編集者といった人たちにも注目が集まるかもしれませんね」(大矢氏)

今後、どんなサークル出身芸人が賞レースで話題となるのか。また、強烈な個性を持つ名物クリエイターがお笑いサークル出身者から誕生するのか。これからも大学お笑いサークルから目が離せない。

取材・文/渡辺雅史(リーゼント)

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