関西弁ペラペラのJ-POP解説が大人気! アメリカ人音楽博士のワールドワイドな音楽愛

「僕は声が低めなんで、カバーする場合、曲によってはキーを下げまくって歌います。そのほうが、無理やり高いキーに合わせて苦しい歌い方するより、元のアーティストさんに近い表現ができると思います」と語るドクター・キャピタル氏

流暢な関西弁でJ-POPの楽曲分析を披露し、ギター一本でオリジナルアレンジの弾き語りをするアメリカ人YouTuber、ドクター・キャピタル。「音楽博士やさかいにドクターやねん」の決まり文句にウソはなく、これまで南カリフォルニア大学や北テキサス大学などで音楽理論を教えてきた音楽博士だ。

そんな彼の初の著作『ヒット曲のリズムの秘密』がYouTubeチャンネルとのシナジーで話題を呼んでいる。近い将来、音楽を愛する人なら誰もが知る存在になりそうなドクターを、今のうちに直撃しておこう!

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――ご著書、拝読しました。リズムだけ、それも取り上げる曲はほぼJ-POPで新書1冊! 楽器がなくとも手足と口だけで体感できるように作られていて、非常におもしろかったです。

ドクター・キャピタル(以下Dr.) ありがとうございます。リズムはものすごい大事なのに、「この曲ノリノリだね」とか「グルーヴ気持ちいいね」とか、割と曖昧(あいまい)にしか語られないことが多いと感じていたので、もったいないな、と思って書きました。

――本書にも書かれていますが、子供の頃、ホームステイで訪れていた日本人に教えられてJ-POPを知ったそうですね。

Dr. はい。ずっと音楽好きでしたけど、J-POPというそれまで知らなかった素晴らしい世界に出合い、そこに入り込んで今も探検を続けてる感じです。

――初めて歌えるようになった日本の歌はなんでしょう?

Dr. CHAGE and ASKAの『SAY YES』です。いい歌です! その頃はまだ日本語がわからないから、辞書でひとつひとつ単語を引きながら覚えていきました。

語学の勉強に、実は歌はよく合ってると思います。丸暗記したフレーズをちょっと変えて日常で使ったりもできますしね。僕が一番好きだったのはRCサクセションの忌野(いまわの)清志郎さんで、彼のクリエイティブな詞から日本語を学んだので、ひょっとしたら僕の発言が清志郎っぽくなることもあるかもしれません(笑)。

――関西弁はどこで身につけたのですか?

Dr. 日本語は大学の授業でも学び、その後、日本に留学して勉強したんですが、関西弁は正式に学んだものではなく、ただ知り合いに関西人が多かったから身についてもうたんです。

――YouTubeのチャンネルも見させていただいてます。私自身、素人ですが先生と同じく指弾きのガット(ナイロン弦)ギターをたしなむこともありまして、ここからは生徒目線で質問してゆきたいです。

Dr. どうぞ、どうぞ。

――クラシックから洋楽、そしてJ-POPまで幅広く例を挙げて説明されてますが、ひとつの曲の解説をするのにどれくらい準備なさるのですか?

Dr. ある一曲のリズムやコード進行を徹底的に分析すると、次の曲を聴いたときにけっこうかぶる部分が出てきたりするんですね。だから2曲目はずっと楽に分析できます。その積み重ねがまずあるとお考えください。

僕は学生時代からそれこそ数え切れないほどの曲を分析してきて、大学で音楽理論を教えるようになってからは生徒さんのリクエスト曲を教材用に分析してきました。その経験があるから、例えば今、初めての曲を聴くとしますね。そしたら1回聴いただけで1時間くらいはその曲についての話ができます。

そんなわけでYouTubeで曲解説をやるときは、分析自体はすぐ終わります。あとは日本語でうまく伝えるための台本づくりと撮影、編集ですが、そっちのほうがはるかに時間がかかります。

――解説に続けて弾き語りの実演がありますが、毎度毎度、素晴らしいアレンジですね。弾き語りというより、ソロギターに歌を乗せているような。

Dr. ありがとうございます。僕は中学・高校とクラシックギターを習って指弾きの基礎を学び、その後、ブラジル音楽にハマりました。J-POPと同じくらいどっぷりつかったのがブラジル音楽で、ボサノバのレパートリーは200曲くらいあります。だから僕の弾き語りアレンジはブラジル音楽の影響が出てると思います。

――納得です。アレンジの楽譜はお書きになるのですか?

Dr. 普通は書きません。集中的にアレンジして、覚えて、歌いながら弾いているとすべての動きが自動的になってくるんです。ただ、複数のパートが別々に動くような非常に複雑な箇所は、数小節だけ楽譜を書いて確かめることはあります。

『名もなき詩』のアレンジなんかがそうで、自信作ですよ。で、収録して2週間もすれば忘れてしまいます。ライブとかでまた覚えなあかんときは、自分のYouTube見て学ぶ(笑)。

――アレンジで心がけていらっしゃることは?

Dr. 自分のチャンネルで取り上げる曲は、ただ、「好き」ってだけではなく、「これ挑戦してみよかな」って曲もあったりして。どんな曲でも工夫して、おもしろいところを生かし、自分好みのアレンジができると信じてやってます。

――歌もお上手でいらっしゃる。

Dr. ほんとですか? 実はいまだに自信ないんです。僕の場合、歌に自信がある人がギターも弾いてるのではなく、ギタリストとして、自分のリードボーカルを乗せたいというのが原点だったんです。でも高校のときに作ったアルバムはひどい出来で、みんなから「おまえ歌ヘタや」言われて。それから何年も、歌をやめてた時期がありました。

――ドクター・キャピタルにもそんな挫折があったとは!

Dr. ほんま、あのアルバムはいまだに、冗談でも人に聴かせたくありません(笑)。でも、その後、ブラジル音楽を始めると、ボサノバの曲はあまり音域を広く使わず、しゃべるような歌い方で成立するので、気持ちよく歌えるようになりました。そこからだんだんと弾き語りに慣れていったんです。

僕は声が低めなんで、カバーする場合、曲によってはキーを下げまくって歌います。アレンジも、原キーにはまったくこだわりません。そのほうが、無理やり高いキーに合わせて苦しい歌い方するより、元のアーティストさんに近い表現ができると思います。

――貴重なお話をありがとうございます。日本での今後のご活躍を楽しみにしてます。

Dr. ありがとうございます。日本はめっちゃ住みやすいし、大好きです。

●ドクター・キャピタル
1974年生まれ、アメリカ・オレゴン州出身。音楽博士、YouTuber。 南カリフォルニア大学で音楽教授として教鞭を執るかたわら、2017年にPerfume『ポリリズム』を解説したYoutube動画が反響を呼び、現在まで宇多田ヒカル、米津玄師、サカナクション、DA PUMP、星野源など、さまざまな邦楽アーティストのヒット曲を解説している

■『ヒット曲のリズムの秘密』
インターナショナル新書 880円(税込)
ギターを手に関西弁をあやつる人気YouTuber、ドクター・キャピタルのJ-POP解説が初の書籍化! 普段、テレビや街中で耳にするヒット曲について、アメリカ人音楽教授が本気で研究。J-POPのヒット曲が持つ「リズムの秘密」について徹底的に考察しながら、日本の大衆音楽を丸裸にする一冊。解説曲は郷ひろみ『2億4千万の瞳』、寺尾聰『ルビーの指環』、藤井風『何なんw』、GReeeeN『キセキ』など60曲以上を収録
本人襲撃_ドクターキャピタル1.jpg

取材・文/前川仁之

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