吉本・若手芸人の不満噴出「傍観者」から一転の“告発”

吉本・若手芸人の不満噴出「傍観者」から一転の“告発”

7月22日に会見を開いた吉本の岡本社長(撮影/木村圭司)

 

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々を心理的に分析する。今回は、「闇営業」問題で揺れている吉本興業に注目。

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 芸人たちの闇営業問題に端を発した吉本興業の問題は、お家騒動にまで発展、所属する芸人たちの不満やら不安やらが噴出し続け、まだまだ収まる気配を見せていない。

 雨上がり決死隊の宮迫博之さんとロンドンブーツ1号2号の田村亮さんが開いた謝罪会見を受け、『スッキリ』(日本テレビ系)のMCをつとめる極楽とんぼの加藤浩次さんは、「経営側が変わらないなら、僕は退社します」と言い切ると、ダウンタウンの松本人志さんは『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、「大崎(洋・吉本興業会長)さんがいなくなったら僕も辞める」と発言。闇営業問題が吉本のガバナンス問題へと展開した。

 ところが、吉本興業・岡本昭彦社長の謝罪会見があまりにお粗末だったため、芸人たちがこの問題に参入し、SNSでつぶやいてみたり、番組で意見したりと忙しい。NON STYLEの石田明さんは「全員傷まみれ&信頼関係ぐちゃぐちゃ&タイムロス&恥部大放出でふりだしに戻る 大マイナスやん…」とツィートし、とろサーモンの久保田かずのぶさんも「血の通った発言を聞きたい」とコメントするなど、あちこちから批判が続出。岡本社長が会見で述べたギャラの配分についても、若手芸人らから反論が噴出した。

 気が付けばいつの間にやら、吉本興業に対する内部告発のような様相になっている。吉本のマネジメントに不平不満があっても、これまで言えなかった若手芸人たちが、ここにきて声を上げたのだ。

 吉本の中では、以前から「傍観者効果」に似た心理が若手芸人たちの心に生じていたのではないだろうか。傍観者効果とは援助すべき状況であるにも関わらず、周りに人がいると、誰かがやってくれるだろうと思い、自分では率先して行動を起こさないという心理的傾向のことを言う。援助と告発では状況が異なるが、会社に問題があると思っていても、自分からは意見せず行動せず、きっと誰かが一歩踏み出してくれるだろうと思っていたのではと考えると、傍観者効果が起きる心理とよく似ている。

 もちろん、まだまだ芸人としてトップレベルにいない、会社の稼ぎ頭でもない若手が、率先して声を上げるなんてできないし、できるような立場ではないことはわかる。これまで何十年に渡り、この体制が維持されてきたのだ。おいそれと発言などできないと思うのが当然だろう。

 傍観者効果が起きる理由の1つに、「行動を起こした結果を懸念したり、不安に思う」という心理がある。若手芸人には、もし行動を起しても、「不満があるなら他の事務所へ行け」と言われたり、契約を解除されたりしたらという不安もあっただろう。それでも好きで入った吉本が、これを契機によくなってほしい、自分たちの待遇もよくしてほしいという願いから、声を上げた芸人も多いと思う。

 これに対して、ベテラン芸人たちの思いはちょっと違うようだ。オール巨人さんは「若手が批判に近いツイ―とをするのは、良いとは思いませんね」とコメントし、太平サブローさんは「気にいらんかったら辞めろ」と一喝。どちらの言い分ももっともなだけに、尚更、収拾がつかなくなっている。

 ついには、加藤さんが『スッキリ』で自らの発言がきっかけで事が大きくなったことを謝罪。松本さんは『ワイドナショー』で「今は黙っておいた方がいいのかな」と言いつつも、「芸人が一体となって会社を改善して」とも話した。

「少しいい方向が見えてきた」という松本さんだが、傍観者でいられなくなった若手芸人たちを抱え、吉本はどう変わっていくのだろうか。

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