多摩川氾濫、ドラマ『岸辺のアルバム』で描かれた仰天演出

多摩川氾濫、ドラマ『岸辺のアルバム』で描かれた仰天演出

堰堤の爆破の様子は繰り返し報じられた(写真/共同通信社)

 10月12日に東日本を直撃した台風19号がもたらした大雨によって、多摩川沿いの街は泥水に浸かった。

 多摩川の氾濫と聞いて記憶に浮かぶのが、山田太一原作・脚本のドラマ『岸辺のアルバム』(1977年・TBS系)だ。ホームドラマの常識を覆した名作の最終話で視聴者をさらに驚かせたのは、1974年の多摩川水害の実際の報道映像を用いるという演出だった──。

 良妻賢母役を演じることが多かった八千草薫(88)が、突如かかってきた電話から不倫にのめりこむ──。1970年代はハッピーエンドのホームドラマの全盛期だったが、多摩川沿いに暮らす一家の関係は八千草の不倫を機に、崩壊していく。

 最終話では、“家族の象徴”であった自宅が大雨で流される。この洪水は1974年9月に発生した「多摩川水害」がモチーフで、実際の報道映像が使われている。

 別掲した写真は劇中で使用されたシーンの報道写真だ。上智大学文学部教授の碓井広義氏が語る。

「もともと脚本の山田氏はこの水害で民家が流されたことをきっかけに作品の着想を得たといいます。ノンフィクションとフィクションを織り交ぜた手法も斬新で印象に残る作品になった」

 自宅が濁流に呑まれる寸前、家族が持ち出せたのが、アルバムだった。ラストでは、流された自宅の屋根に崩壊していた1家4人が乗り、笑い合う。そうした希望が持てる様子が描かれながらも、「これは3年前の一家で、いまこの4人がどんな幸せにいるか、どんな不幸せを抱えて生きているかは視聴者に委ねる」という主旨のテロップが入る。

「ドラマの放送は水害からちょうど3年後でした。見る側に“考える余地”を残すラストで、それだけに長く印象に残る作品となった」(碓井氏)

※週刊ポスト2019年11月8・15日号

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