ヒット作の裏側からM−1挑戦まで! 漫画家・森田まさのりの素顔が一冊でわかる書籍『べしゃる漫画家』

ヒット作の裏側からM−1挑戦まで! 漫画家・森田まさのりの素顔が一冊でわかる書籍『べしゃる漫画家』

「僕はしゃべるのが得意だったら芸人さんになりたかった。でも、苦手だったから漫画家になったんです」と語る森田まさのり先生

『ろくでなしBLUES』『ROOKIES』『べしゃり暮らし』などで知られる漫画家・森田まさのりが自身の人生や大ヒット作品について初めて語った書籍『べしゃる漫画家』(集英社)を出版。

本書の出版に至ったのは、昨年出場したM−1グランプリ2018(準々決勝まで進出しベストアマチュア賞を受賞)がきっかけだったとのことだが......。

森田 漫才のネタの中で「誰も密着してくれていない!」と怒っていたのですが、実は写真家のタカハシアキラさんが密着してくれていまして(笑)。まさかでしたが準々決勝まで行き、予想以上の枚数の写真がたまったので、何かの形にできないかということでこんなおかしな形の本が完成しました。

――収録されている中でも、特にお気に入りの写真はありますか?

森田 ルミネtheよしもとのステージの真下から撮ってもらった写真ですね。こんな写真、芸人さんでもなかなか撮ってもらえないでしょ。ルミネの舞台に立てたことは一生の思い出です。

あと、長田くん(森田先生の漫才の相方であり『キッドアイラック!』などで知られる漫画家・長田悠幸[おさだ・ゆうこう])とふたりで背中を向けてネタ合わせをしている写真もお気に入りです。息の合ういいコンビになっている感じが伝わってきます。

――ほかにも、自身の半生や作品を振り返る3万5000字インタビューや「神」と崇(あが)める伊集院光さんとの対談などもあり、内容の濃い一冊になっています。

森田 人生でこんなに話したことはありませんでしたよ(笑)。でも、聞かれないとなかなか過去のことを思い返したりしないので、いい機会になりました。

――『ろくでなしBLUES』『ROOKIES』の制作秘話も満載ですが、特に読んでほしいポイントは?

森田 『北斗の拳』を描いている原哲夫先生のアシスタント時代、シュウがピラミッドの先端を運ぶシーンを僕が描いたことなど、初めて公開した話もあるので、そういうところはファンの方も楽しんでいただけると思います。

――ファンの中では有名かもしれませんが「4年計画」の話も印象的でした。

森田 僕は上京したとき、1年目でアシスタントになって、2年目で読み切りを何本か描いて、3年目で連載を持って、4年目でお金持ちになると決めていました。実際に連載を持ったのは4年目からでしたが、原先生にも最初から「アシスタントは1年で辞めます」と宣言していたんです。生意気ですよね。

――その後、順調に『ろくでなしBLUES』『ROOKIES』と大ヒット漫画を生み続けましたが、なかでもお笑いをテーマにした『べしゃり暮らし』は先生の中でも特別な作品とのことですね。

森田 僕はしゃべるのが得意だったら芸人さんになりたかったというくらい「お笑い」が大好きなんです。苦手だから漫画家になったので、芸人さんへのリスペクトは大きいですね。

――「苦手」と言いつつも昨年のM−1では見事、準々決勝まで進出されました。

森田 夢のような時間でしたね。舞台上から聞くお客さんの笑い声をたとえると、五線譜の一小節に大量の音符がびっしり詰め込まれたかのように、和音の塊がドンと響いてくる感じなんです。あれは忘れられません。

――M−1出場後はヤングジャンプで『べしゃり暮らし』の続編を10話限定で連載再開され、第一部が完結しました。M−1に出場したことは作品を描く上で何か影響はありましたか?

森田 まだ読んでいない方のためにネタバレにならないように話しますが......。主人公の圭右(けいすけ)と辻本に「自分たちにしかできないネタをやらせよう」と思ったのは、僕がM−1に出場したからこそですね。

僕たちも試行錯誤の末に「漫画家」という立場を生かしたネタで勝負しようと決めた経緯があったので。

――ラストの展開や結末も予想外でした。

森田 漫画なのでピンチをつくらないと盛り上がらないということで、そこは現実にはあまり起こらない設定だったかもしれません。ちなみに僕が経験した最大のピンチは漫才師としての初舞台でネタを完全に飛ばしてしまったときでした(笑)。

――また『べしゃり暮らし』は間宮祥太朗主演、劇団ひとり演出でドラマ化もされ、先日、全8話が完結しました。

森田『べしゃり暮らし』の実写化は夢だったのでうれしかったです。『ろくでなしBLUES』も『ROOKIES』もドラマ化されましたが、「お笑い」がテーマということで、僕にとって大切な作品なので。テレビを通してより多くの方々に届いていたらと思います。

――実写化ということで、不安な点はありませんでしたか?

森田 漫才シーンがうまくないとシラけてしまうな......と少し心配していたのですが、皆さん本当の漫才師のように演じていただいて、さすがでしたね。

ドラマ内ではどのコンビの漫才も一部分しか使われていないので、フルバージョンを披露するお笑いライブは実現させたいですね。間宮さんと渡辺大知さんのコンビでM−1に出てほしいくらい(笑)。

――森田先生、ズバリ、今後M−1に出る可能性は?

森田 それは正直低いです。準々決勝は自分にとってかなり満足のいく結果なので。ただ、また漫才師としてどこかのステージに立つ可能性はあります。実は、すでに長田くんが新ネタを書いていますので(笑)。

――最後に、漫画家としての今後の展望を教えてください。

森田 『べしゃり暮らし』の第一部は完結しましたが、第二部の「プロ編」は必ず描きます。主人公やタイトルは変わるかもしれませんけど。そして、それは僕の一生のライフワークになると思っています。死ぬまで完結しませんので、描き始めたら「森田はこのまま死ぬまで描き続けるんだな」と思ってください(笑)。

――ちなみに、ほかに描いておきたい漫画はないですか?

森田 強いて言えば、自分の絵でホラー漫画を描いたらどうなるかは気になっています。あと、アニメ化されて子供に愛される漫画も描いておきたいかな。

――藤子不二雄A先生の『まんが道』のような自伝はいかがでしょう?

森田 自分のいい話ばっかり描いちゃいそうなので、それはやめておきます(笑)。

●森田まさのり(MORITA MASANORI)
漫画家。1966年12月22日生まれ、滋賀県出身。1987年、『週刊少年ジャンプ』にて『BACHI-ATARI ROCK』初掲載。翌年に連載開始となった『ろくでなし BLUES』で大ブレイクを果たす。そのほか、代表作は『ROOKIES』『べしゃり暮らし』。お笑いにも造詣が深く、2018年に「M−1グランプリ2018」に出場。準々決勝に進出し、ベストアマチュア賞を受賞した

■『べしゃる漫画家』
(撮影/タカハシアキラ  集英社 1400円+税)
『ろくでなしBLUES』『ROOKIES』『べしゃり暮らし』の3作品累計発行部数7500万部超の人気漫画家・森田まさのり初の作家本。「週刊少年ジャンプ」持ち込み時のエピソード、アシスタント時代の秘話などの35000字インタビューから、"神"と崇めるほどに尊敬している伊集院光氏との対談、そして昨年「M−1グランプリ2018」に出場し、本気で漫才に挑んだ様子を写真家・タカハシアキラ氏が密着撮影した様子まで盛りだくさんの内容

取材・文/黄孟志 撮影/石川耕三

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