『バチェラー3』で指原莉乃のコメントが優しくなった理由

 今では日本でもすっかり人気ネット番組となった『バチェラー・ジャパン』(Amazonプライム・ビデオ)の第3シーズンが9月13日から配信されている。ハンサムで社会的地位もある独身男性(バチェラー)を巡る婚活サバイバル番組は、美しい参加女性たちが人気を支えているのはもちろん、VTRを見ながらスタジオで繰り広げられるトークも注目されている。とくに第2シーズンから加わった指原莉乃が発する言葉は、VTRだけなのに女性の手管に振り回される今田耕司と藤森慎吾を正気に戻す役割も果たしている。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、第3シーズンで見えた指原の心境の変化について考えた。

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 以前、アマゾンジャパンの本社に呼ばれたことがある。社内の会議室にて、僕は『バチェラー・ジャパン』についてのヒアリングを受けた。約1時間、番組について話し合い。終了間際、それまで言葉を発していなかった社員にこんなことを聞かれる。

「ヨシムラさんにとってバチェラーとは?」

 難しい問いである。15秒ほど考え、僕は「見た目は豪華だけど、中身はトンマな番組ですかね……」と答えた。

『バチェラー・ジャパン』も今回でシーズン3を迎えた。年1回、Amazonプライム・ビデオで配信されることはもはや恒例行事となっている。

 シーズン3の主人公・バチェラーには友永真也が選ばれた。中高をフランスで過ごし、現在は貿易会社の経営者として手腕を振るう31歳。親は医者、愛車はフェラーリ、絵に描いたようなセレブである。家柄、年収、容姿、全てを持っているバチェラー友永、そんな彼が唯一手にできていないのが人生をともに歩む伴侶。20名の美女によるバチェラーをめぐる婚活サバイバルの結末はいかに!?

 今現在(2019年10月12日)エピソード7までを配信中。全話を鑑賞したが、シーズン3は最高傑作と言える出来となっている。番組内でバチェラーは美女を引き連れ、各地を巡る。誰もが羨むハーレム旅行を番組内では“旅”と称する。しかし、現実的には“旅”ではなく“婚活サバイバル”。選ばれる側の女性陣からすれば、グアムの美しい海でシュノーケリングをしても心から楽しむことはできない。

 どうしても淀んでしまうムードに、過去のバチェラーは「旅を楽しんで欲しい!」と声を上げてきた。そんなこと言いつつも、自ら動かなかったのが1代目と2代目である。選ぶという立場のせいか、どこか受け身。盛り上げ役は明るい女性メンバーに一任していた。

 対して、一味違ったのが3代目の友永だ。流石、関西人! 自らボケ役となり、女性陣にグイグイと話しかける。巧みな関西弁を用い、少しでも楽しい"旅"となるように演出。有言実行な、高いパフォーマンスを披露している。

 女性と真っ正面から向き合うゆえに怒ってしまう、そんな点も友永は正直だ。ちょっとした問題から涙した女性に「そんなことで泣いたら、心が弱すぎるわ。俺が求めているのは強い女性やねん!」と熱弁。「なぁなぁ」にすることは好まない。全ての女性に心を開くことを求め、また自らも開放することを心がけている。

 友永の真剣さからは、結婚への熱意が伝わってくる。今作、最後に残った女性とバチェラーが結婚する可能性は過去作よりも高い。僕はそう観ている。

 シーズン1の久保裕丈は36歳、シーズン2の小柳津林太郎は35歳でバチェラーとなった。毎話、最後に行われるのが「ローズセレモニー」。名前を呼ばれ、バラを渡された女性が生き残る。逆に呼ばれなかった女性は去っていく。

 番組名物の儀式で久保、小柳津ともにまず落としていったのが、自身の年齢と近い女性陣だった。物語の序盤でアラサー世代は殲滅。本格的に結婚相手を選ぶ後半パート、伴侶の座を争ったのは20代の美女ばかりとなっていた。

 結果、2人のバチェラーは10歳ほど年の離れた美女と結ばれる。しかし、両カップル共に結婚することはなく早々に離別。番組のナレーションで“真実の愛”を連呼しておきながら、寂しすぎる結末。『バチェラー・ジャパン』とはゴージャスな婚活であり、金持ちと若い美女の遊びの場であってはならない。

 シーズン3は、結婚リアル路線を突き進む!

 まず、エントリーされた20名の平均年齢が最も高い。バチェラー友永が最年少31歳といったことを考慮すれば、過去シリーズよりも現実味があることがわかる。なおかつ今現在、友永が残しているのは自身の年齢に近い女性ばかり(エピソード7時点で最年少が25歳の岩間恵)。とどのつまり、同性として好感が持てるバチェラーなのである。

 女性の平均年齢が上がったことにより、過去作と比べて減ったのがケンカ。個別インタビューでグチは漏れるものの、直接言い合うといった描写は一切ない。シーズン1、2ともに場の空気を悪くした女性は皆早々に去っていった。過去作を研究している女性陣は同じ轍を踏むはずがない。他人を牽制するよりも、自らの価値を上げることに力を割いている。

 作風が変化したことによって、スタジオレギュラーである今田耕司、藤森慎吾、指原莉乃のコメントも前回とは異なったものに……。バチェラー2のCMで効果的に使われていたのが、指原が「早くケンカして欲しい!」と嬉々と話すシーン。シーズン3では女性がバチェラーに仕掛けた作戦の意図を理解しない今田、藤森に「もー!!」と悶えるシーンへと変更。今作のテーマがケンカではなく作戦になったことが、CMからも読み取れる。

 前回、あれほどケンカを求めていた指原も今回は女性陣に感心しっぱなし!

「ローズセレモニー」前のカクテルパーティーにて、女性の殻を破るために自ら率先してシャンパンを開けていくバチェラー。しかし終盤、飲み過ぎがたたり泥酔寸前となる。そこに「もう1杯どうぞ〜」とシャンパンを持ってきたのが最年少の岩間。バチェラーは「キツイなぁ」思いつつ、一気飲み。そこでビックリ、岩間が手渡したのはシャンパンではなくジンジャエールだった。

 女性のテクニックを目の当たりにした指原は「今までは『はちゃめちゃやな!』と観てたけど、今回は女性として勉強になるところが多すぎます!」と漏らした。

 コメントからもわかるが、指原にとって前作までの『バチェラー・ジャパン』はどこか他人事だったのだろう。しかし今作は違う、妙に感情移入し観入っている。離婚し、11歳の子供を育てつつバチェラーに参加する女性に「お母さんでも恋愛してもいい、頑張って欲しい」と涙を浮かべてエールを送ったりもする。

 シーズン2のコメンテーターを務めていた頃、指原はアイドルグループHKT48のメンバーだった。あくまで恋愛禁止の身である。しかし、卒業し自由となった今「結婚」が身近なものになったのか。コメントから棘は消え、どこか母性めいた慈愛ものぞく。

『バチェラー・ジャパン』シーズン3の指原を観て気づく、シーズン2が配信された1年前とは別人である。恋愛、いや結婚にすごく前向き。すでに相手がいるように勘ぐってしまうほどマジ、画面からは「私も幸せな結婚がしたい!」といった気持ちがこぼれ落ちる。

 そして、未だに20台前半の女性との交際を望む今田と藤森には哀れみの目を向ける。指原が夢見る男性陣に「(女性の心情)わかってない!」とツッコむ回数が、結婚観の描写が色濃くなる後半パート、更に増えていきそう。その際、どんな言葉を駆使して怒るのか。今から楽しみで仕方ない。

●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週一回開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)

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