「残波」で映画初主演の美勇士「親父が死をもってプレゼントしてくれた」

「残波」で映画初主演の美勇士「親父が死をもってプレゼントしてくれた」

[写真]映画本格初主演の美勇士「ミュージシャンも役者も表現は同じ」

出馬康成監督と美勇士に聞く

 出馬康成監督の映画「残波」が大阪のミニシアター「シネ・ヌーヴォ」(大阪市西区)で間もなく公開される。沖縄を舞台に原発問題を絡め、現代日本が抱える闇を描き、大胆でスキャンダラスなファンタジー映画だ。10日の公開初日には監督の舞台挨拶もあるが、それに先立ち、監督と主演の美勇士(みゆじ)に話を聞いた。

やめようという思いがよぎることもあった

 出馬監督は大阪出身。1989年に『占いワルツ』で劇場デビュー。本作は2002年『マブイの旅』、2011年『喜劇の女王 仲田幸子沖縄芝居に生きる』に続く沖縄三作目となっている。

 当初ダークファンタジーとして作るつもりだったが、2011年東日本大震災による福島原発事故が起こり「今となってはリアルフィクションのようになってしまった。被災された方たちを思い、制作をやめようという思いがよぎることもあったが、沖縄があらたに抱える問題を考え、また沖縄の豊かな文化と自然に思いをはせると、完成させずにはおれなかった」と語っている。

美勇士が映画本格初主演

 また、同映画のもうひとつの話題は日本ロック界の伝説・桑名正博の息子である美勇士が映画本格初主演であることだ。脇をかためる俳優らもホンモノがそろっている。

 恋の相手に世界的エンターテインメント集団シルク・ド・ソレイユ公式アーティストYUSURA、母役には琉球舞踏の大家・玉城節子、ジーファ(かんざし)職人の八重山民謡の第一人者・大工哲弘など沖縄芸能の伝承者といった人たちが渋い演技を見せている。

 同時にまた沖縄の辻(花街)育ちのアウトロー役の美勇士の演技が光り、役者としての魅力を存分に発揮している。

美勇士「親父が死をもってプレゼントしてくれた」

 ──美勇士さんは映画本格初主演ということですが…。

 美勇士:親父が亡くなった時、記者会見で気丈にふるまってたんですけど、その会見を見て下さった監督から、この役がいいんじゃないかって、声をかけて頂いた。だから親父が死をもってプレゼントしてくれたと思っています。台本を見ずに出演を決めました。インディーズムービーですが、沖縄に1か月も入ってロケをして、しかも真夏で、いろんな方がいてその協力の下でやり切れたと思っています。問題作ではあるでしょう。監督さんの世の中にツメ跡を残そうという意気込みが伝わって来た。ヤクザと原発がテーマですが、ファンタジーとリアリティーを融合させたもので、ファンタジーが加わっているので、決して重たくはないと思います。

 ──俳優とミュージシャンとでは表現方法は違いますか?

 美勇士:ミュージシャンはみんな感性で戦っている。表現者としてはミュージシャンも俳優も同じで、歌手はだいたい役者もできる。親父もそうでした。僕もこれまでテレビドラマに何本も出てますし、津川雅彦さんにもお世話になり、付き人もやらせて頂いた。その時に、たった一言の台詞でも、100回読めって教えられました。そんな先輩方の背中を見て育ったので、うまく役者人生のスタートが切れたと思っています。主演は初めてです。いろんな思いが交錯し、演じきった映画です。

1か月で15キロ減量して撮影に臨んだ

 美勇士について監督は「サラブレッドで育っているし、正義感もある。この役は彼以外に考えられないと思いました。

 この映画は3年前に撮って、今、公開になった。インディーズだからこそ、原発問題を告発すべきだと思った。東日本大震災のあと、日本の利権構造の闇は手をつけられていない。ちゃんと知らせたいと思った。ただ、ファンタジーを取り入れていますので、政治的メッセージは入れていません」と話している。

 ──初主演の感想を聞かせて下さい。

 美勇士:歌も映画もお客様を喜ばせるエンタメです。他の俳優さんと比べたら、自分はまだペーペーでしょうけど、自分のすべてをぶつけました。身体を引き締めるために、1か月で15キロ減量して撮影に臨み、役作りもきちんとやりました。

 ──今後は役者としても活動の場を広げていきますか。

 美勇士:はい。今後は役者の仕事も増やしていきたいです。僕は映画が好きで、特にホラー映画が好きなんですが、妻ともよく感想など意見を交換し、議論してます。妻ももちろんこの映画を観てくれています。この映画には、ヘンな魔力があって、中毒性があるみたいです。何回も観てくれている人もいます。1回と言わず、2回、3回と観て欲しい。ぜひとも劇場に足を運んで欲しいですね。

 上映は10日から30日まで。詳しくは「シネ・ヌーヴォ」公式サイトで。
(文責/フリーライター・北代靖典)