「賞を狙いにいった芸人だと覚えられるのがイヤ」友近が語る"お笑い欲求"

「賞を狙いにいった芸人だと覚えられるのがイヤ」友近が語る"お笑い欲求"

過去のユニットコントをまとめたDVDをリリースした友近

著名人のモノマネから、コントでは旅館の女将や大阪のおばちゃんなどの名も無き一般人を演じ、笑いを生み出す芸人・友近(ともちか)。その人間観察力とお笑いに対する真剣さは、幼い頃から片鱗を見せていたという。

普段はピン芸人として活動する友近だが、自身の主催ライブではバッファロー吾郎Aや秋山竜次(ロバート)など数々の芸人とともに集団コントを展開。ひとりコントにはないスケール感のネタを披露している。

先日リリースされた『友近コント作品集「演(や)って候(そうろう)」PREMIUM BOX 2014‐2018』には、2014年から2018年までに上演された『友近コントライブ 友近ハウス』『友近連続ライブ小説 おそかれはやかれ』『友近コントライブ 友近ワイド劇場』を収録。どの公演も即ソールドアウトするほどの人気ぶりだ。

そんな友近に舞台の魅力から、厄介な性格やまさかの天職など本人の意外な素顔を聞いた。

■感動すらもたらす、ふざけた魂

――ピン芸人という印象が強いので、舞台では集団コントをやっているのは少し意外でした。

友近 何十年も単独ライブをやっているなかで、やりたいことが増えてきて、そのひとつがユニットコントだったんです。でもなかなかひとりではできないから同じ価値観を持った面白い人を集めようと始めたんです。

――人が増える分、世界観の統一は難しくなるのでは?

友近 それがないんですよ。最初からこの人たちに任せてたら大丈夫っていう尊敬している先輩や後輩に声掛けしてるし、そこの心配はまったくなく。

私がよく言うのはキャスティング担当プロデューサーになりたいんです。この人たちを組ませたら絶対面白いって、間違いないことが多かったので、そういう意味ではメンバー集めとか声掛けするのは間違いないと思ってるんですね。

――作品を観ると全員が真面目に演技していて、笑わせようとしていないのに面白いという不思議な感じでした。

友近 ボケがないのにずっと面白い空間が続いているっていうのが好きなので。もちろん全体がボケになってるんですけど。いつものメンバーだと、それを永遠とやり続けられるので楽しいんです。

それに私がプロデュースしている水谷千重子も、ライブをやるとお客さん自身が、「50年間応援してますよ」っていう顔で座ってるんですよ。「お客さんもコントしたい人多いんだ」と舞台で実感します。私も共有したいのでいいんですけど、水谷千重子はふざけて始めたはずなのに人に感動与えてるってどういう現象?って思います(笑)。

――友近さんは普段からドラマなどで演技していますが、真面目なお笑いの演技と混同しないんですか?

友近 まったくないですね、コントは最初から笑かしたいという気持ちで、やるときは常に魂がふざけてるので。むしろコントと違うように演じなきゃいけないなと心掛けてます。

――友近さんと言えば、コントでデフォルメした普通の人を演じることが多いと思いますが、その洞察力は昔からなんですか?

友近 人を見るのがクセでしたね。あと、気になる台詞とかは耳に残って大人になっても覚えてます。幼い頃の環境とかめっちゃ大事になってくるなって思いましたね。ロバ−トの秋山さんともしゃべるんですけど、見てきたものがすごい似てる。

――見てきたものとは?

友近 たとえば、ふたりとも地方のCMネタをやってて、「地方にある静止画像でナレーションだけのCMって、やっぱ面白いよね」って話してましたね。違和感を持つポイントが共通しているなと。

■もっと滑ったれ! 抑えきれない笑いへの欲求

――その頃から面白さを感じる点は変わらないんですね。

友近 当時、面白いとは思ってなかったかもしれないんですけどね。でも「面白いことを常にしたい、思っておきたい」っていうのは小学校の頃から変わらずにありました。ただ嘘が嫌いで、面白くないことには笑えなかったので、笑わない子って言われてましたね、小学生の先生に。家でも親の前ではおとなしいのに、姉の前ではなんでもしゃべるっていうちょっと変なコでした。あと、危機的状況でもゾクゾクするっていうのは昔からありました。

――どういうことですか? 危機的状況って。

友近 昔は「不良ってどんな服装で、どんなバック持ってるんやろう?」とか、すごく観察してたんですよね。そうすると「あいつ、めっちゃ睨んでる」ってなるでしょ。だから「へー、じゃあケンカ売られたら買ってやろう」って思ってめっちゃ体鍛えてました。

――止めておこうとは思わないんですね。今でもですか?

友近 今、私が発言してることによって「仕事なくなるんちゃうか、嫌われるんちゃうか」って思っても、どっかで「正義やから言ってもいいはず」って思うとゾクゾクするんですよ。ネタで滑っても、「よし! もっと滑ったれ!」みたいに思ったりもするし(笑)。「もっとポカンとさせたるわ!」とか......(笑)。

――それで後悔はしないんですか?

友近 しないんですよね。これが厄介なんですよ。賞レースでも、優勝するネタよりやりたいんやっていうネタを持っていってしまう。それでも面白いって思ってくれる人もいるだろうし、賞を狙いにいった芸人だと覚えられるのがイヤなので。それで損してることもあるし遠回りすることもあるんですけど。

――そこまで自分のお笑いに懸けているんですね

友近 でも、以前ロケで自閉症の人がいたんですけど、そういう人とちゃんと向き合って心を開かしたいなって気持ちもあったりするんですよ。今まで病気でいろいろ諦めてたんなら、そんなことないんやでって。それでその人が私と話した15分くらいでめちゃくちゃ変化していって、実際に介護やカウンセリングも向いているのかなと思いました。

――すごく意外です。今後はその道に進むこともあり得るんですかね。

友近 今、芸人辞めてできるかっていわれたら、まだお笑いのほうしたいんですけど。ただいつかプラスアルファとして、あってもいいのかなと思ってます。まだしばらくは今回のDVDでお世話になった仲間たちと、いろんな舞台を作ってお客さんと面白さや舞台の一体感を作っていきたいです。

取材・文/鯨井隆正 撮影/五十嵐和博

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