市川紗椰がハマる『リック・アンド・モーティ』「ジャンルを問わず、今一番クリエーティブなSF作品」

アメリカの大人向けアニメ『リック・アンド・モーティ』。SF好きはもちろん、映画好きにも特にオススメ

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、彼女がハマっているSFアニメについて語る。

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ジャンルを問わず、今一番クリエーティブなSF作品は間違いなく『リック・アンド・モーティ』だろう。

このアニメは、宇宙一の天才科学者で酔っぱらいのリックと、孫のモーティが宇宙を冒険する大人向けSFコメディです。ダークユーモアとハチャメチャな展開の連続で、ざっくり言うと、俗悪な『バック・トゥ・ザ・フューチャー』×トリップ中の『ドラえもん』×下品な『ドクター・フー』。

アメリカでは大、大、大人気で、世界最大のオンラインデータベース・IMDbのユーザーレビューでは歴代テレビ番組第8位、テレビアニメ部門第1位にランクイン。私は日本に帰国時にハマってからDVDを集めていましたが、今はNetflixで配信を追っています。

『リック・アンド・モーティ』の一番の魅力は、その発想力と想像力。訪れる惑星や次元の設定やキャラクターがあまりにもとっぴで、「どんな人生を送ってきたらこんなことを思いつくの!?」と毎回あぜんとしてます。

例えば、椅子が人間で人間が椅子の世界や、ギトギトの油まみれのおばあちゃんたちであふれる惑星。次元を越えて飛び回ることも多く、異なる世界線のリックたちが、それぞれのモーティを交換する回や、人間がトウモロコシから進化した世界線などがあります。

ホームレスの男性の体内に存在する『ジュラシック・パーク』的なテーマパークや、『パージ』のように一夜だけ殺し合いが許される惑星など、映画のパロディも多々あります(メジャーから超マニアックにわたる振り幅がまたすごい)。

ポップカルチャー以外にも、歴史や文学からの引用も多く、全体的にはとんでもなく下品なのに、教養があるほど楽しめるというパラドックスのような側面もあります。

私のお気に入りは、ヒトラーとリンカーンの半分マン「エイブラドルフ・リンクラー」という、自分の存在に葛藤しながら踊り狂うキャラ。くだらなさのなかの悲哀がよかったです。

基本的には一話完結で、どこから見始めても楽しめます。ただ、ひとつのエピソードで起こったことがそれ以降の回に影響していて、破壊された街が次の週に復活しがちなこの手のアニメでは新鮮です。支離滅裂な設定のなかで、登場人物が自分たちの決断や行動に責任を持たなきゃいけない物語設定が妙にリアル。時にハッとさせられます。

ダークでシリアスな場面も少なくありません。両親の離婚で非行に走る姉、リックのアルコール依存症や自殺未遂。クレイジーな面のすぐ下に現代アメリカの社会問題が潜んでいて、下ネタやグロテスクな描写に惑わされていると、うっかり考えさせられたり、感動したりします。

ジョークの質も高く、クレバーな引用もしばしば隠されているのですが、日本語の字幕では言葉遊びがカットされたり、畳みかけるようなジョークが省かれることが多いのが残念です。便宜上しょうがないのかもしれませんが、魅力が半減していてファンとしては悔しいです。

『リック・アンド・モーティ』は現在、第4シーズンまで配信中です。江戸時代の日本を舞台にしたショートクリップも公開されているので、併せていかがでしょうか。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。常にゲップをしながら、口元から液体を垂らしているリックに慣れてしまった自分が怖い。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

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