『コントが始まる』の仲野太賀 超絶リアル感で若手屈指の存在に

『コントが始まる』の仲野太賀 超絶リアル感で若手屈指の存在に

八面六臂の活躍(時事通信フォト)

 表情豊かに芝居できる若手俳優、というと、少なくない人がこの俳優の名前を挙げるのではないか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

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 毎年気温が上昇してくる季節にインパクトを放つのがキンチョー「虫コナーズ」のCM。奇妙な関西弁とおばちゃん挙動で目を引く長澤まさみさんが話題に。でも、最近長澤さん以上についつい視線がいってしまうのが、弟役として登場する仲野太賀さんの「きょとん顔」です。

「期限の切れた去年の虫コナーズでは無防備やねん」と姉役・長澤さんが言う。「おでこにパスワード書いて歩いているようなもんやで」と素っ頓狂な言葉をかけられて、「きょとん顔」で反応する弟・仲野さん。最後は深く納得した表情をして余韻を残してくれます。

 CMという短い時間の中で、特に弟はセリフもほとんど無いというのに、二人の間に絶妙なやりとりが生まれる。何とも奇妙な空気感が伝わってくる。

 と優れた演技感覚を見せる仲野さんですが、ドラマにおいて最初に爪痕を残したのが宮藤官九郎脚本の『ゆとりですがなにか』(2016年 日本テレビ系)。仲野さんが演じた「ゆとりモンスター・山岸ひろむ」は忘れがたいキャラクター。あれほど人をイラつかせムカつかせる人物はいないと話題に。

 遅刻しても「道分からなくて駅からタクっちゃいました」と先輩にあっけらかんと言い放ち、「メールあまり見ないんで、次からLINEにしてくれます?」とのたまう。実に憎々しくむかつく「モンスター」を見事に体現してみせた。ドラマ放送時はツイッター上でも「山岸に街で会ったらぶっ殺す」「あいつマジ殴りたい」と書かれたほどリアルで注目されました。

 そう、仲野太賀という役者の凄い点は「いるいる、たしかにこういう人」と思わせる超絶リアル感。作品によって演じる役柄は変化していくけれど、「キャラクターの輪郭を明解にくっきりと描き出すこと」において仲野さんの右に出る若手はいない。

 例えば公開中の映画『すばらしき世界』では、出所した元やくざを追いかける若手テレビディレクターを演じていますが、取材する側として気持ちが揺らいで変化していく微妙なプロセスを描き出しています。

 そう、人って複雑で矛盾していて時に環境によって変化していく。そんな人間が愛おしいと感じさせてくれるような演技です。

 その仲野さんが今、水を得た魚のように躍動しているのが、ドラマ『コントが始まる』(日本テレビ系土曜午後10時)。脚本は第38回向田邦子賞受賞の金子茂樹さんのオリジナル。

 物語は……売れないお笑いトリオ「マクベス」の3人組−−春斗(菅田将暉)、潤平(仲野太賀)、瞬太(神木隆之介)と、ネタ作りの場であるファミレスの店員・里穂子(有村架純)、その妹(古川琴音)5人の群像劇。

 憧れのお笑い芸人。しかし、夢にたどり着く道のりは想像以上に険しく、オーディンションは落ちまくり観客は集まらず。人生の葛藤と苦み。「マクベス」はとうとう2ヶ月後の解散を決める。

 タイトルからわかるように「コント」「お笑い」が主な素材のため、コメディドラマを予想し「お軽さ」を感じて食わず嫌いの視聴者もいるのかもしれません。しかしそれではあまりにもったいない。なぜなら、このドラマは安易に笑いを取りにいくのではなく、若い人にも年寄りにも響く普遍的なテーマを埋め込んでいるから。

 それは、自分らしく生きていこうと格闘する人の切ない姿です。仲野さん演じる潤平はストレートで感情豊かな三枚目で一見明るいけれど、内面に繊細で複雑な迷いが宿っている。

 少し前なら「お笑い芸人」がミュージシャンだったりサッカー選手だったり、中高年世代であれば野球選手だったのかもしれません。憧れの対象は時代によって変わっても、常に人の心を揺さぶるのは「ピュアでみずみずしい魂」。諦めかけた夢を必死に追い求める切なさを描き出すという意味でこのドラマは王道を行っています。

 役者もズラリ揃っています。ムードメーカー・潤平と裏表をなす役・瞬太に、神木隆之介さん。今や俳優のみならず声優としても飛ぶ鳥を落とす勢いの神木さんですが、プロゲーマーを挫折し「マクベス」に加わった中途半端な瞬太を、抑制的な演技によって味わい深く浮かび上がらています。

 一方、リーダー格の春斗を演じているのは、見ない日はない程露出中の人気役者・菅田将暉さん。有村架純さんとの共演も「食傷気味」という声がたしかに聞こえるけれど、ドラマの中の春斗の生真面目さと逡巡ぶり。夢にかける魂の力がほとばしっています。

 という3つの違う個性のぶつかり合いが最大の見所ですが、もう一つ見所が。それはドラマのユニークな構造です。冒頭、唐突にコントの舞台からドラマは始まり、コントのテーマ(第一話は「水のトラブル」)が提示される。

 そして、舞台を下り日常の中へと物語は進行し、エンディングでもう一度、コントで示されたテーマを絡ませて鮮やかにオチがつく。

 なるほど、入口と出口とはこういう構造でつながっていたのか、と膝を打つのです。しかも、そのテーマはちょっとした思いつきや小手先のお笑いではなく、きちんと主旋律と響き合ったアイテムとなっています。イマドキの青春ドラマとして、キラキラと眩しい役者陣の演技とあわせて注目です。

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