考えすぎる人気声優・佐倉綾音は可愛げがない!?「どうやら、声のお芝居だけでは生き残っていけないぞって…」

考えすぎる人気声優・佐倉綾音は可愛げがない!?「どうやら、声のお芝居だけでは生き残っていけないぞって…」

雑誌の表紙やグラビアにも登場する注目の若手声優・佐倉綾音さん

今年で誕生から100周年を迎えた日本のアニメ――。日本が世界に誇る一大コンテンツのメモリアルイヤーに、週プレNEWSでは旬のアニメ業界人たちへのインタビューを通して、その未来を探るシリーズ『101年目への扉』をお届けする。

第5回目は、声優の佐倉綾音さん。現在放送中の『十二大戦』や『ボールルームへようこそ』、『宝石の国』など多くの人気作・話題作に出演しているだけでなく雑誌の表紙やグラビアにも登場する注目の若手声優だ。

前編ではデビュー時のきっかけから転機までの背景を赤裸々に明かしてもらったが、今回は多くの熱心なリスナーを抱えるラジオ番組に対する思い、透明感あふれるルックスからの意外なエピソードまで、さらに深くお話を伺った!

■デビュー直後は声優業界の変化に戸惑った

―自身が出演するラジオ番組『セブン−イレブン presents 佐倉としたい大西』が今年、第3回「アニラジアワード」の最優秀ラジオ大賞と企画ラジオ賞(新人の部)をW受賞するなど、ラジオの人気が高い声優としても知られています。本業である声のお芝居以外で自身が評価されることについてはどう感じていますか?

佐倉 うーん、この業界はどうやら、声のお芝居だけでは生き残っていけないらしいぞって気が付いたのが16歳か17歳の時で。

―デビューして1年目ですよね? めちゃくちゃ大人びているじゃないですか!

佐倉 この業界に入った時に私が元々持っていた声優さんのイメージは、大山のぶ代さんみたいな方だったんです。基本はスタジオでお仕事をされていて、たまにTVの特集で顔が出るくらい。

でも、声優になって1年目くらいの時には業界全体で声優がマイク前以外の仕事もするっていう今の方向に舵(かじ)を切り始めていて。私は養成所にいた頃には「綾音ちゃんは大器晩成型だから、大学を卒業してから本格的に声優業を始めるくらいでちょうどいい」と言われていたんです。だから、こんなに早く表舞台に立つことになるとは思っていませんでした。

あまりにイメージと現実のギャップが大きかったので、最初は相当に戸惑いましたし「こういう仕事はやりたくない」ってマネージャーさんに対して突っぱねたりもしていて…。

―それはグラビアみたいな顔出しのお仕事のことですか?

佐倉 元々、カメラや舞台が苦手だったので声優になったところがありましたからね。今は声のお仕事のためにも、これもお仕事としてやり切ろうと思っていますが、当時はなかなか納得がいかなくて、マネージャーさんからも怒られたり。でも、声優が声優の仕事だけしていては生き残れないんだというのも理解していて。そんな時に起爆剤として目をつけたのがラジオだったんです。

―それは顔出しがないというところに魅力を感じた?

佐倉 というより、両親の影響でラジオが大好きな子どもだったんです。家でずっとTBSラジオや文化放送がかかっているような環境で。声を駆使してリスナーの方にお届けするというのも、声優の仕事と親和性が高いとなんとなくわかっていました。

―それでラジオなら自分はいけそうだ、と。

佐倉 ただ、自分は表現欲求が薄いから役者を諦めた人間なので(インタビュー前編参照)、個性だけでは何も届けられない。それで自分が好きだった番組を参考にしながら、見よう見まねで“ラジオの佐倉綾音”を作っていったんです。

喋るトーンやテンポを聴きやすいようにしたり、声だけでどんな人物か伝わりやすいようにキャラクターを意識したり。ただ、嘘はつきたくない主義なので、喋るエピソードは実際に体験したものです。























■女性であることを意識させたくない

―でも、それはプロとしては当たり前の姿勢ではありますよね。

佐倉 そうなんですけど、たまに出る素の自分が変だと言われることがあって。自分は面白い人間じゃないと思ったから、いろんな工夫をしているのに、素の部分のエピソードが変だと言われると衝撃を受けます。私は未だに変だと思っていないんですけどね。

―ちなみに、ラジオをやる上で参考にした番組はなんだったんですか?

佐倉 参考にしたのはJ−WAVEの『GROOVE LINE』です。

―結構、意外です。どういった部分を?

佐倉 秀島史香さんがピストン西沢さんの下ネタを上手に受け流していく感じがすごく好きで、ああいう女性になりたいと思っていました。他に声優さんの番組だと浅野真澄さんが鷲崎健さんとやられていた文化放送の『A&G 超RADIO SHOW〜アニスパ!〜』も同じ雰囲気があって好きでした。

私は聴いている人にも仕事でご一緒する方にも、私が女性であることを意識させたくないという思いが強いんです。小さい頃は男のコになりたくて、その意識がどこかに残っているのかもしれないのですが、わざとガサツな言葉遣いをしたり。

―どうして男のコになりたかったんですか?

佐倉 なんでだろう? たぶん、男のコのほうが楽しそうに見えたんです。特に仕事をするようになってからは、仕事をする上では男性か女性かなんて関係がないと思っているフシがあって、だからこそ女性として意識させたくないって思いを持つようになったのかもしれません。

■考えることが減ると不安になる?

―もしかして、かなり仕事が好きなんじゃ…?

佐倉 めちゃくちゃ好きです。

―それで学校は苦手だったのでは?

佐倉 めちゃくちゃ苦手でした。

―なんでそんなことを聞いたかというと、男性になりたい、女性であることを意識させたくないっていうのは、ひとりの大人として見てほしいという思いがあるんじゃないかと。

佐倉 それはあると思います。早く大人になって、自立して生きていけるようになりたかったですし。とにかくみんなで決まった時間に決まった行動をするっていうのが苦手なんですよ。だから今の不定期なスケジュールで動くお仕事は大好きです。これが普通の会社員みたいに定時に縛られていると、考えることが減るから不安になると思うんです。























―考えることが減る!?

佐倉 そうです。この業界は自分で考えなきゃいけないことがいっぱいあるから不安がなくて。

―普通は逆ですよね。やるべきことが決まっているほうが楽で、自分でなんでも決めなきゃいけないのは面倒くさいし大変だと思われている。

佐倉 …どういうことですか?

―僕らもこの仕事をしていると、必ず「スケジュールが不安定で大変だね」って言われますから。

佐倉 そうなんですね。この仕事をしていると確かにスケジュールは不安定ですけど、「明日は何しよう」ってならないから私には楽なんですよね。

―それは仕事がない日でも?

佐倉 私はスケジュールをカツカツに入れてしまう癖があって、次の日に何をするか細かくびっしり決めてしまうんですよ。料理をするだけでも、いつ何を買いに行くか全部メモに書き出してしまう。メモ魔なんです。

―実際にスケジュール通りに行動するんですか?

佐倉 基本的にはなりますね。スケジュール通りに1日を終えた時の多幸感がすごいんですよ。

―事前に考えて考えて、思い描いた通りになったら幸せを感じると。

佐倉 それと同じことが料理にもあって、私は味音痴なんですけど、料理が好きで。

―誕生日に炊飯器をプレゼントされるくらいですからね。

佐倉 よくご存知ですね(笑)。それで料理をする時も、ものすごく考えて、それこそ深層心理を探るくらいまで考えて、自分が本当に欲しているものをうまく料理できた時、ものすごく多幸感があります。

―それは心だけではなく、カラダが何を欲しているか探るということですか?

佐倉 そうです。

―直感的に「あれが食べたい!」とかはない?

佐倉 直感を信じていないんですよ。最近は疑いすぎちゃって、直感そのものが出てこなくなりました(苦笑)。































■マイクの前だけは夢中になれる

―そうやってずっと考えていると疲れないですか?

佐倉 小さい頃からそういう性格だったみたいで、人の顔色もすごく見ている子どもだったらしいんですよ。でも、「このコは他人の顔色を気にして行動している」とは思われたくないじゃないですか。それで(顔色を)見ていないように振る舞う癖も身に付いて、自由奔放な性格に思われることもあります。それは私としては大成功な見られ方でもあるんですけど。

―そうした二重三重に考えずにいられない性格は、お仕事にプラスに働いている?

佐倉 役者向きではないと思っています。私がイメージする役者さんって、もっと自分も他人も振り回すというか。「このコは自分勝手だけど、どこか憎めないよね」っていう方だと思うんです。私もそういうキャラクターに憧れた時期もありました。

「佐倉綾音」という人格をもっとはっきりさせたほうがいいんじゃないかと思ったんですけど、結局は自分を嘘で塗り固めてしまうのがイヤで諦めたんです。

―でも、その考えすぎてしまう部分を出していったほうが人間味もあって絶対にいいですよ!

佐倉 なんか可愛げがないんですよね。ずっとぐるぐる考えてしまって。作品とかキャラクターも客観的に見てしまうことが多くて、「役が抜けない」というタイプでもないですし。

―そういう性格だから不器用なのかと思いきや、若くして幅広くお仕事をされている。内にこもるタイプかと思いきやラジオではすごく喋る…。

佐倉 そうそう! もう自分でもよくわからないです(笑)。

―そういう捉えきれないところが「佐倉綾音」の最大の魅力なのかもしれませんね。

佐倉 四六時中、ずっと何かを考えているんですけど、唯一、マイクの前だけでは目の前のことに没頭できるんです。それでお仕事を続けられているし、自分はこれでいいかなと最近は思っています。

(取材・文/小山田裕哉 撮影/河西 遼 ヘアメイク/福田まい[addmix BG])















■佐倉綾音(さくら・あやね)







1994年生まれ。東京都出身。2010年に声優デビュー。主な出演作に『ご注文はうさぎですか?』『艦隊これくしょん −艦これ−』『僕のヒーローアカデミア』など。現在『ボールルームへようこそ』(花岡雫)、『十二大戦』(庭取)、『宝石の国』(ボルツ)などに出演中。雑誌のグラビアやラジオ番組「セブン−イレブン presents 佐倉としたい大西」の人気も高く、声優業に留まらず多岐にわたって活躍

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