ゴッホの死を題材に前代未聞のアートサスペンス映画が誕生! 日本人で唯一、制作に参加した女性画家が覚えた共感と感動

ゴッホの死を題材に前代未聞のアートサスペンス映画が誕生! 日本人で唯一、制作に参加した女性画家が覚えた共感と感動

画家として覚悟を決めたと語る古賀陽子さん

巨匠フィンセント・ファン・ゴッホの死の真相を描いた、話題のアートサスペンス映画『ゴッホ〜最期の手紙〜』が公開される。

なんと、事前に役者が演じた実写映像を撮影、それを元に世界中から集められた125名の画家によって、“ゴッホの画風”で描かれた6万2450枚もの油絵をアニメーションにしたという前代未聞の贅沢な作品だ。

そのこだわりから生み出された映像の美しさはさすがの説得力で、冒頭から筆跡や絵の具の盛り上がりの質感にも魅せられるのはもちろん、ゴッホは本当に自殺だったのか?を追うドラマも極上のミステリーとして引き込まれる!

そんな“ゴッホ愛”溢れる一大プロジェクトに日本人でただひとり、参加したのが若手画家・古賀陽子さんだ。ポーランドでの制作はどのように進められたのか? 世界中の画家たちとの交流を通して見出したものとは? そして巨匠の作品のタッチをなぞることで画家として何を感じたのか? 前編記事に続き、制作の舞台裏を伺った。

* * *

―ゴッホのタッチで描き続けたことで、何か共感するものはありましたか? 例えば、彼は“狂気の画家”とも称されますが、ご自分の中にもそれを感じたり…。

古賀 狂気ですか…。あったこともあるかもしれないですけど、今は落ち着いています(笑)。でも、ゴッホの復元プロジェクトにも参加したのですが、監修の教授からダメ出しされた時、私は冷静に指示を聞いて「はい」って作業に戻るんですけど、これがゴッホだったらキャンバスを切り裂くぐらい自分の至らなさに怒ってるんじゃないか!?とか(笑)。私に足りないのはコレかなって思いました。

―まだ自分には狂気が足りないと(笑)。他の画家の中には熱い方もいました?

古賀 一緒に働いていたスペイン人の方は「給料がコレでは割に合わない!」って怒って、途中で帰国されましたけど(笑)。

―あははは、制作の舞台裏もドキュメンタリーとして面白そうですね(笑)。では、ゴッホにとって絵とはなんだったのか?を感じたりは…。

古賀 ありますね。自分の中の叫びみたいなものや情熱、感情など、全部を絵にぶつけてたのかなと。映画を観てもらってもわかると思いますけど、ピュアだからこそ生きづらい感じで、今だったら“コミュ障”って言われそうなぐらい全然うまく生きられていないですよね。そういうものを全部絵にぶつけていて、だからこそ訴えるものがあるのかなと。

―ゴッホの人生、生き方や死に様にも思いを馳せたと。

古賀 以前からゴッホの伝記は何回読んでも最後は泣けるし、その人生に勝手に共感して「ああ、ゴッホもこうだったんだ」という感動を覚えましたし。

―そんな偉大なゴッホの絵をなぞって描くのは緊張続きだったりしませんでした? 

古賀 それは本当におこがましいというか、畏(おそ)れ多いというか…「私でいいのかな」って気持ちでいっぱいでした。でもせっかくいただいた話ですし、頑張ってやり遂げた時には成長が待っているのかなと思って、やっぱり挑戦するべきものかなと。























―自分が力を注いだものが結果としてこういう形になって残るのは、これからの自分の人生でも大切なものになりそうですね。

古賀 すごい財産ですね。すごくいい経験だし、楽しんでやれたんですけど、このプロジェクトが終わったら、結局また自分の作風の作品を観てもらうことが大事になっていくので、そこは不安でいっぱいです(笑)。

―ご自身は、油絵だけでなく鉛筆画からストリートペインティングまで幅広く活動されているということで。心がけていることは?

古賀 自分が美しいと思うものを表現したいと思っています。芸術といえば、なんでもありという世の中ですけど、私の中にはグロテスクな表現はなくて、方向性はどうあれ美しいと思えるということは絶対ですね。そして、自分に内在する精神世界を表現していきたいです。

―ずっと画家を目指して? これからも…。

古賀 物心ついた時から絵描きにはなりたかったんですけど、常にモチベーションが高かったかというとそうでもなく、わりとブレブレで(笑)。20歳の時は「20年近く持ってきた夢を今さら捨てられない」「でもどうやったら画家なんかで生きていけるのか…」って悩んだり、30歳手前でも同じように悩んで。なので、本当に最近ですね、画家として覚悟を決めたのは。

生計を立てるためにはいろんな手段があると思うんですけど、それで自分が満足できるかというとまた別の話で。最終的には勝手に自分が描きたくて描いたものが売れるのが理想ですが、ゴッホじゃないですけど生きている間にそうなれる保証もないですし(笑)。

―今でこそ世界中で愛されているゴッホですが、生きている間に売れた絵はたったの1枚という…。

古賀 でも、それも羨(うらや)ましいところもあります。ピカソやダリみたいに生きている間に売れるのが理想だけど、でもゴッホは死後もこんなにたくさんの人から愛されていて。自分がいなくなった後も、これだけ作品を世界中の人に観てもらえて。自分の精神とかどれだけ苦しんでいたとか、生きていた意味みたいなものが絵を通して残ってるってすごいことだなと思います。

しかも、こんな風に映画化までされて…。本人は知る由もないかもしれないですけど、そういう人生もすごく羨ましいというか、なれるものならなってみたいじゃないですか。私も画家としては不安しかないですけど(笑)、考えても答えは出ないし、日々模索というか、ただやっていくだけかなと思います。

(取材・文/明知真理子 撮影/利根川幸秀)

●古賀陽子(こが・ようこ)







1986年、兵庫県生まれ 2005年にイギリスのカレッジに留学し、ファインアート、デザイン、版画など美術全般の基礎を学ぶ。その後、イタリアのフィレンツェ国立美術大学で学びつつストリートペインティング活動も行なう。詳細は公式HPにて。

■『ゴッホ〜最期の手紙〜』







11月3日(金)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国順次ロードショー! 公式HPよりご確認ください。(C)Loving Vincent Sp.zo.o/Loving Vincent ltd.

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