立川談修 正攻法で清々しい後味の「ダーク」な落語

立川談志さんの弟子、立川談修は正攻法で「ダーク」な落語 『BURRN!』編集長語る

記事まとめ

  • 『BURRN!』編集長の広瀬和生氏が、立川談修の正攻法で「ダーク」な落語を語る
  • 談修は、立川談志さんが生前最後に真打昇進を認めた弟子で、端正な口調の芸風が持ち味
  • 談修が演じた『首提灯』は談志さんが二ツ目の柳家小ゑん時代から得意にしていた噺

立川談修 正攻法で清々しい後味の「ダーク」な落語

立川談修 正攻法で清々しい後味の「ダーク」な落語

立川談修の魅力を解説

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、立川流には珍しい端正な口調の真っ直ぐな立川談修による正攻法の「ダーク」な落語について、お届けする。

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 立川談志が生前最後に真打昇進を認めた弟子が立川談修。2003年に談志一門が出した『談志が死んだ』という本の中で談志は当時二ツ目の談修を「間違いのない芸の形で文句はない」と誉めた。個性派揃いの立川流には珍しい、端正な口調の真っ直ぐな芸風が談修の持ち味だ。

 11月5日、日本橋社会教育会館で「談修インザダーク」を観た。「明るく楽しいだけが落語じゃない」をテーマに2013年から年1回行なっている独演会で、今回は『首提灯』『文違い』『死神』の3席を演じた。

『首提灯』は談志が二ツ目の柳家小ゑん時代から得意にしていた噺で、談修も談志の型に忠実に演じた。首がポロッと落ちそうになる場面がリアルに見えるのは小柄な演者の利点。同じく小柄な柳家喜多八が抜群にリアルだったのを思い出す。

 首を提灯の代わりに差し上げて「ハイ御免、ハイ御免」というサゲは圓生の型で、談志もそう演ったりしていたが、もともと談志の『首提灯』は八代目正蔵直伝で、本来は火事見舞いで首を差し出して「八五郎です」がサゲ。晩年、半年の休養から復帰した2010年4月の紀伊國屋ホールの高座で談志は『首提灯』を演じ、「八五郎です」でサゲていた。

『文違い』は談志が演らなかった噺。著書『談志 最後の根多帳』で「志ん朝が上手く演っていたので、今さら踏み込むことはないと思っている」と書いていた。新宿の遊廓で男女が騙し騙される噺で、たいていの演者は「新宿」や「間夫」について説明するが、談修はそれをせず「色街の女は男の自惚れ心をくすぐるもの」と言うくらい。つまりそれがこの噺のテーマだ、ということか。

 ラスト、女郎のお杉が半七と喧嘩になり、「お前より田舎者の角蔵のほうがマシだよ!」と言い放つと、半七が「だったら角蔵と所帯を持ちやがれ!」と言い返し、それを盗み聞きした角蔵が「やっぱりオラァ色男だ」とニンマリしてサゲ。これは珍しい演出だ。初めて聴いた。

『死神』は1960代後半の談志が好んで演じた噺。いろんな演者が圓生の型を基にそれぞれ工夫を凝らしているが、談志は「アジャラカモクレン」ではない呪文を用い、移し替えに成功した蝋燭の火を死神が吹き消すという皮肉なサゲを考案した。談修は圓生型そのままで、サゲも「消えた」で倒れる見立てオチ。男が医者の看板を出した直後に来たのが『金明竹』で出てくる「中橋の加賀屋佐吉」の手代だったのは笑った。

 正攻法で演じた3席は、この会の「ダーク」というテーマとは良い意味で裏腹の、清々しい後味を残した。

●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。

※週刊ポスト2018年12月21日号

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