『すばらしき世界』監督の西川美和「役所(広司)さんという、とびきりチャーミングな人の力を借りて」

『すばらしき世界』で監督を務める西川美和さん(左)に角田陽一郎氏が聞く!

『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies〜その映画が人生を動かす〜』。

前回に引き続き、公開中の『すばらしき世界』で監督を務める西川美和さんにお話を伺いました。

* * *

――映画の世界に入るきっかけとなった作品はなんですか?

西川 川島雄三監督の『しとやかな獣』(1962年)という作品がありまして。20歳を過ぎて、大学生の頃に見た映画なんですけど、設定はほぼ団地のワンセットなんですよ。それで1時間半を走りきる。

『スター・ウォーズ』を皮切りに、大スペクタクルのスピルバーグ作品を見て育ったので、「小説は小さい世界でもいいけど、映画はある程度、潤沢な予算をかけて作っていってこそ」という考えをどこかで持ってました。

でも、『しとやかな獣』は登場人物も少ないし、団地の中での話なのに息をつかせないんです。深い人間観察、役者の芝居、面白いシナリオがあれば映画になると知ることができました。しかも、当時でさえ公開から30年ほどたっていたのに、少しも古くなかった。映画の仕事をしてみようかなと思ったきっかけですね。

――まさにムービングムービーですね。では、最近面白かった作品は?

西川 いい映画はたくさん作られていると思います。一見、アート系の映画であっても、ちゃんと伝わるように作られている作品が大きな賞を取っていたり。そういう意味では、Netflixの『ROMA/ローマ』(2018年)。メジャーな映画しか見ない人は敬遠しそうなパッケージかもしれないですけど。

――白黒ですし、メキシコの中流家庭と家政婦の話ですしね。

西川 スターも出てないし、ドンパチがあるわけでもない。なんていうことのない、大きなことは起きない静かなドラマなのに、でも、長い時間、画面を見つめて耳を澄ましていると、最後の最後にすべての人が共通の山に登れる感動がある。

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――それ、監督の作品にも同じことを感じます。意識されてますよね?

西川 そうですね。自分も小中学生の頃から映画が好きでしたし、それくらいの年齢でも見られる作品にしようと。ちょっと大人っぽいかもしれないけど、でも大人っぽいものを見て、みんな大人になりますから。

――新作『すばらしき世界』は、元殺人犯の男・三上の出所後をテレビマンが密着するというストーリーです。どんな人に見てほしいですか?

西川 こういうシチュエーションに興味のない人に見てほしいですね。私自身、犯罪という事象に惹(ひ)かれることはありましたが、この映画の原作(佐木隆三『身分帳』)に出会うまでは、犯罪者の出所後なんて考えたことがなかった。

でも、無期懲役でずっと服役しない限りは出所して、外で生活するわけだし、場合によっては隣に住むかもしれないじゃないですか。

今回、この作品を作りながら、「彼らのような人をどう受け入れるか考えることも、幸福に過ごしている人間の責務かな」と思ったんですよ。傷つけられたり、やむにやまれず人を殺めてしまったりする人には余裕がないけど、私たちにはそれがあるから......という話をすると社会的な作品に思えてしまうんですけど(笑)。

――(笑)。

西川 でも、フィクションの力で説教くさく見せないように心がけました。役所さんという、とびきりチャーミングな人の力を借りて、興味がなかった人にも彼らのような人たちの世界を垣間見てもらいたいです。

●西川美和(にしかわ・みわ)
1974年生まれ、広島県出身。主な監督作品に『ゆれる』『ディア・ドクター』『夢売るふたり』『永い言い訳』など。また、小説家としても活動しており、多くの文学賞にノミネートされている

■『すばらしき世界』全国公開中!
配給:ワーナー・ブラザース映画
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構成/テクモトテク 撮影/松屋まを

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