角田陽一郎×西川美和(映画監督)「見せる側と映される側の『おいしさ』は全然違う」

『すばらしき世界』が2月11日に公開される映画監督の西川美和さん

『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies〜その映画が人生を動かす〜』。

今回は最新作『すばらしき世界』が2月11日に公開される映画監督の西川美和さんにお話を伺いました!

* * *

――最初に見た映画はなんですか?

西川 幼稚園の頃、兄に連れられて劇場で見た『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(1980年)。この作品って、主役格だったハリソン・フォードが固められて終わりますよね。けっこうびっくりしたというか、結末が結末にあらざるものだなということを子供心に感じて、動揺した記憶があります。

――なるほど。一方で、エピソード5はシリーズのなかでも特に名作といわれていますよね。

西川 もちろん名作ですよね。でも、そのときはそうは思えなかったんです。

――西川監督は小説家としても活躍されていますが、表現の仕事を志したきっかけはなんですか?

西川 30年くらい前、私がまだ高校生だった頃に『実録犯罪史シリーズ』という、実際に起きた事件を題材にしたドラマシリーズがあったんです。そのなかに『恐怖の二十四時間 連続殺人鬼 西口彰の最期』(1991年)という作品があって、これは5人の人間を殺した後にさまざまな職業に就いて、全国を逃げ回っていた男を題材にしているんです。

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――西川監督の最新作『すばらしき世界』でも主演している役所広司さんが演じた作品ですよね。

西川 5人を殺した凶悪犯である主人公は当然、ほめられた人間ではないのですが、ひとつの人格の中に狂気もあれば弱さもあったり、案外、家族に対して後悔の念があったり、人間らしさが詰まった作品だったんですね。

それで、自分も将来そういう人間の複雑怪奇なものを描いていく仕事に就きたいなって思ったんです。そのときはまだ書くのか撮るのかわからなかったですけど。

――西川監督の作品は、フィクションとドキュメンタリーの境界ギリギリを突いている印象ですが、そのあたりってどうお考えですか?

西川 境界線ってとっても難しいと思うんですけど、ただ、フィクションはウソが前提で、ありもしないことを書くもの。ある意味、気楽さがあります。例えば、役所さんがどれだけ凶悪に見えたとしても、演者とこちらの合意の上のこと。

でも、ドキュメンタリーは被写体に対して、その人の人生をどこかで思いやったり、逆に思いやることを意図的にやめたりする決意が求められる。作り手の葛藤の種類が違いますね。

――僕がバラエティをやっているのも同じ理由なんです。報道やドキュメンタリーなら自分の心が耐えられなくなるけど、「ご長寿早押しクイズ」ならいいやって思える。ある意味、「逃げた」という感覚すらあって。

西川 そうなんですよね。この作品の中でも描いたんですけど、見せる側にとってのおいしいことと、映される側にとってのおいしいことって全然違いますもんね。

――『情熱大陸』(TBS系)のスタッフとか、出演者が「出てけ!」って怒ったりすると、裏で「おいしい」って言ってますもん(笑)。

西川 もちろん見る側への配慮もあるんです。キツい物語や生身の人をそのまま映すと、より見たくなくなったり、堪えたりしますから。「でも、ウソだからね」って最初に言っておいてあげれば、シビアさを受け入れやすいところもあると思うんです。

★後編⇒『すばらしき世界』監督の西川美和「役所(広司)さんという、とびきりチャーミングな人の力を借りて」

●西川美和(にしかわ・みわ)
1974年生まれ、広島県出身。主な監督作品に『ゆれる』『ディア・ドクター』『夢売るふたり』『永い言い訳』など。また、小説家としても活動しており、多くの文学賞にノミネートされている

■『すばらしき世界』2月11日(木・祝)より全国公開予定
配給:ワーナー・ブラザース映画
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構成/テクモトテク 撮影/松屋まを

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