『スーパー戦隊』『ウルトラマン』『仮面ライダー』...日米の特撮を制覇した坂本浩一監督が語る、アクションへのこだわりとヒロインへのフェチズム

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『スーパー戦隊』『ウルトラマン』『仮面ライダー』......。日本が誇る3大特撮ヒーロー、そのすべてでメガホンを取るのが、本場アメリカでアクションを学んだ"逆輸入監督"坂本浩一(さかもと・こういち)氏だ。

ジャッキー・チェンに憧れ、16歳からスタントマンとして活動。高校卒業とともに本格的に映画を勉強するため単身渡米し、現地で社会現象となったスーパー戦隊のアメリカ版ローカライズ作品『パワーレンジャー』に1995年から携わるようになると、アクション監督、監督、製作総指揮、プロデューサーを歴任。15年もの間、中心人物としてコンテンツを支えた。

2009年からは活動拠点を日本に移し、映画の本場アメリカを知る"逆輸入"アクション監督として今も数多くの特撮、アクション映画を撮り続けている坂本監督。そんな特撮界のレジェンドにとってのスーパー戦隊とはいったいどんな存在なのか?

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■大きく華やかな日本のアクション

――今や特撮ファンの間で知らない人はいないほどの存在ですが、監督のスーパー戦隊原体験をお聞かせください。

坂本 スーパー戦隊シリーズ初代の『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年放映開始)をタイムリーで見てますし、ジャッキー・チェンよりも先にアクションに目覚めさせてくれたのはスーパー戦隊ですね。

『科学戦隊ダイナマン』(83年放映開始)などのアクションや見え切り(決めポーズ)がカッコよくて、一般的に男のコがヒーローを卒業する年齢になっても僕はスーパー戦隊を見続けてました。

――スーパー戦隊とジャッキーに魅了された坂本少年は、高校生になってアクションに強い芸能事務所「倉田アクションクラブ」に所属します。

坂本 もう映画の道を進むことを心に決めてましたから。当時は休日に遊園地に行って戦隊作品のヒーローショーでヒーローや戦闘員となってパフォーマンスをする、今でいう"スーツアクター"をやってました。この経験が後々ものすごく役に立つんですよ。

――と言いますと?

坂本 僕が渡米したときは、アメリカは格闘技映画ブーム。その流れでスタントマンとしていろんな作品に呼ばれるようになっていたんですが、その頃、日本の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』が輸入されて『パワーレンジャー』というリメイクタイトルが向こうで大ヒットしてたんです。

――監督はその『パワーレンジャー』の初代シリーズ(『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』)のシーズン2から関わっていますね。

坂本 シーズン2の制作段階で、プロデューサーが「アメリカのアクションとは違う、日本人的なアクションをできる人を探してる」という噂を聞いたので、オーディションで僕の動きを披露したら「その動きが欲しかったんだ!」と言ってもらえて。日本でヒーローショーをやっていたことを話したら「ぜひ一緒に仕事をしてくれ」と。

――それで高校時代のヒーローショーの経験が役に立ったわけですね。ちなみに日本人的なアクションって?

坂本 当時、アメリカはジャン=クロード・ヴァン・ダムの映画がはやっていた影響で、アクション映画も格闘技出身の人を呼んできてアクションをさせるから、どうしても動きが"実用的"。一方、歌舞伎文化があるためか、日本では大きく構えたり見えを切ったり、動きを華やかに強そうに見せるスーツアクター独自の文化があるんです。

まぁ、アメリカ人からすると「なんでポーズを取ってる間に敵は攻撃しないんだ?」と思うらしいんですが(笑)、固定観念のない子供はそういう演出にも疑問を抱かずに単純にカッコいいと思ってもらえるわけです。

――なるほど。それから15年間にわたり『パワーレンジャー』の制作に深く関わり、一時シリーズが終了した09年から拠点を日本に移すと、短期間で日本の3大特撮ヒーローのすべてで監督を務められました。監督にとって、スーパー戦隊とウルトラマン、仮面ライダーシリーズのアクション演出はどう違うのでしょうか?

坂本 仮面ライダーやウルトラマンは単体ヒーローという点でスーパー戦隊とは大きく違います。だから戦闘シーンもひとりのヒーローをどう立たせるかが前提になる。

特にウルトラマンの場合は人間が変身したものというより、神に近い存在のヒーローがどう動くのか。また、等身大ヒーローと同じリズムやテンポを使いながら、どうやって巨大感を損なわせないかが演出のポイントですね。

――複数ヒーローのスーパー戦隊は?

坂本 変身シーンはもちろん、それぞれの特徴を生かしたり、お互いの足りない部分を補いつつチームワークや連携技で敵を倒すところが醍醐味(だいごみ)。人数が多い分考えることもたくさんありますが、アクションのバリエーションが出しやすいというメリットがあるのがスーパー戦隊なんです。

■女優への片思いは実ったことなし(笑)

「以前は俳優にアクションをやらせるというと、(芸能)事務所が怖がったけど、今は積極的。僕らががんばってアクションを盛り上げたおかげかな(笑)」(坂本監督)

――スーパー戦隊の花形といえばヒロイン。キャスティングで重視するところは?

坂本 ヒーロー作品など強い女性像が求められる場合、いざ戦うときに、敵をやっつけられるという説得力が女優さんの顔にないとダメ。だから僕は目力を一番見ます。

クリッとかわいらしい目や運動神経が悪くても、目の芝居に迫力があればあとは僕のカット割りなどでカバーできますから。それでいてチャーミングな部分も併せ持っているのが、個人的には理想のヒロイン像だと思ってます。

――今まで最もハマっていた女優さんは?

坂本 それは木下あゆ美ちゃんですね! 目はキッと強い印象を持ちながら、どこか柔らかい。彼女がヒロインを務めていた『特捜戦隊デカレンジャー』(2004年)のアメリカ版を監督していたんですが、映像を見てもうひと目ぼれ。

僕が日本に戻ってきて『仮面ライダーW』(09年)のオファーをもらったときも、プロデューサーから「何か条件はありますか?」と聞かれて「木下さんを出してください!」と言ったくらい(笑)。

――強権発動してますね。

坂本 木下さんに限らず、僕は一緒にお仕事をする女優さんに毎回片思いをするようにしているんです、変な意味ではなくて(笑)。その女優さんをよく知るという意味でも、心から好きにならないとなかなか魅力的に撮るのが難しいんです。日本に来て10年間、この恋心が実ったことはありませんが(苦笑)。

――両思いになったらいろいろ問題ですけどね(笑)。

坂本 だから長くやれてるんでしょう(笑)。

――その片思いのおかげか、監督は女性のアクションシーンをセクシーに撮ることでも有名です。

坂本 そうなんですかね(笑)。ただ日本はかわいい、ロリータチックな女性がウケるけど、アメリカでは肉感的、セクシーなヒロインが男性も女性も魅了します。僕も映画人としてはアメリカ育ちなので、その傾向があるのかも。

――具体的にどのように演出するのでしょうか?

坂本 いくらアクションがスゴくても、女優さん自身の魅力が伝わらないと本末転倒なので、アクションの合間にハイスピードカメラで女優さんの顔の寄りを挟む手法はよくやります。

あと僕は脚フェチ......じゃなくて、脚に魅力を感じるので、柔軟性があったり蹴りが得意なコは脚が印象的になるように撮ります。もちろん作品によりけりですが、ちゃんと女優さんの魅力が増すように計算して撮っているつもりです。

――そんな意図があるのにファンの間では"特撮界のエロ監督"なんて異名もあったりします。これは不本意......?

坂本 それは皆さん誤解してますね(笑)。でも親しみを込めて呼んでくれるならエロ監督でも構いません(笑)。

――現在、『魔進戦隊キラメイジャー』の監督をなさっていますが、『週刊プレイボーイ31・32合併号』の表紙も飾ったヒロインの新條由芽ちゃんの印象は?

坂本 すごく明るくてかわいらしい! もともとそんなにオープンなコではないらしいんですけど、明るい役柄に引っ張られて今じゃすっかり現場でのムードメーカーです。

――例の片思いは進行中?

坂本 もちろん! でもどうせ実らないんですが(笑)。

●坂本浩一(さかもと・こういち) 
1970年生まれ、東京都出身。89年に渡米し、米国版スーパー戦隊『パワーレンジャー』の制作に携わる。スタントチーム、アルファスタントの創立メンバー。現在放映中の『魔進戦隊キラメイジャー』や『ウルトラマンZ』(テレビ東京系)でも監督を務める

取材・文/武松佑季 撮影/下城英悟

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