「金曜夜にOLの夢を叶える」夏ドラ3作、求められる結末とは

「金曜夜にOLの夢を叶える」夏ドラ3作、求められる結末とは

黒木華主演で話題のドラマ『凪のお暇』(番組公式HPより)

 この夏クールのドラマが終盤へ差し掛かっているが、盛り上がっているのが「金曜夜」だ。この“枠”で放送されるドラマ3作品が、注目を集めている。クライマックスへ向けどのような結末が求められているのか、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが分析する。

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 9月に入って夏ドラマが終盤に突入する中、OL層から熱い支持を集めているのが、金曜夜に放送されている『凪のお暇』『セミオトコ』『これは経費で落ちません!』の3作。

『凪のお暇』は、28歳のOL・大島凪(黒木華)が、仕事や人間関係をリセットする物語。未練タラタラの元カレ・我聞慎二(高橋一生)と、引っ越し先の隣人・安良城ゴン(中村倫也)との恋や、その他の住人たちとの心温まる交流を描いています。

『セミオトコ』は、人とコミュニケーションを取るのが苦手なアラサーのOL・大川由香(木南晴夏)が、あるセミの命を救ったことから、美しい男性の姿になったセミの王子様=セミオ(山田涼介)と一緒に過ごすという物語。地味で冴えない人生が、純粋で優しいイケメンとの同居で幸せなものに一変するほか、同じアパートの住人たちを含めた楽しげな日々が描かれています。

『これは経費で落ちません!』は、アラサーのOL・森若沙名子(多部未華子)が、経理という受け身の業務内容が多い部署で、営業、広報、企画、秘書などの他部署に毅然と対応していくという物語。さらに、営業部の社員・山田太陽(重岡大毅)から熱烈なアプローチを受けての社内恋愛も描かれています。

 凪は家電メーカーの営業事務、由香は食品工場の社員、沙名子は石鹸メーカーの経理。いずれもOLである上に、イケメン2人から愛されたり、社内恋愛したり、頭ポンポンされたり。あるいは、一切のしがらみを断ち切る、新たな友人ができる、同じアパートの住人と仲よくなるなど、3人にはポジティブな出来事が次々に訪れます。

 この3作は、まるでOLたちの「こうだったらいいのに」という願望を叶えるようなファンタジー。金曜夜の放送なのは、「一週間の疲れを癒してもらう」とともに、「うまくいかないことの多い日常を忘れてもらい、夢を見てもらおう」という狙いがあるからです。

 ここまでの約2か月間、夢を見続けてきたからこそ、現在ネット上に飛び交っているのは、結末に対する期待の声。幸せな気持ちにさせてもらい期待値が高くなっている分、その締めくくり方を間違えると、大バッシングのリスクも高いのが、制作サイドにとっては難しいところです。

 いったいどんな結末が求められ、何を間違えると尻すぼみになったり、バッシングを受けたりしてしまうのでしょうか?

◆9月に入ったらファンタジーは終了

 メインターゲットのOL層が最も求めているのが、さわやかなハッピーエンド。さんざん夢を見てきただけに、「後味の悪い結末で気分を台なしにされた」と感じたらバッシングは免れないでしょう。

たとえば、『凪のお暇』は、凪がお暇を終わらせて人生を立て直し、空気を読まずに過ごせるようになる。『セミオトコ』は、由香が他人とのコミュニケーションをうまく取れるようになり、仕事にもやりがいを見つける。『これは経費で落ちません!』は、大きなピンチが訪れても沙名子の仕事ぶりは変わることなく、最後には太陽と結ばれる。

 これらのさわやかなハッピーエンドを見せることで、多くのOLたちは「3か月間見続けてよかった」「癒しや元気をもらえてありがとう」という心境にさせられるでしょう。

 ただ、あまり知られていませんが、そもそも夏ドラマは「全面的なハッピーエンドが似合わない」と言われています。一年で最も開放的な気分になり、長期休暇や花火などのイベントで盛り上がる8月が終わるころ、人々の気分は一変。夏の終わり特有の寂しさを感じたあと、忙しい日常に戻るだけに、8月までのファンタジーを引きずるような全面的なハッピーエンドはフィットしないのです。

 制作サイドに求められるのは、「ファンタジーを終わらせて視聴者を現実に戻した上で、それなりのリアリティがあるハッピーエンドを見せる」こと。

たとえば、『凪のお暇』は、凪が慎二とゴンのどちらも選ばず二人から愛され続け、やりたいことを見つけずお暇を続ける。『セミオトコ』は7日間で死んでしまうはずのセミオが生き続ける。『これは経費で落ちません!』は、会社を揺るがす大問題が勃発し、それを沙名子の力で解決。さらに、太陽から早くもプロポーズを受けて結婚する。

 これらの「夢を見させたままドラマを終わらせてしまう」という展開は、かえって視聴者を醒めさせてしまうものであり、夏ドラマ終盤のムードに合いません。「気持ちよくさせておいたまま放置する」のではなく、地に足のついた結末が求められているのです。

◆「いい気分転換になった」と思えるか?

 残りの放送は、『凪のお暇』が3話、『これは経費で落ちません!』が4話、『セミオトコ』が2話。最後までヒロインの恋や仕事は大きく動き、9月末にはOLたちの間で「3つのうちどれがよかった?」という声があがるのではないでしょうか。

 夏ドラマは、もともと学生も社会人も、夏休みを取る時期に放送されるため、「リセット」「リスタート」「リボーン」などのコンセプトで制作されるケースがよく見られます。

 3作が終わるころ、3人のヒロインは新たな姿を見せてくれるでしょう。また、最終回を見終えたOLたちが、「ドラマを見たことで、いい気分転換になった。来週からまた新たな気持ちで頑張ろう」と思えるような結末を見せてほしいところです。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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