宮脇咲良専任でもIZ*ONEがTWICEを追い越せない理由

宮脇咲良、本田仁美、矢吹奈子が二年半「IZ*ONE」専任もTWICEは追い越せず?

記事まとめ

  • 日韓同時放送のオーディション番組『PRODUCE48』からIZ*ONE(アイズワン)が誕生
  • 合格者の宮脇咲良、本田仁美、矢吹奈子らは二年半IZ*ONE専任となることが発表された
  • TWICEなどと異なり中華系メンバーがいないことから、IZ*ONEの成功は難しいとも

宮脇咲良専任でもIZ*ONEがTWICEを追い越せない理由

宮脇咲良専任でもIZ*ONEがTWICEを追い越せない理由

左から本田仁美、宮脇咲良、矢吹奈子(Imaginechina/時事通信フォト)

 日韓同時放送の公開オーディション番組『PRODECE48』の合格者12人からなる、グローバルガールズグループ「IZ*ONE(アイズワン)」が誕生した。AKBグループのメンバーが多数、参加したことでも話題を集めたが、同グループからの合格者は宮脇咲良、本田仁美、矢吹奈子ら3名。先頃、この3名がIZ*ONE専任になると発表された。KPOPのディープなウォッチャー、ライターのまつど☆たまき氏が、国民的アイドルグループを休んで専任となったら、TWICEのようにグローバルに活躍できるのかについて、やさしく解説します。

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「世界に通用するアイドルグループ」を作る!

 デビュー前からいきなりハードルの高い目標をぶち上げた「IZ*ONE」の行方が心配でなりません。

 奇しくも3人という数は、現在抜群の人気を誇るK-POPガールズグループTWICEの日本人メンバーと全く同じ。日韓のみならず、世界でのヒットを狙うIZ*ONEの戦略からいけば、TWICEは絶好のモデルでもあり、同時に必ず超えなければならない壁となります。 “世界制覇”というあまりにハードルの高い標的設定に、韓国のファンも半信半疑だと聞きます。

 世界中で好調にシェアを伸ばしているK-POPではありますが、日本と違って群雄割拠状態のガールズグループ戦線では競争も苛烈です。秋元康とAKB出身の御威光だけで、簡単にトップに立てるわけもありません。のし上がるためには、目の肥えたK-POPファンの洗礼と、一騎当千の手強いライバルたちを押しのける必要があります。

 私の見たところ、“てっぺんチャレンジ”を狙う彼女たちには、大きなネックが三つ存在します。

【1】国際的グループを目指すためのメンバー編成
【2】グループコンセプトを方向づけるプロデューサー不在
【3】日本人メンバー三人がIZ*ONEデビュー直前にAKB選抜入り
 
 IZ*ONEが成功するためには、まずこれらのアキレス腱を克服せねばなりません。しかし、それは現実的に見てかなり茨の道だと思われます。なぜなら……。

◆「世界的グループ」に必要な目配り

 6月11日ソウル江南にあるインペリアルパレス・ホテルで行われた『PRODUCE48』プロジェクト発表の記者会見で、番組を制作するMnet(ケーブル局)のキム・ヨンボム局長はこう語りました。

「最近の音楽業界は世界規模で展開している。北米やイギリスをはじめ、メインストリームの中で、アジアの地位はますます高まっています。音楽市場世界第2位の日本、そしてK-POPで世界に進出している韓国の両国が力を合わせて、日韓合作プロジェクトを進行したい」

 IZ*ONE構成メンバーは韓国人練習生から9名、日本からはご存知AKB系の3名。日韓混合の比率は1:3です。しかし、「世界的な活躍」を目指すのに、韓国人と日本人だけでよいのでしょうか?

 実際にグローバルな活動を展開しているTWICEは、日本人メンバー3名のほかに台湾出身のツゥイを加入させています。世界人口の10%を占める中国文化への目配りに他なりません。これはK-POPグループ最新の傾向で、PRISTIN、宇宙少女、LOONA なども中華系メンバーを擁しています。なにしろ中華人民共和国は人口約14億人、日常的に中国語を話す人口を世界で探すと、もっと多くなります。この巨大市場を制することは、リアルに「世界のてっぺん」を目指すために不可欠な要素だからです。

 実は『PRODUCE48』参加者にはワン・イロンという、超絶美貌と中国舞踊で培った柔軟性で話題になった中国籍の練習生もいたのです。しかし、中国資本の入った大手事務所YUEHUAエンターテインメント(先述の宇宙少女の所属事務所)であったため、放送時間が大手事務所所属にだけ割かれているのではないかという、ファンの排斥運動「ウィスプル排除」(※ウィエファ、スターシップ、ストーンミュージック、プレディスの四社の頭文字を取った造語)の声に押されたこともあって、番組では早々に脱落し、TWICEツゥイのようにプロデューサー判断で復活することもありませんでした。

 実は、PRODUCEシリーズには他にも、注目の練習生を番組側が「推す」“悪魔の編集”あるいは“PDピック”という演出技法があると取り沙汰されており、その演出の妙で番組を盛り上げてきました。そうした、目に見えない“影のプロデュース”手法が、以前のように機能していたら、メンバーの国籍はもっとバラエティに富んだ「世界水準」の構成になっていたのではないかと思います。

“悪魔の編集”と“PDピック”とは、このサバイバルオーディションシリーズを生み出した、あるスタープロデューサーの辣腕を象徴する代名詞でもありました。

◆「悪魔の編集」と「PDピック」

 K-POP界に大旋風を巻き起こしたサバイバルオーディション番組『PRODUCE101』を立ち上げたのは、大人気ラップバトル番組『SHOW ME THE MONEY』(2012年~)の立案者として名高い局長(当時)兼プロデューサー、ハン・ドンチョル氏です。

 ヒップホップならではの“罵倒芸”をテレビのリアリティ番組に仕立てた演出は、業界や通のファンの間で大いに話題になりました。ドンチョル氏の非凡さはそれにとどまらず、過激さと殺伐さで売った番組の方法論を、あえて正反対のアイドル畑に応用し、後に「プデュ」という愛称でファンに親しまれるサバイバルオーディション番組、PRODUCEシリーズを生み出したことで一般のファンにも広く知れ渡ることになりました。

『PRODUCE101』第一シーズン(2016年)では、大手有名事務所JYPの秘蔵っ子ながら、TWICEの最終選考に漏れたチョン・ソミと、弱小事務所所属のキム・セジョンを大フィーチュアし、二人のライバルによる切磋琢磨、そして個性ある他の練習生たちに適宜フォーカスを当てることで、彼女たちの奮闘ぶりをまるで、大河ドラマのように描いたのです。

 しかし、番組と出演する練習生たちの人気が上昇すると、こうした物語的な編集を、一部のファンが“悪魔の編集”と呼んで批判し始めました。練習生全員に公平な(放送)時間配分をしていない、実際の現場で起きた時系列を放送では操作している、意味深な表情アップを挟んで別の意味を付けている──これら「恣意的な編集」で練習生たちの運命を左右するのは許せない、といった議論がSNSなどで盛んに交わされました。また、番組で採用されるシーンや人物に明確な基準がないため、“プロデューサーの選択”(ピック)という意味の“PDピック”という言葉も生れました。

 こうした批判に対して、ドンチョル氏はあるインタビューでこう答えています。

「選抜の結果について、出番について色々と論争が多かった。でも、私はこれが本物だと思う。若者たちが絶対にやりたいことを実現させるため、歯を食いしばって走るのは当然のこと。すべてのことに死に物狂いになって、他人を踏みにじったり、傷ついて泣いたりする姿こそ、彼女たちの本当の姿だ。そんな中で、さらに頑張ってさらに努力する候補者にカメラを当てるしかなかった。視聴者たちも実力だけを基準に投票しているわけではない。実力が足りなくても、足りなかった実力から大きく成長した候補に関心が行くのが筋だ」

 ドンチョル氏の現実主義と野心は、番組の演出だけではおさまりませんでした。2017年早々、彼はMnetを辞職し、BIG BANGやBLACK PINKなどを擁する大手プロダクションYG ENTERTAINMENTに移籍してしまいます。

 続く「プデュ」第二シリーズには、ドンチョル氏門下のアン・ジュニョン氏がプロデューサーに就任。「悪魔の編集はなくす。私の名前をかけて約束する」と明言しました。

 ボーイズグループ結成を目指す「プデュ」の第二シーズンがまずまずの成功をおさめたのち、「プデュ」第三シーズンとして『PRODUCE48』が始動します。ファンの顰蹙を買う“悪魔の編集”による批判を避けた、二代目プロデューサーのジュニョン氏が新シリーズのために編み出したのは、AKB48グループからのメンバー派遣という“悪魔の選択”でした。

 日韓のアイドルの性質の違いからいって、基礎的な踊りや歌の実力では韓国の練習生に一日の長があります。「実力差」のコントラストに加え、言語ギャップもある。差を埋めようと必死になるAKBメンバーの奮闘ぶりを取り上げれば、“悪魔の編集”に頼らなくても、自然とドラマが生まれる。この着想は、最初のクラス分けテストでダンスも歌もダメと軒並み低評価を下され青ざめた、AKBメンバーの様子をクローズアップすることで実現しました。

 そういった“物語”が生まれた効果なのか、「テレビ話題性指数分析」で『PRODUCE48』は上位ランクインする大きな反響があったといいます。ところがこれは、野次馬的な興味に偏っていたようで、視聴率は第11回まで視聴率3%を突破出来ず、メンバー発表の舞台を中継した最終回も3.1%というプデュシリーズでは最低の結果となりました。

 これは不当な数字でしょうか? いえ、正直、私の目から見ても意外ではありません。悪魔の編集を放棄したとはいえ、せめて“PDピック”が正常に機能していれば、結果は違ったかもしれません。しかし、あまりにポリシーの感じられないピックアップが脈絡なく繰り返されたため、今シリーズは最後まで誰がヒロインなのか分からない“残念なプデュ”となってしまいました。その結果、投票による結果はかなり偏った内容だったと断言してしまってもいいと思います。何人かの実力派練習生は、露骨な「ウィスプル排除」の煽りで脱落し、結局、ルックスの良さや、目立ったエピソードをフィーチュアされた“幸運な”メンバーに投票が集中してしまったように思います。素直に参加者の誰かに感情移入してファンになっていく、サバイバルオーディション番組としての面白味は、最終回まで発揮されず仕舞いだったのは非常に残念なことでした。

 何度も引き合いに出してなんですが、『SIXTEEN』というオーディション番組からセレクションされたTWICEのメンバーは、審査員であるJYP社長パク・ジニョン氏の慧眼で、メンバーの技量と個性を様々な角度から査定され、粒ぞろいの布陣に磨きあげられています。この特徴的なピックアップのおかげで、一般投票の結果を超えた"神の裁定"が下された結果、台湾出身のツゥイとダンス番長のモモが復活当選し、現在あるTWICEの魅力が開花する結果を呼んだわけです。片や、今回のIZ*ONE選出には、“影のプロデューサー”であるカリスマを失って煮え切らないまま終わった番組内容を受けて、「国民プロデューサー(視聴者投票)」が迷走してしまいました。

 正直、このままではTWICEのような国境を越えた大人気グループとなることは、かなり難しいと言わざるを得ません。デビューにあたっては、グループの個性をきっちりと表現できる、真のコンセプトプロデューサー降臨を期待しますが、果たしてそんな奇跡は起きるのでしょうか?

◆IZ*ONE専任発表はしたけれど……

 IZ*ONEの活動期間は、期間限定の番組企画グループとしては異例の2年半と長めに設定されています。所属メンバーは、IZ*ONEの活動終了を待って、所属事務所プロデュースの“本番”のパーマネントグループでそれぞれデビューをしなければなりません。

 第一シーズンで選抜されたI.O.Iの頃は、その人気急上昇に便乗して所属事務所が自社グループからのデビューを強行し、新曲に参加できないという“事件”も起きました。そこで、今回のIZ*ONEでの活動は、前半の一年半を「IZ*ONE専任期間」とし、その後の一年は「兼任可能」と設定されています。

 これを受けて、宮脇咲良、本田仁美、矢吹奈子ら三人のAKBメンバーは、この9月末早々と「二年半のIZ*ONE専任」を発表しました。非常に潔い決定であり、彼女たちの飛躍を期待する国内のファンからは概ね好評のようです。

 ところが、この専任のニュースと共に、K-POPファンならびっくりするような発表がされました。韓国メディアが報じるところによれば、IZ*ONEの活動開始(すなわちデビュー)は2018年10月29日からとされていますが、その約一ヶ月後、11月28日に発売されるAKBの54thシングル『NOWAYMAN』の選抜メンバーに、宮脇咲良、本田仁美、矢吹奈子の3人が入ったのです。しかも、この曲がAKB活動休止前の最後のシングル、特に宮脇咲良はセンターの大任だというではありませんか。一見美談に聞こえますが、冷静に考えればとんでもないことです。

 デビューから一ヶ月の活動期間が、『NO WAY MAN』のプロモ期間と重なっています。仮に『NO WAY MAN』の活動にあわせてIZ*ONEのデビューをズラすとしたら、最初の一年半の兼任禁止の契約は有名無実になってしまいます。せっかくの「二年半専任」の美談も台無しです。

 本来、これからの一ヶ月は、IZ*ONEのデビュー準備に費やすべき時間です。合宿でメンバーの一体感を高め、デビュー曲のトレーニング、韓国語の習得、バラエティ出演や冠ミニ番組、YouTube,ライブ配信アプリV LIVEなどのメディアで事前情報を少しでも多く世間に広め、ヒットへの伏線を敷く大事な時期のはずです。さらに、韓国語ネイティブでない日本人メンバーは、メディアに露出しても言葉の壁が存在するので、しっかりとした準備をしておかないと、韓国のファンから活動への本気度を疑われる恐れもあります。

 なぜそんな一番大事なデビュー前の準備期間を国内活動で消費してしまうのでしょうか? AKB側の今回の決定は不可解でなりません。そもそも番組内で、日本人メンバーの技量不足は何度も指摘されてきた問題です。また、AKBメンバーは日本での活動と番組出演を“兼任”して日韓を行き来する過密スケジュールだったため、トレーニングがままならず苦戦する光景が見られました。実際、宮脇咲良は体調不良で8月の握手会を欠席。今回のプデュの目玉のはずだった松井珠理奈に至っては、番組降板までしています。

 こうした「兼任活動」による支障は、ファンの間でも有名な話です。このままでは、せっかくの難関を掻い潜って選抜された三人の努力が台無しになりかねません。IZ*ONE加入の話題を日本でのビジネスに転嫁したいAKB側の思惑もわかりますが、功を焦っては、「世界的成功」どころか、デビュー即失速の悲しい結果にもなりかねません。

 諸々考え合わせていくとIZ*ONEの未来は決して、順風満帆とは言えない状況であることがわかります。そんな懸念を吹き飛ばすような活躍を期待したいところですが、このままでは、TWICEのライバルとなるには茨の道が待っていると言わざるを得ません。

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