オークラ×佐久間Pが語る10年目の『ゴッドタン』。「『キス我慢』は最初、スタッフから反対されてたんです」

オークラ×佐久間Pが語る10年目の『ゴッドタン』。「『キス我慢』は最初、スタッフから反対されてたんです」

業界騒然のヒット作の秘密を、オークラ氏(左)と佐久間宣行氏が語る!

テレビ東京系の人気深夜番組『ゴッドタン』が今年で10年目に突入。

「キス我慢選手権」や「芸人マジ歌選手権」など、業界を騒然とさせるヒット企画を次々と生み出してきた、テレビ東京プロデューサー・佐久間宣行氏と放送作家オークラ氏は、どのようにして企画を考え、出演者をキャスティングしているのか?

前回記事「レギュラーMCによる番組ウラ話」に続き、企画のふたりに制作秘話を聞いた!

* * *

―『ゴッドタン』は何がキッカケで始まったんですか?

佐久間 2004年頃、劇団ひとりやおぎやはぎが出演する『大人のコンソメ』という番組で、オークラさんと一緒に「目の前の青汁を話術だけで飲ませる」という企画をやったんです。現場のノリだけでドンドン盛り上がっていって、それが『ゴッドタン』の原点になりました。

オークラ その巧(たく)みなしゃべりが“神の舌”だってことで、『ゴッドタン』というタイトルになったんです。

佐久間 レギュラー放送が始まって、もう10年。『ギルガメッシュないと』より続いているのは僕の誇りです(笑)。

―企画作りにおいて、この10年で変わったことは?

佐久間 大きく何か変えたっていうのはないですね。プロデューサーの僕が言っていいのかわからないけど、この番組に限っては視聴率の話をしたことが1回もない(笑)。

オークラ 今のテレビ業界って「あの番組が高視聴率を獲ったから、こんな企画がウケるんじゃないか」っていう視聴率分析から入る番組が多いんですよ。けど、『ゴッドタン』は違って…。

佐久間 たとえ数字が悪くても、収録が面白ければ再びラインアップに入れたりする。自分たちの手応えを信じているんですよね。例えば、キングコングの西野をイジるのが面白かったら、スタッフに「次の企画会議までに西野で何か」みたいな感じで宿題を出す。だから、放送後の反響を見て企画を決めるってことはそんなにないんですよ。

―収録現場のノリが大事と。

オークラ でも、ただムチャしてるわけでもないんです。

佐久間 そうそう。

オークラ 乱暴な番組と見せかけて、会議や打ち合わせは綿密にやりますし、実はオチまでがっちり詰めて収録している。その上でぐちゃぐちゃになることがあって、それをよしとしているだけなんです。

佐久間 台本もガッツリありますしね。出演者たちが落としどころに困ったときは、ここに向かってくださいというオチもたくさん用意してあるんですよ。でも、出演者がそれを超えたいと思って努力してくれるから、「じゃあ、一緒にゴールを探そう」っていう感じで、台本とは関係なく長めに収録することも多い。

オークラ 綿密に作り上げるっていう意味では、芸人たちがオリジナル曲を披露する「芸人マジ歌選手権」も、収録日の半年以上前からあれこれ考えています。打ち合わせを繰り返し、芸人と一緒に曲のコンセプトを考えたりして。

佐久間 毎回、ミニアルバムを作っている感じだよね(笑)。

―「マジ歌」は来春、武道館ライブを開催しますが、企画立ち上げ当初はここまで大きくなると思ってました?

佐久間 いや、まったく(笑)。最初は芸人が昔作った恥ずかしい曲を披露するって企画でしたから。それが生で歌を聴きたいという要望が多くなって、思い出作りにライブを1回やったらチケットが即完売。そのうちテレ東の事業部も巻き込み、毎年ライブを開催するまでになりました。何が大きく成長するかわからない。

―「キス我慢選手権」も爆発的な人気を得て、2度にわたって映画化されています。深夜番組の企画が映画になるって前代未聞ですよね。

佐久間 この企画を最初に思いついたとき、実はスタッフから反対されたんです。

オークラ だって普通、キスは我慢できるでしょうし(笑)。

佐久間 だけど、どうしてもやりたくて、一回シミュレーションをやらせてくれって言って。そのときに来てくれたのが、みひろだったんです。

オークラ 劇団ひとりとみひろの演技がスゴくて、いつの間にか、いかにドラマチックにキスするかっていう方向に変わっていったんです。

佐久間 回を追うごとにスタッフも乗せられて、カメラワークなんてバラエティのそれじゃなくなったし。あの企画は完全に現場で育ちましたね。

オークラ 「マジ歌」や「ストイック暗記王」もそうかも。長続きする企画は、みんな現場で作り上げた感じね。

―ゲストのキャスティングはどう決めるんですか?

佐久間 番組を見るとわかると思いますが、別に旬の人を出したいってわけではない。普通のキャバクラ嬢や、ほかの番組のオーディションに落ち続けているアイドルとか、月収5万円の中堅芸人のほうが面白かったりするから。

オークラ 『ゴッドタン』のいいところは、こいつやべえなとか、すべったなっていう空気になったとき、それを面白がろうとするところ。

佐久間 ネゴシックスなんか典型だよね。『ゴッドタン』ではすごくハマるけど、ほかの番組に呼んだとき、1時間半の収録でふた言しかしゃべらなかったから(笑)。

オークラ 最近はアイドルの小池美由や三四郎の小宮みたいにブレイクする出演者も出てきた。だんだんと世の中とマッチしてきたのかも(笑)。

―おふたりが今、注目しているタレントさんは?

オークラ 佐久間さんは曇天三男坊ですよね?

佐久間 そう。いろんな企画で「これなら、どんちゃん、いけるんじゃないの?」って提案するんですけど、スタッフがなかなか首を縦に振ってくれなくて(笑)。

オークラ 僕はシソンヌとラブレターズかな。まだシソンヌがハマったバラエティを見たことがないから、ここで活躍してもらえれば(笑)。

―この先、『ゴッドタン』はどうなっていきますか?

佐久間 あまり先のことは考えていないんですよね。一回一回が本当に大変だから。毎回違う企画を立てるお笑いって、手間ばかりかかって、実は手を出しちゃいけないジャンルなんですよ。

オークラ 今っぽく言えば、コスパが悪い(笑)。でも、続けられるだけ続けたい。この番組が終わったら老けそうでイヤなんですよ。

佐久間 全力でやれるだけやって、『ゴッドタン』が終わったら、ほかの部署に異動しようかな(笑)。

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(取材・文/高篠友一 写真/井上太郎)

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