おぎやはぎの「ブス」テレビ ひな壇のブスをどう集めるのか

おぎやはぎの「ブス」テレビ ひな壇のブスをどう集めるのか

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 女性に「ブス」と言うことは、面と向かってはもちろん、話題にすることすら避けるのが普通だ。ところが、堂々と番組タイトルに掲げたトークバラエティ『おぎやはぎの「ブス」テレビ』(AbemaTV)は、番組タイトルの強烈さにも関わらず、2017年1月から現在に至るまで、月曜夜9時に最新話が配信され続ける人気番組となっている。芸人のおぎやはぎが司会をつとめ、ひな壇には約10人の「ブスの皆さん」が座り、ゲストも交えて毎回、「ブス」をテーマにしたトークが繰り広げられる。コンセプトは「ブスの、ブスによる、ブスのための番組」。身近な事項にも関わらず扱いが難しい「ブス」をテーマに、悩みを真正面から捉え、見事に笑いへと転化させる番組はどのように生まれ、続いているのか。「ブス」番組の魅力と継続の秘密について、株式会社AbemaTV 番組プロデューサー・濱崎賢一氏にイラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が聞いた。

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──2017 年 1 月にスタートした『ブステレビ』ですが、番組はどのようにして誕生したんですか?

濱崎:『ブステレビ』の発案者は僕じゃないんですよ。元は制作会社の持ち込み企画でした。ただ、一度目に出したときに企画書は通らなくて。しばらくしてから「もう 1 回、出したい」と言われ、二度目で決まった番組なんです。個人的に、番組開始当初は『ブステレビ』に特別強い思い入れがあったわけではなかったのですが、担当番組のひとつとしてきちんとやろう、と思いながら取り組んだことを覚えています。けれども、年数を重ねていくうちに番組愛が強くなっていきましたね。

──すごく失礼なことを聞いていいですか。『ブステレビ』って一体誰が観ているんですかね?身近に視聴者がいないんですよ。

濱崎:大丈夫です、少なくない人が見てくれているのは調査で分かっているのですが、僕も『ブステレビ』を観ていると言ってくれる人に会ったことがないですから(笑)。番組を立ち上げる時も、誰が観るのだろうか想像はつかなかったです。ネットにも視聴率のようなデータがあるのですが、それを見ると、視聴者は女性が55%くらい、視聴者全体では34歳以下の女性が視聴者全体の40%を占めていて、正直意外でした。番組に寄せられたコメントを読む限り、仕事などが忙しくてお疲れ気味のアラサー女性が多いみたいですね。

──番組を観ていますと言う人が少ないのは、外で観るのではなく、家でこっそり楽しむ番組だからかも知れません。それにしても「ブス」だけをテーマに 2 年以上、番組が続いていることに驚くのですが、当初はここまで続くと想像していましたか?

濱崎:最初は難しいかなぁと考えていました。しかし、続けていくうちに「ブス」というテーマの普遍性に気づいたんです。ブスという形容は他人に対して抱きやすい感情だけど、自分でも「うわぁ、今の自分ってブスだなぁ……」と思うことがある。どんな人にもブスな瞬間があるから、ある種、永遠に話せるテーマなんですよ。

──確かに、ブスにまつわる話は他人ごとのつもりで観ていたら、気づけば身につまされる思いになることもたびたびありますね。そして、毎回観ていますが飽きない!なによりも司会のおぎやはぎが良いですよね。どんな理由で司会の人選が行われたのでしょうか?

濱崎:企画を進めていく中で、『ブステレビ』は「Abema GOLDEN 9」で配信されることが決まりました。この枠は、地上波のテレビでもMCとして活躍されている芸能人の方にMCしてもらいたいという方針なんです。そういう基準で司会にふさわしい人を考えた場合、企画自体が物議をかもすものなので、尖った芸風の芸人だと、番組企画とぶつかってしまうと考えました。攻撃的なタレントさんは避けようとなりました。さらに、好感度を気にしないけど本音トークが上手な芸人さんに担当して欲しかったんです。その結果、おぎやはぎさんにたどり着きました。

 おぎやはぎさんとは、スタッフの1人が過去に仕事をした経験があり、口説いてもらえたのもラッキーでしたね。今となっては、彼ら以外が司会をすることはありえなかったと思います。

──小木さんも矢作さんも「お前らと共演しても何も得もならない!」とひな壇のブスに対して、けっこう酷いことを言う。ところが、言葉だけは明らかな悪口なのに、嫌味にならないのが魅力ですね。良い意味で言葉が軽い。

濱崎:人徳でしょうね(笑)。2人はブスとの距離感が絶妙なんです。ベタベタはしないけど、コメントに愛がある。守りもしないけど、それぞれの個性は尊重している。

──ひな壇に座るブスの方々も個性的なメンツ揃いですよね。どのように集めているのですか?

濱崎:番組制作において、出演するブスメンバーをどうやって募るのかについては、最もネックとなった部分です。本放送の前にパイロット版を制作した際、初めてブスメンバーを集めることとなりました。でも、さすがに「ブスの人、募集しています!」とはいかないわけですよ。まずはタレント事務所、エキストラ事務所、そして知人にも声をかけました。声をかけ続けたら、類は友呼ぶのかブスメンバーが友達をブスとして紹介してくれるんですよ。芋づる式に出演者は揃っていきました。

──色々なメディアを観ているつもりなんですが、最近だと『ブステレビ』の宇佐麻衣さんが1番面白い。芸人でもタレントでも無い、一般人でOLの宇佐さんがスケボーで通勤している様子を取り上げた回は衝撃的でした。想像がつく、変わった人をはるかに超えた、奇妙な一般人でしたね。

濱崎:宇佐さんの日常に密着したあの放送回は、僕も嘘であってくれ!と思いながら、VTRをチェックしていました。一般人である宇佐さんは元々、制作会社の方が連れてきた人なんです。どうやって宇佐さんという逸材を見出したのか聞いても、彼女を見つけた経緯を誰も教えてくれない。だから、僕は妖精なんじゃないかと思っています(笑)。台本も何もないのに、タレントを相手に「アンタ、よーく見るとブスですよねぇ!」と毒づける素人なんています?宇佐さんは、テレビのロジック、人間のロジックを超えて予想外の面白さを見せてくれます。──しかし皆さん、本当にプロフェッショナルなブスですよね。今、顔面の話をすること自体がタブー視される傾向にあり、なんとなくブスにまつわる問題は無いことのように扱われます。でも、番組で彼女たちが赤裸々に話すことで「現実はこーだぞ」と見せつけられます。

濱崎:確かに「みんな違って、みんな美しい」は正論です。だけど、そんな建前だけで通すのは、実際には優しくないと思うんです。現実には「ブスで苦しんでますけど!」って人もいる。「こんなこと言われたんですけど、ヒドくないですか?」とグチる番組があってもいいんじゃないかなと思います。

──ブスメンバーが皆一斉にグチを吐き出す、あのガチャガチャ感こそ『ブステレビ』の魅力ですよね。そして、彼女たちの個性的なファッションも、密かに楽しみにしています。

濱崎:スタイリストがいないから全員私服で出演しているために、番組の画面がトータルコーディネートされていません。そのうえ、彼女たちのファッションセンスが、ことごとく変わっているんですよ。実は、結構お金をかけてキレイなセットで番組を収録しているのですが、その整ったセットの中に統一性がないうえに個性的すぎる私服の「ブス」が座ると、妙な違和感が生まれます。そのアンバランスさも、番組を観る人ににぎやかな印象を与えていると思います。

──視覚的にもガチャガチャしていたんですね。ひな壇は芸人と素人が分け隔てなく混ざっていますが、その、ごちゃ混ぜな席順も、濱崎さんのこだわりですか?

濱崎:こだわってはいませんが、個人的には一般の方がテレビに出ているのが好きなので、意識せずにいたら今のようになっていました。芸人さんにはテレビに出る理由があります。実際に出演している若手芸人がどんな心構えでいても、人前に出る仕事をしている人に対しては、視聴者からすれば「ビジネスでブスやってんじゃないの?」というバイアスがかかってしまう。だけど、一般の方が出演する場合はメリットが一切ない。彼女達が『ブステレビ』に「ブス」として出演する理由には、"楽しい"以外にないんですよ。そんなところが好きなんです。

──ちゃんと観ているとわかりますが、『ブステレビ』は視聴者以上に出演者が楽しんでいる番組ですよね。表面的にはブスに厳しいけれど、心根はすごく優しい。

濱崎:疲れた時に帰ってくる実家のような番組作りを心がけています。番組収録日、出演者は楽屋に集まると「おかえり」と言い合ってます。そして「ブス」といったデリケートな題材を扱う番組を作り続けていくためには、スタッフの決定的な優しさが必要なんです。些細なことでいえば、出演者が「こんなお菓子が食べたい」と言えば、次の撮影日には用意しています(笑)

──想像以上に繊細なバランスで成り立っているんですね。そこまでとは……、気づきませんでした。

濱崎:視聴者がどこで嫌な気持ちになるかはわからないし、完璧にはコントロールできない。しかし、出演者が嫌がる番組だけにはしたくないんです。「『ブステレビ』に来たくないな」なんて気持ちには絶対にさせたくない。一見、尖った番組だけど出演してくれてる「ブス」のみんなが楽しい場にしたいし、それを見て楽しんだり元気になってくれる視聴者の方を大事にしていきたいと考えています。

<毎週、ネットテレビに関するコラムを書いている。よって膨大な本数の番組を定期的に観ることとなる。「好き」から始めた仕事だが、書くためだけに鑑賞し、コラムに取り上げた翌週から離れるといった番組も多い。しかし『ブステレビ』は違った。コラムの題材にするために視聴を始めたが、いつの間にかファンになっていた。今回のインタビューを通して「番組が面白い」から以外の理由に気づく。僕は濱崎さんのアットホームな作風に惹かれたんだ。そして、『ブステレビ』が作り出す疑似家族を羨望の眼差しで見ていた。あぁ、女性に生まれていたら絶対に出たのに!(オーディションを合格できる自信はないけど……>

●はまさき けんいち/株式会社AbemaTVプロデューサー。2003年、テレビ朝日入社。『いきなり!黄金伝説。』『そうだったのか!池上彰の学べるニュース』など様々な人気バラエティ番組を担当。2016年よりAbemaTVの制作部門へ出向、『恋する週末ホームステイ』『Popteenカバーガール戦争』』『さよならプロポーズ』『おぎやはぎの「ブス」テレビ』、『指原莉乃&ブラマヨの恋するサイテー男総選挙』『DTテレビ』など数々のオリジナル番組を企画し、プロデューサーを務める。

●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週一回開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)

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