海老蔵、ブログ経由の弟子が廃業か 人材確保の困難さ示す

海老蔵、ブログ経由の弟子が廃業か 人材確保の困難さ示す

記者の直撃に応じる海老蔵

「海老蔵さんのブログによく登場していたあの子、最近見かけないね」、「勸玄くんと仲よしだった男の子、どうしたのかな」――。今、熱心な歌舞伎ファンの間では、この話題で持ち切りになっている。

 心配の声が向けられるのは、市川海老蔵(41才)のブログにたびたび登場していた男子・Aくん。

 Aくんは幼い頃から日本舞踊を習い、2014年に小学6年生で海老蔵に弟子入り。親元を離れて親戚宅に下宿しながら、週末に海老蔵のもとで修業を積んだ。

 その後、見習いを終えて市川姓の名をもらい、海老蔵の長男の勸玄くん(6才)らと共に成田屋の新星として芸を磨いた。

 そんなAくんは入門前から海老蔵ファンの間で話題となる「逸材」だった。

「Aくんの母親が海老蔵さんのブログに『私の息子も歌舞伎役者になりたいそうです』と書き込み、それを読んだ海老蔵さんが『本気ならばお会いします』と“面接”を呼びかけたんです。そこから弟子入りするまでの経緯もブログで公開され、海老蔵ファンにはなじみの深いお弟子さんになりました」(成田屋の贔屓筋)

 そもそも一般家庭の子供が歌舞伎役者になるには、独立行政法人「日本芸術文化振興会」で、原則中学卒業から23才以下を対象にした2年間の研修を修了するか、直接、歌舞伎役者の弟子になるかの2通りある。

 また、弟子入りのハードルを下げるため、運営元の松竹は2015年から4〜10才の男女を対象に、歌舞伎の基礎などを習わせる「こども歌舞伎スクール寺子屋」を開講した。ここを修了すれば、幹部俳優の楽屋に預けられる「部屋子」になる道も開ける。

「当時11才だったAくんは、年齢制限のせいで、研修にも寺子屋にも参加できず、歌舞伎役者に直接弟子入りするコネもなかった。そこで母親が海老蔵さんのブログにメッセージを書き込むという、大胆な行動に出たんです」(前出・成田屋の贔屓筋)

 母子の強い思いを感じたのか、海老蔵は弟子として受け入れた後、Aくんを写真入りでブログにアップ。2015年11月のブログでは、ほかの弟子と共に次のように紹介した。

《どうぞよろしくお願いします。勸玄と共に芸道を歩む歌舞伎の未来です》

 2018年9月にはAくんに初めて大人の役がついたことを報告し、《彼にお役がつきました。なんだか感動です》と“親心”を綴った。

 歌舞伎界随一の名門である成田屋の宗主が一般家庭の子供を「歌舞伎の未来」と何度も紹介するのは極めて異例である。だが最近は冒頭のように「異変」が囁かれていた。

「全歌舞伎俳優の名前が記載される『歌舞伎俳優出演劇場一覧』は毎月更新されるものですが、Aくんの名前が10月に消えたのです。数年間舞台に出ない俳優でも、休演扱いで名前は掲載されるので、“Aくんは歌舞伎役者を廃業したのではないか”ともっぱらの噂です」(歌舞伎関係者)

◆一般家庭の子でもやる気があれば受け入れたい

 今回の騒動の背景に、歌舞伎界独特の育成システムを指摘する声もある。前述の通り、一般家庭の子供が歌舞伎界に入るには「研修」と「直接弟子入り」という2通りの方法がある。

 大物俳優にコネのない者は研修を終えてから各部屋に弟子入りして、歌舞伎役者としてのキャリアをスタートさせる。こうした役者は業界で「三階さん」と呼ばれる。

「三階さんの多くは役名もなければせりふもない端役で、正式には『名題下』といわれる俳優の一部です。昔、控室が大部屋で、舞台からいちばん遠い三階にあったことから、そう呼ばれるようになりました」(前出・歌舞伎関係者)

 彼らは主役を引き立たせるために舞台で宙返りをしたり、高所から飛び降りるなど、体を張った演技を見せる。

「それでも給料は安く、月収は20万円に満たないとされます。三階さんがいなければ舞台が成り立たないのに、梨園の御曹司や幹部俳優に目をかけられた若手の待遇とは雲泥の差がある。

 このため最近は将来に絶望した三階さんの廃業が相次ぎ、歌舞伎界の人手不足が深刻化しています」(前出・歌舞伎関係者)

 2018年3月には歌舞伎の名門「高麗屋」の松本白鸚(77才)がハレの舞台である襲名披露公演中に《歌舞伎俳優見習い募集》を行い、「そこまでなり手がいないのか」と関係者に衝撃が走った。

 こうした危機に「改革」を唱えたのが、ほかならぬ海老蔵だった。

「海老蔵さんは、歌舞伎界の働き方改革を進めたり、現代劇に近い演目を上演し、若い観客を集めたりと、業界の改革に積極的です。人材育成に関しても“歌舞伎の発展には脇を固める役者の力が必要不可欠”との考えで、歌舞伎役者の待遇改善に乗り出しています。例えばよそを辞めたお弟子さんを拾ったり、違う家の役者さんを自分の舞台で積極的に活用しているんです。

 一般家庭のAくんをブログを通じて採用したのも、“やる気があれば誰でも受け入れる”という彼の意思表示だと、歌舞伎界は受け止め、感銘を受けた人は多かった」(前出・歌舞伎関係者)

 前述の通り、海老蔵はAくんを丹念にフォローして「特別扱い」ともいえる好待遇の環境で育ててきた。それなのになぜ、Aくんは歌舞伎界から姿を消したのか。梨園関係者が指摘する。

「いくら改革が進んでも、歌舞伎には技芸を継承する家元制度があり、世襲だけは覆せない。Aくんは勸玄くんと一緒に遊ぶことが多く、周囲からは“兄弟”のように見られていました。その“弟”である勸玄くんは来年5月に8代目・市川新之助を襲名する。一方の自分はきつい稽古を続けても端役から抜けるには時間がかかる。もちろん最初からわかっていた“格差”だが、若い彼には受け止めきれない現実だったのではないか。今彼は多感な高校2年生になった。誘惑も多い。残念ながら違う未来を描いたのかもしれません」

 海老蔵を直撃すると、Aくんが歌舞伎界を去ったことを認めたうえで、「事務所で話し合って決めたこと」と言うのみだった。

 松竹にもAくんの“廃業”理由などを問い合わせたが、期日までに回答を得られなかった。前出の梨園関係者はこう嘆息する。

「あれだけ目をかけていた弟子が辞めてしまうのはショックですし、言葉にしなくとも、海老蔵さんの本心としては怒りもあると思いますよ。グッとこらえているんでしょうけどね…。

 確かに一般家庭の子が置かれる環境は厳しいけど、彼らは追い詰められたら辞めればいい。一方で世襲の子は厳しい稽古から逃げたくても逃げられない。選択肢はないに等しい。どんな立場であれ芸を極めるには、困難を乗り越える胆力が必要なことに変わりない」

 歌舞伎界の人材不足は、一朝一夕には解決できる問題ではない。

※女性セブン2019年11月7・14日号

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