山田孝之と菅田将暉の『dele』 シリーズ化に最適の理由

山田孝之と菅田将暉の『dele』 シリーズ化に最適の理由

玄人筋の評価は高かった(番組公式HPより)

 人気ドラマの「続編」はファンの間でも議論になるところである。固定客が見込まれる一方で、物語の展開には向き不向きもある。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

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 ドラマ好きが今注目するCMといえば、「ハズキルーペ」(メガネ型の拡大鏡)がダントツではないでしょうか?

 第1子を産んだばかりの武井咲さんが、『黒革の手帖』を彷彿とさせる美しい訪問着姿で登場。お客様に笑顔のおもてなし。ケレン味、プロ的笑い、作り込まれたキャラの極北──1年前の夏に好評を博したドラマ『黒革の手帖』の、クラブママ・原口元子を思い出させてくれます。商品の存在が薄まってしまうほどのインパクトです。

 そう、あのドラマでお嬢様女優を脱皮し新境地を開拓した武井さん。表と裏、善と悪。一筋縄ではいかない欲望渦巻く現世を渡っていくタフな銀座の女を演じ、キラキラと輝いていました。

 しかし評判をとった直後に結婚出産、女優業をお休み。もしも本格的に芸能界へ復帰するのならばぜひ、武井版『黒革の手帖』の続編を望みたい。オリジナル脚本で続きを見てみたい。そう思わせてくれるCMです。

 おそらく、ドラマには「続編に向いている作品」と、「そうでもない作品」があるのだろうと思います。「向いている作品」の条件を考えてみると──。

1. 物語の屋台骨(『黒革の手帖』なら銀座のクラブ)が揺らがない

2. 新しい参入者が絶えず出てきても、自然に映る(例えば店にやって来る客)

3. 主軸となる人物像が明快で、キャラクターがきっちり定まっている(武井咲演じる原口元子)

 一方、幕を閉じたばかりの今クールのドラマでは、どうでしょうか?

 シリーズ化が期待される筆頭といえば、やはり『dele(ディーリー)』(テレビ朝日系)。たった8話で終わってしまったとはとても信じられない、信じたくない。持続可能性を感じる物語構造でした。

 その筋立ては──依頼を受け死後に不都合なデジタル記録を内密に抹消するという、独特な仕事を請け負う坂上圭司と真柴祐太郎。演じるのは山田孝之×菅田将暉、2人を軸に展開。芸達者なこの2人、対照的なバディぶりは実にメリハリと安定感があって、次々に依頼者の物語を解いていく骨組みもしっかりと構築されていました。

 人は生きて死ぬ。パソコンやスマートフォンに残されたデータ「デジタル遺品」も絶えず発生し続ける。処理を依頼した人物の背景はバラエテイに富んでいる。それぞれさまざまな事情がある。さらに、依頼人の家庭や関連する人間関係を紐解いていくと、そこにまた秘密があり、別の物語が見えてきて……無限に続きそうなくらい『dele』はシリーズ化にピタリのドラマ。

 しかも最終回には、デジタル遺品を「処理・抹消」するという仕事だけではなく、「希望の人に受け渡す」「大切に保存する」という新たな方向性も示唆されました。

 考えてみれば、死後に「何を消したいのか」というテーマと同じくらい、「何を残したいのか」というテーマは人にとって大きい。非常に興味深い終わり方をしたこのドラマ、暗黙のうちに「続編の可能性」をアピールしていたのかもしれません。

 あるいは、来年1月期に続編の放送が決定したのが『家売るオンナ』(日本テレビ系)のシーズン2『家売るオンナの逆襲』です。

 主人公は北川景子演じる不動産販売ウーマン・三軒家万智。2016年7月クールに放送され人気を博したドラマですが、この物語の構造もシリーズ化にピタリ。販売する「家」という商品には必ず、住む人のドラマがある。しかも家を「買う側」だけではなく、「売る側」にもドラマがある。様々な不動産を扱い取り巻く事情を描くことによって、多彩な人間ドラマが浮き彫りになる、というわけです。

 一方、それとは対照的にたとえ人気作品ではあっても、「続編に向いているかどうか」と問われるとよくわからないのが『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)。

 たしかにツイッターの世界トレンド1位になるなど社会現象を巻き起こし、終了した後もDVDやオフィシャルブック、関連グッズの売れ行きはすさまじく、続きを望みたい局の気持ちも分からなくはない……。テレ朝経営陣はずいぶんと乗り気だそうで「続編への期待も多くいただいているので期待に応えたい」と前向きなコメントも報じられているのですが。ドラマの構造としてはどうでしょうか? 

『おっさんずラブ』が、ピュアで繊細な人間関係に支えられたおっさん同士の純愛物語だとすると、春たん(田中圭)の恋愛が新たに続く? というのもどこか無理矢理感が漂う。続編は未知数、その行く末をしっかと見届けたいと思います。

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