樹木希林さんは、内田裕也よりロックな生き方だった

医師が樹木希林さんのロックな生き方振り返る 「裕也さんを焚き付けていたのかも」

記事まとめ

  • 諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、樹木希林さんのロックな生き方を振り返る
  • 「樹木さんのほうが内田裕也さんを焚き付けていたのかもしれない」と話した
  • 帯締めを忘れて、ホテルの部屋の電気ポットのコードを使ったというエピソードも

樹木希林さんは、内田裕也よりロックな生き方だった

樹木希林さんは、内田裕也よりロックな生き方だった

鎌田實氏が樹木希林さんとの思い出を語った

 10年以上前、女優の故・樹木希林さん(享年75)と何度か、がんについて対談した諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師(70)。対談をきっかけに、何度かプライベートでの交流もあった鎌田氏が、滅多に家に帰ってこなかった彼女の夫・内田裕也(78)よりもロックだった生き方を振り返る。

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 樹木さんのお宅に呼ばれたとき、夫・内田裕也さんの若いころのポスターが飾られていたのを今でも覚えている。滅多に帰ってこない夫。帰ってきたときには、ガレージでガタガタと音を立て、「こんなすごい家、建てやがって」と悪態をつきながらやってくると楽しそうに語っていた。

 一見すると樹木さんが、ハチャメチャな裕也さんが暴走しないように、手綱を引いているように見える。でも、実際のところ、樹木さんのほうが裕也さんを焚き付けていたのかもしれないと思えてきた。もっと内田裕也らしく破天荒に生きろ、と。

「物づくりというのは、片方で壊しているんです」

 樹木さんは、そんなハッとするようなことも言った。つくることは壊すこと。その逆も真なりで、壊すことはつくることでもある。

 二人はいつも一緒にいるような、わかりやすい夫婦関係ではなかった。安定した関係や家庭の団らんを求めるのではなく、関係を壊しながら新たに再生していくような絆が、二人の間にあったのではないかと感じた。だとすれば、樹木さんは裕也さん以上にロックンローラーだったように思う。

 彼女の生き方を示す、クスリと笑ってしまうエピソードがある。どこか地方の会館のオープニングセレモニーに招待されたときのことだ。ホテルに前泊し、当日の朝、自分で着物を着つけていたら、帯締めを忘れてきたことに気が付いた。ピンチである。

 ホテルの部屋の中を見渡して、ひらめいたのが、電気ポットのコードだった。端っこにプラグが付いていて余分だが、コードの質感が帯のいいアクセントになった。

 セレモニーには皇室の方も来られていて、ごあいさつをした。「いいお着物ですね」と言われ、帯の中に隠したプラグを見せたい衝動に駆られたという。ちゃめっけたっぷりなのだ。

 樹木さんは、いつだって「今、ここ」で勝負してきた。役者という仕事がそうである以上に、生き方がそうなのだろう。だから、どんな失敗もめげない。それを味や笑いにも変えてしまう。まるで、はじめからそれを狙っていたかのように。

 そんな樹木希林的生き方に、たくさんの人がファンになった。

 彼女の最期からは、自己決定の大切さを学んだ。「最期は自宅がいい」と娘夫婦に言い、その通りになった。孫の声が聞こえるところで、「じゃあ、ありがとう」となったらいい。そう語っていた10年前が、つい昨日のことのようだ。

●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。

※週刊ポスト2018年11月23日号

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