高田文夫が注目のエンタメ本 昭和を堪能できる傑作の数々

高田文夫が注目のエンタメ本 昭和を堪能できる傑作の数々

高田文夫オススメの本は?(イラスト/佐野文二郎)

 放送作家、タレント、演芸評論家で立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、石原裕次郎、由利徹、三木鶏郎など、昭和のおじさんたちが堪能できるエンタメ本を“ソムリエ”の高田氏が紹介する。

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 合併号やらで一週休んでる間に芸能界を牛耳る二大組織がてんやわんや。ジャニーズ事務所に吉本興業だ。その隙間を縫って贈られてきた本やら買った本など……私は「エンタメブックソムリエ」と呼ばれている。

 現代の二枚目はジャニーズ、三枚目は吉本ということで独占販売しているが、昭和の時代はなんたって二の石原裕次郎、三のオシャマンベ由利徹である。まき子夫人も“最後の法要”といっていた裕次郎の三十三回忌も無事にすんで、ファンには嬉しい記念出版『石原裕次郎昭和太陽伝』(アルファベータブックス)が出た。この世界ではこの男くらいマニアックな奴はいない佐藤利明が、出演作品104作、シングルレコード237タイトルをギッチリ書き込んだ。ああ太陽がまぶしい。

 裕次郎が灼熱の太陽なら昭和の星くずは脱線トリオの由利徹。晩年はテレビドラマの久世作品でもおなじみ。私もよく知る高平哲郎。1981年、そんな昔に『由利徹が行く』という大傑作を書いているのに、この度また由利を描いた『喜劇役者の時代』(ヨシモトブックス)。大好きな森川信や八波むと志が躍動した日本の“笑い”の青春時代がよみがえる。

 今を生きるおじさんマニアには『にっぽんのペーソス』(カンゼン)がおすすめ。ごく一部にうけている切ないおじさんバンドである。まんが家の島本慶やら伝説の編集者・末井昭らがたそがれた歌声、演奏をきかす。本を出すのでひと言だけ書いてくれと頼まれたので、チョコチョコッとトイレで走り書きして渡したら、本になってびっくり。ドーンと一ページ目に私のありがたいコメントとして載っている。

『なにひとつ国の為にならない。なにひとつ日本の文化史に残らない。ほとほとあきれる男達である。(後略)』果してこの男達、老後の2千万円はどうするのだろうか。

 そして力作は『冗談音楽の怪人・三木鶏郎』(新潮選書)。泉麻人が本当によくコツコツと調べあげた。永六輔やら三木のり平の師匠筋で、名前ばかりが残ってその実像が知られていなかったエンタメの巨人の実像を書いたみごとな評伝。CMソングもコントもすべてこの人からなのだ。

 そして今ページを開くのにドキドキしているのが『1988年のパ・リーグ』山室寛之(新潮社)。帯には「南海・阪急の衝撃的な身売り、そして伝説のロッテvs近鉄『10・19』」とある。昭和最後の年の男のドラマだ。

 昭和が好きすぎて『東京懐かし写真帖』秋山武雄(中公新書ラクレ)。浅草橋の洋食店のおやじが撮りまくった素晴しい昭和の東京。幼き日の自分がいるよう。

◆イラスト/佐野文二郎

※週刊ポスト2019年8月9日号

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