山田孝之は、なぜ『ウシジマくん』にサヨナラしようと決めたのか?

山田孝之は、なぜ『ウシジマくん』にサヨナラしようと決めたのか?

俳優・山田孝之(撮影:磯部正和)

 唯一無二の存在感で日本映画界にはなくてはならない俳優・山田孝之。そんな彼が6年間の歳月をかけて完成させた『闇金ウシジマくん』シリーズの主人公・丑嶋馨(うしじまかおる)。10月22日公開の映画『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』で彼の姿は見納めになる。人気シリーズで原作も続いている作品、なぜ山田はここでファイナルにすることを決断したのだろうか。

キャラクターを完成させることができた故のラスト

 2010年10月、深夜ドラマとしてスタートした『闇金ウシジマくん』。“闇金”をテーマに衝撃的なストーリーとシビアな人間模様は大いに話題となった。

 「この作品をやり始めたとき、目的が2つあったんです。1つ目は“ウシジマ”というキャラクターを完成させること、そしてもう1つが『闇金ウシジマくん』という原作を多くの人に知ってもらおうという思いだったんです」と当時を振り返る。

 その後、人気シリーズとなった『闇金ウシジマくん』は、ドラマ3作、劇場映画4作という長期シリーズとして、多くの人に強いインパクトを与え続けてきたが、映画『闇金ウシジマくん ザ・ファイナル』でシリーズは幕を下ろすこととなった。

 「映画の『闇金ウシジマくん Part2』が終わったときに、自分の中ではウシジマというキャラクターをほぼ完成に近いところまで持っていけたと思えたんです。そしてお客さんのリアクションを見たときに、多くの人に『闇金ウシジマくん』のことを知ってもらえたなって実感もありました。その自信を持った状態のまま、次の作品でラストにしようと提案したんです」

 これまで数々の作品で、スクリーンに爪あとを残していた山田が“完成した”と断言するウシジマというキャラクター。

 「スタンスやキャラクターの作り方は、ほかの作品とはまったく違いましたね。普通、演じる人物に対して、セリフを言うときや行動を起こすとき『なぜそうするのか』ということを考えるのですが、ウシジマに関しては、まったく考えませんでした。ある意味、人間味をなくすというアプローチ。自分が考えて理解しちゃうと、僕らしさが出てしまう。原作の良いところは、ウシジマは善なのか悪なのかといった部分を明示せず『どうなんだ』って訴えかけているんですよね。そこを大切にしたかったんです」と役へのアプローチ方法を語る。

 作品がスタートする際、“完成”にたどり着くイメージは想像できたのだろうか。

 「最初から見えていたわけではないですね。でも始めたからには目標に到達するために何回でも何年でもやり続けるつもりでした。それが大事なことだし、ちゃんと作品を愛して向き合えば『完成した』と自信を持てるところまで持っていけるということがこの作品をやり続けてわかりました」と本シリーズとの出会いに感謝する。

原作のキャラクターに寄せることは絶対ではない!

 昨今、人気漫画やアニメの実写化が続き、そのたびに、原作のキャラクターに似ているかどうかという議論が巻き起こる。山田自身は

 「作品にもよると思いますが、もちろん寄せたほうが見やすいということはあると思います。でもそれが絶対だとは思っていません。大事なのは中身」ときっぱり。山田演じるウシジマは、原作と非常に似たビジュアルというイメージがあるが、そこも特別意識したわけではないという。

 「山口(雅俊)監督はそこまで重視してなかったのですが、僕が絶対必要だと思ったのはメガネだけだったんです。原作を読んだときに、あのデッカイメガネが外の世界とウシジマを区切るフィルターだと感じたんです。だからメガネだけは必要だと思って。でもメガネを作ってかけたら変な人になっちゃったんです。そのときは髪も長かったので、髪を切ったんですね。でも成立しなくて、今度は髭を生やして、ピアスをいっぱいつけたらだんだん成立してきたんです。原作のキャラに寄せるというよりは、メガネにあわせていったら、自然と寄っていったという感じですね」

欲は生きる原動力!

 本シリーズに登場するキャラクターたちは、大きな欲に抗えずシビアな方向に進んでいってしまう。そんな債務者たちに対して、「もう少し考えればいいのに」と思う一方で「欲というのは生きる原動力になりますからね」と理解を示す。そして「今回、ここでシリーズをファイナルにしたのも、欲があるからだと思います」と語る。真意を問うと「『闇金ウシジマくん』以上にもっと多くの人が求めてくれたり、インパクトのある作品を作りたいという欲ですよね。だって人気シリーズになったからなるべく続けていこう……なんて考えは、つまらないですよね」と胸の内を明かしてくれた。

 さらに「具体的には言えませんが、何かを訴えかけたい、伝えたいという欲はあります。自分が携わった作品を観た人が、考え方を変えたり、人生の分岐点になったり……。そういう作品を作れたらなという思いは常にあります。この作品で言えば、お金や人間関係についてしっかり考えるきっかけになってくれればいいなという思いで続けてきたんです」と俳優としての欲を語ってくれた。

 「作ったからには1人でも多くの人に見てもらいたいし、気持ちを動かせたらなって思っています。最後なので見届けて欲しい」

 静かな口調ながらも、非常に熱い思いを感じる一言で締めくくってくれた。

(取材・文・写真:磯部正和)

■■山田孝之(やまだ・たかゆき)■■
1983年10月20日生まれ。鹿児島県出身。1999年に役者デビューを飾ると、2003年放送の『WATER BOYS』でドラマ初主演、2005年公開の『電車男』で映画初主演を果たす。その後も映画、ドラマにて強い存在感を発揮する俳優として様々な話題作に出演している。テレビドラマ「勇者ヨシヒコと導かれし七人」(テレビ東京系)が放送中。

動画URL:https://www.youtube.com/watch?v=uNtn8qsPumk