ジャニーズタレントがバラエティで活躍できるワケ

ジャニーズタレントがバラエティで活躍できるワケ

ジャニーズのタレントたちが時代の変化に対応できたのはなぜか

 1990年代にSMAPが本格的にバラエティに挑戦して以降、TOKIOやV6、嵐などジャニーズ事務所のグループがゴールデン帯で冠番組を持つようになった。所属タレントはそれ以前も『8時だョ!全員集合』(TBS系)などでコントを演じていたが、1990年代以降はアドリブも要求されるトークバラエティーを主戦場の1つにしていった。

 1990年前後にゴールデン帯の音楽番組がほとんど消滅し、路線変更を余儀なくされたという背景もあるが、なぜジャニーズのタレントたちは時代の変化に対応できたのか。

 芸能研究家でライターの岡野誠氏が、7月9日に逝去したジャニー喜多川氏とバラエティ界に多大な功績を残している萩本欽一に共通する指導法から、その理由を探る。

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 8月に4回放送されたNHK-BSプレミアム『欽ちゃんのアドリブで笑』には、11日にA.B.C-Zの河合郁人、塚田僚一、18日にSMAPのメンバーだった香取慎吾が出演。台本なし、アドリブで進むコント番組で、萩本は次から次へと出演者たちに無茶振りを繰り返していった。欽ちゃんと初共演の河合と塚田は当初、戸惑いを見せていた。

 コントで、最初に河合が「河合、行きます!」と手を上げるシーンがあった。次の塚田も「塚田、行きます!」と同じ言葉を発した。すると、萩本は「同じことをしない!」と突っ込んだ。

 塚田が小声で「じゃあ何を言えば」と悩むと、萩本は「自分で考えろって言うの」と突き放した。その後、こんなやり取りが続いた。

塚田:塚田やります!
萩本:違う!「塚田の魂を見せます!」とか男らしい台詞言う!
塚田:塚田の魂を見せます!
萩本:俺が言ったの! 俺の言うんじゃない!

 過去の焼き直しは、確実に効果が逓減する。何か振られたら、すぐに反応しないとテンポや間が悪くなるため、萩本は即座の返答を望んでいる。

 このような「同じことをするな」「聞いちゃダメ」という指導法で、欽ちゃんは関根勤や小堺一機、勝俣州和、風見慎吾(現・しんご)、柳葉敏郎など数多くのスターを生み出してきた。

 この、バラエティ界の礎を築いてきた萩本と同様の指導を実践していたのが、ジャニー喜多川氏だ。中居正広が、ジュニア時代を振り返った発言から読み解いてみよう。

〈トークの中にユーモアを入れると、たまにウケたりするんですよ。若い時だと嬉しいじゃないですか。それで繰り返し連発するんですよ。すると(ジャニーさんが)怒るんですよ。『同じことを繰り返さないでくれ。いくらウケたからって、なんで同じことを繰り返すんだ』と。違うことを考えながら積み重ねなさいって〉(『中居正広のニュースな会』テレビ朝日系・2019年7月13日放送)

 ジャニー氏はステージの本番当日にいきなり振付を変えることも頻繁にあった。その時、タレントに「できません」という選択肢はない。欽ちゃんと同じような無茶振りが、タレントの成長を促していったのだ。

 ジャニー氏の教えがあったためか、河合や塚田はすぐに萩本の言葉を飲み込めたようだ。当初はやや戸惑っていたが、わずか数分でコツを掴んで笑いを取り、最終的には欽ちゃんに褒められていた。

 ジャニー氏と萩本は1960年代から親交を深め、1988年には『欽きらリン530!!』(日本テレビ系)をきっかけにジャニーズ事務所と他事務所の融合グループであるCHA-CHAが生まれている。同番組には当初、草なぎ剛も出演しており、木村拓哉も稽古に参加していた。中居正広は1994年公開の映画『欽ちゃんのシネマジャック』に出演し、香取慎吾は同年の『よ!大将みっけ』(フジテレビ系)で萩本と共演。SMAPは、吸収力の高い10代の頃にジャニー氏、欽ちゃんという2人の名プロデューサーから指導を受けていたわけだ。

『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の開始から3年が経とうとする1998年、萩本はSMAPがバラエティ番組で人気を得た理由をこう分析していた。

〈僕も浅草の修業時代、まず最初にやらされたのがダンスだったの。なんでこれが笑いと関係あるのって思ってたけど、ダンスで笑いに必要な間を覚えてたんだよね。そう考えるとSMAPは久しぶりに登場した、きちんと修業を積んだコメディアンって言えるんじゃないかな。やっぱり20代からじゃ遅いんだよね。小学生からダンスや演技を勉強するジャニーズっていうのは、コメディアンを生み出す最後の集団なのかもしれないよ〉(『SPA!』1998年2月25日号)

 ジャニーズ事務所の所属タレントは若い頃から無茶振りに慣れており、同じことを繰り返すなと教育される。そして、ダンスを習うことで笑いに必要な間を覚える。これらの要素が重なり合い、バラエティ番組に対応できる人材が育っているのかもしれない。

●文/岡野誠:ライター・芸能研究家。本人へのインタビューや関係者への取材、膨大な資料から解き明かした著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)では、ジャニー喜多川氏の初公開エピソードも多数綴っている。9月28日(土曜)には東京・下北沢本屋B&Bで元CHA-CHAの木野正人とトークイベントを行なう。

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