C.イーストウッド 「ぼくはトランプよりいい仕事ができる」

C.イーストウッド 「ぼくはトランプよりいい仕事ができる」

C.イーストウッドがトランプについて語る

 2009年1月15日、午後3時30分頃。乗員乗客155名を乗せたニューヨーク発シャーロット経由シアトル行きのUSエアウェイズが、上空850mで全エンジン停止。ニューヨーク市内を流れるハドソン川に不時着した――。

 大惨事から一転、全員が無事に生還したことから「ハドソン川の奇跡」と呼ばれるこの航空事故が、巨匠クリント・イーストウッド(86才)によって映画化された。

「ぼくはとにかく“いいストーリー”が好きなんだ。“いい”というのは、映画を作らないではいられなくなるような新しい挑戦ができるという意味だよ。

 ただし、今ハリウッドで主流になっているアメリカン・コミックを派手に映像化したものとはこれからも無縁だろうな。そういう作品をヒットさせると、より大きな権力を持てるのはぼくでもわかるんだよ(笑い)。だけど、それはぼくの趣味じゃない。ぼくは、自分の作りたい映画をこれからも撮っていくだけさ」

 アメリカ・ロサンゼルスで行ったインタビューで、イーストウッドは、渡辺謙(56才)や嵐の二宮和也(33才)が出演して大きな話題となった『硫黄島からの手紙』(2006年)への熱い思いを振り返った。

「当初はもう一作の『父親たちの星条旗』だけを自分が手がけ、『硫黄島からの手紙』は日本人の監督に任せるはずだったんだが、脚本を読んでいるうちにどうしてもやりたくなってね(笑い)。バカな考えだったと思うけど、硫黄島には特別な感情があったんだよ。あの島は聖地以外の何物でもない。島のシーンの大部分はアメリカ本土の砂漠で撮影したよ。実際に島を造ってね。

 謙だけでなく、二宮和也や加瀬亮(41才)など、日本人俳優も本当にいい仕事をしてくれて、自分の作品の中でも好きな1本なんだ。謙とは今でもクリスマスのカードのやり取りをしているし、会えば話をしているからね」

 奇しくもアメリカでは、大統領選が過熱しているところ。ハリウッド・スターたちが、熱心に各々の候補を応援する様子が伝えられているが、共和党支持者のはずのイーストウッドの声が聞こえてこない。そのことを聞くと…、

「だって、一度もトランプと話したことがないからね」

 そしてドナルド・トランプ氏(70才)と密会しているという噂も一笑に付して、こう続けた。

「ぼくは今回の大統領選については誰とも話したことがない。共和党大会にも呼ばれなかったし。でもそれはよかったよ」

 今作の主演、トム・ハンクス(60才)も、熱心な民主党支持者として知られているが、「撮影中は政治について話し合うことを避けるようにしている」という。

「なぜなら、そういう話って人々の感情をすごく乱してしまう。だからぼくらは目の前にある仕事についてだけ話すんだ。ぼく自身、誰を支持するかわからない。トランプとヒラリー、どちらにも夢中じゃないからね。

 もし今回の大統領選を映画にしなければならなくなったら、ぼくは自分を大統領役にするよ。もちろんトランプを演じるわけではない。ぼくは彼よりもずっといい仕事ができるからね(笑い)」

 かつてイーストウッドはカリフォルニア州カーメルの市長を務めていたが、その自負は、今年才を迎えた現在も衰えていない。

「イーストウッドには負けていられない」

 そう話し生涯現役を望むハリウッドセレブは多いが、日本でも5月に亡くなった演出家の蜷川幸雄氏(享年80)が、事あるごとにイーストウッドを意識していた。とはいえ、静かな老後に憧れないのだろうか?

「映画界を引退? そんなこと、考えたりしないよ。とは言っても、時々思いがけないものを忘れるシニア・モーメントはあるんだけどね」

 そう言って、最後はチャーミングに笑ってくれた。

◇『ハドソン川の奇跡』9月24日(土)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他 全国ロードショー 巨匠クリント・イーストウッド監督×主演トム・ハンクスのアカデミー賞コンビが贈るヒューマン超大作。大惨事から全員の命を救った機長・サリーは、なぜ一夜にして容疑者になったのか…。史上最大の航空機事故の裏に隠された実話が描かれる。

撮影/Yoshi Ohara

※女性セブン2016年9月22日号

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