丸山ゴンザレスのクレイジー・タイ・ジャーニー-大麻合法化"グリーンラッシュ"最前線ルポ-

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今年6月、東南アジアで初めて大麻草の家庭栽培が解禁されたタイ。夏の観光シーズンを迎えたバンコク、チェンマイではマリファナをめぐってどんな動きがあるのか? 丸山ゴンザレスが現地で実態をえぐり出す!

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■東南アジア初! タイで大麻合法化

海外の危険地帯を取材するジャーナリストとして活動してきたが、コロナ禍でその活動が制限された。YouTubeチャンネル『裏社会ジャーニー』を開始し、多くの日本人アウトローへのインタビューを重ねてきたものの、2年半もたつとさすがに海外取材に出たい! そんなタイミングで衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。

「タイ、マリファナ合法化!」

すぐにでも現地ルポをお届けしたいが、その前に、マリファナを取り巻くタイの現状を整理しておこう。

医療目的に使用を限定した規制緩和の流れは2019年から始まっていたが、一気に動いたのが今年6月9日。タイ政府は大麻草の家庭栽培を解禁した。マリファナ解禁は東南アジアでは初となる。さらに政府はマリファナを麻薬指定から除外し、過去にマリファナの所持や栽培に関わった3000人以上の受刑者を釈放したのだ。

ほかにも政府は大麻草100万株を市民に無料配布するという大胆な政策を実施し、世界中から注目を集めた。ただし、現段階で使用できるのは医療用に限られ、娯楽目的の使用、道路や公園など公の場での使用は禁止されている。

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7月末の現地取材時には店舗での販売許可などはなく、娯楽目的の使用を取り締まる法律もなかったため、実質的な合法状態にあった(その後、政府は7月末に大麻の無許可販売業者の摘発を開始)。

国内外からマリファナ市場に参入しようとする投資家や各国のマリファナ業者などの動きも加わり、数多くの新ビジネスが立ち上がっている、タイ。

こうした動きは一部で〝グリーンラッシュ〟と呼ばれている。かつて世界各地で起きたゴールドラッシュに引っかけたものだが、それに引けを取らない鉱脈があることは間違いない。

■マスターKが語る、逮捕の真相

一昨年10月に逮捕され、SNSで話題になったマスターK。現在43歳

この大きなテーマを取材するためにタイのマリファナ事情を誰よりもつかんでいるであろう人物にコンタクトを取ることにした。「マスターK」を名乗る日本人である。

2020年10月、彼はタイ・チェンマイの自宅で大麻違法栽培容疑で逮捕された。その際に押収されたのは大麻草400株以上で、そのほかもろもろトータルで84kg。

直前まで更新されていたSNSで「タイ政府公認」と名乗っていたこともあり、日本でもセンセーショナルに報道されたので記憶にある人もいるだろう。

今回は共通の友人の紹介によって、マスターK氏が暮らすチェンマイでのインタビューが実現する運びとなった。

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7月某日、ガラガラの羽田空港からバンコク・スワンナプーム国際空港を経由して、チェンマイ国際空港に到着した。日本を出たのは午前中だったがチェンマイに着いた頃にはすでに夜になっていた。

待ち合わせた空港のロビーからたばこを吸うために外に出ると、スマホにマスターK氏より連絡が入った。最寄りのゲート番号を伝えると、想像よりも小柄で、ロン毛を丁寧に縛った男性がにこやかな顔で近寄ってきた。

「待ちましたか」と第一印象を補強するように穏やかな口調で話しかけてくれた。現在43歳とのことだが、実年齢よりも若々しい。

しばらく雑談してからマスターK氏の運転する車で彼の自宅にお邪魔した。

旧市街から少し離れた静かな住宅街にあり、誰の目にも明らかな大豪邸だった。「すごいですね」と伝えると、彼は「11部屋あります」と教えてくれた。

敷地内にはプールや倉庫、「マザー」と呼ばれる母株を育成する専用の部屋があり、そこには強力なライトや複数台のエアコンが設置され、徹底管理された大麻草株の育成が行なわれていた。ほかにも敷地の一角で試験栽培の大麻草を干すなど、大麻農家としての設備は十分だった。

とはいえ、噂に聞いたマスターK氏の所有するマリファナは数十kgあったはず。それにしてはいかに豪邸とはいえ、ここで栽培するには難しいのではないかと思う人もいるだろうが、それには事情がある。

本来であればチェンマイの某所にある巨大な農園にお邪魔させてもらう予定だったが、共同経営者との間にトラブルがあり、今回は見ることが叶(かな)わなかった。それでもマスターK氏は「タイではよくあること」と笑い飛ばした。

彼の豪快な性格が窺(うかが)えたが、そもそも逮捕後のマスターK氏の生活は表に出ておらず、とにかく謎が多い。どうやってこの豪邸に暮らすことができているのかという疑問も含め、彼の豪邸の離れに泊まらせてもらい、翌日の午前中からインタビューをすることになった。

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――まずは一昨年10月の逮捕についてお聞きしたいです。そもそも現在も裁判中のはずなのに、どうして豪邸に暮らせているんですか?

マスターK あれは日本側の僕のことをよく思ってない人たちのチンコロ(密告)なんですよ。当時は合法にはなっていないので闇栽培だったんですが、それでも3日で(保釈されて)出て来れたんです。正直なところを言えば、さすがに量が多いので確実に営利目的と判断されて何年かは刑務所に入ることになるし、お先真っ暗だと思っていましたよ。

でも運が強かったんでしょうね。コロナ禍で裁判が延期されて、公判が始まったときには法律が改正されていました。それで無罪確定の裁判を続けることになったんです(判決は今年9月末の予定)。あとはこっち(チェンマイ)の有力者に拾ってもらって栽培を続けられています。

――では保釈中も栽培は続けていたんですか?

マスターK そうですね。タイでは5年くらい前、まだ違法なときから作ってたんですよ。自分だけリスクのない状態でやってもダメでしょ。日本や違法な国で作ってる人たちはリスクを背負ってる。自分も同じようにリスクを背負って作りたかったんですよ。それぐらいの覚悟を持ってますから。

それに何年も前からタイではマリファナ解禁の噂があったし、何よりもタイに暮らしてたら普通にあるもんだった。「しょせん大麻やろ」ぐらいなつもりでいました。

――豪邸に暮らす資金源はやはりマリファナですか?

マスターK マリファナ農家ですからね(笑)。今のペースでいくと巨人の選手ぐらいの稼ぎになるんじゃないかな。

――どうしてタイで大麻栽培を始めたんですか? 大学で研究していたとか?

マスターK もともとお米の栽培を研究するために、チェンマイ大学の大学院に入学したんです。自分で研究したり、栽培したりしてみてわかったんですけど、米って安く買い叩かれるんですよ。いくらいいものを作っても儲からない。

それなら儲かる農産物にしようと思い、マリファナを作ったんです。実際儲かるんですが、それ以上にマリファナを渡すと周りの人に喜ばれるんですよ。それがうれしかった。

――意外な経歴ですが、もともと、日本では何を?

マスターK 九州の実家で家業を継いでたんですが、家庭の事情で29歳のとき別の仕事に転職したんです。もともと海外に出たいって気持ちがあって海外に勤務できる条件で探したんですが、赴任したのがインドの奥地でした。毎日通勤路が片道100km。とんでもない場所でプラント工事を担当したんです。

そんなところで自分ひとりで仕事して経験を積んだことで起業しようと思うようになったんです。副業的に自分の会社を立ち上げたのがタイでした。その仕事がうまくいったので、勤めていた会社を辞めて移住して、最初はバンコクに住んでいたけど、農業をやるためにチェンマイに移住して大学院へと繋(つな)がっていきました。

――タイのマリファナのレベルと、この先の展開をどう見ていますか?

マスターK (レベルは)まだまだですよ。ようやく解禁になったばかりで、これから一気にレベルが上がっていくと思いますよ。

農産物って量、質、儲けの3点が重要になってくるんです。高品質で安いものを数多く作って儲けを出す。これが自分の目指すところなんです。そしてタイのマリファナ業者にも気づいてほしいことです。

だけど、今のタイはマリファナが儲かるからという理由で誰もが作って売り出してる。供給が多くなっても、販売も強気な値段設定にする。そうやってバブルのように値段が上がっていくのは良くない状況だと思っています。

この夏の旅行シーズンに合わせた解禁で、せっかく世界中の人がマリファナ目当てに来るのに、高くて質の悪いマリファナを売りつけたら、もう来てくれなくなりますよ。

でも、こんな状況は長く続きません。今は先にマリファナを非犯罪化しただけで、法律が追いついていない状況です。国会で審議が進めば、数ヵ月後には取り締まる法律や販売の基準が決まるはず。それまでの期間限定の〝無法地帯〟だと思っていますね。

――最後に、日本では違法なマリファナを日本人として手がけるリスクについて、どう思っていますか?

マスターK 自分が目立つことでグロウ(大麻栽培)に対して情熱を持っている人に届けばいいなと。日本で隠れて逮捕されることに怯(おび)えているぐらいなら、タイに来て自由に作れるってことを知ってもらいたいんですよ。

自分はもう日本に戻る気もないし、日本の法律に縛られたくもない。グロワー(大麻栽培者)は種さえあれば、3ヵ月で金にすることができるんです。世界中どんな場所であってもね。

■1gが1万円以上!?天井知らずのバブル価格

グリーンラッシュとは、すなわちバブル状態であるという。では、実際のところどうなのかを見て回るため、バンコクに移動した。

中心部では、探す必要がないほどあちこちでマリファナが販売されていた。マリファナの葉っぱのマークが描かれた看板を掲げる店や、夜にはテーブルにマリファナを置いて販売する露天商もいた。

現在、バンコク中心部ではマリファナを販売する店が急増中。ただし、ジョイントはたばこと同じ扱いになるため、無許可での販売は禁止

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気になる客層はどうなのか、アソーク地区にある販売店の「Sensii Dispensary」のスタッフで日本育ちのアメリカ人ジェイクさんが教えてくれた。

「最近は観光客も戻ってきているから外国人が多いね。日本人も多いよ。6月の解禁の後、すぐに来た日本人は何万バーツ分も買っていったよ」

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開店から1ヵ月ほどだという店内にはタイ産と輸入ものの2種類が置いてあり、1g当たり400~1000バーツ(日本円で1500~3800円ほど)で販売しているそうだ。聞いていたとおり、法律の規制なく誰でも販売できるが、ジョイント(たばこ状のマリファナ)はたばこの扱いになるため無許可で販売できないという。

カリフォルニアの正規店よりも高値で販売する露店もあるという

一方で街中を歩けば露天では堂々とジョイントが販売され、禁止とされているエディブル(食用品に加工されたマリファナ)も売られていた。

バブルが指摘されている価格帯について、私が市場調査で見て回ったなかで最高値は1g当たり2960バーツ(日本円で1万1000円ほど)。これでは米カリフォルニアの正規店で販売しているものや、日本のアンダーグラウンドで販売されているものよりも高価である。歪(いびつ)な状態であるのは間違いない。

そして、バンコク市内にはマリファナ先進国のオランダにあるようなコーヒーショップ(大麻の購入・使用ができる施設)もすでに登場している。本来であれば、プライベート空間でしかマリファナを吸うことはできないのだが、グレーゾーンの今だからこそ、こうした店も増えているようだ。

法律的には微妙だが、工夫を凝らして観光客を呼び込もうとしているのがよくわかる。それだけ観光業は追い詰められているのだ。

■日本人旅行者が増えつつあるが......

フードコートで売られているガパオ。揚げたマリファナがライスの上にのっている

法律的な話は今後さらに問題になるだろうが、筆者の肌感覚ではもっと別の問題の種が育ちつつあるように思えた。というのも、最近のバンコクはグリーンラッシュに一枚噛(か)もうとする有象無象の日本人が集結していると言われているからだ。なかには日本を飛び出したアウトローたちの存在もちらほら噂されている。

しかも、彼らがターゲットにしようとしている日本人旅行者は確実に増えつつある。取材中に出会った日本人旅行者に話を聞いたところ、「合法になったって聞いて急いで来ました。自分の国では犯罪ですから。それが堂々と買えるって最高ですよ」とのことで、すでにマリファナが観光の主目的になっていた。

7月の段階では〝わかっている日本人旅行者〟が多い印象だが、良くも悪くもマリファナ知識があるからこその振る舞いをしているように思えた。今後、往来が盛んになり多くの人がマリファナに触れることでハードルがさらに下がっていくだろう。

そうなると安易な行動に出る人も現れるかもしれないが、合法なのはあくまでタイでの話であり、日本では「違法」なのだ。だからこそ、最後に各種報道などですでに耳になじんだ言葉で締めたい。

「日本の大麻取締法では、タイを含む海外に居住する日本人が栽培や所持、譲渡などを行なった場合でも処罰対象になることがある」

いくらタイで入手可能とはいえ、軽率な行動はしないでもらいたい。

●丸山ゴンザレス 
1977年生まれ、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大学学術資料センター共同研究員。『クレイジージャーニー』(TBS)に危険地帯ジャーナリストとして出演し、人気を博す。最新刊は村田らむ氏とのコミック『危険地帯潜入調査報告書』(全2冊、竹書房)

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●マスターKインタビュー全編および施設の様子は、YouTubeチャンネル『丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー』で公開中! ヤクザ、半グレ、芸能界の怖い話、反社会的勢力などについて深掘りする"解説型教養バラエティー"。8月26日現在で登録者数は83万人超の人気チャンネル

取材・文・撮影/丸山ゴンザレス

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