『とと姉ちゃん』に見る新旧「商品評価ジャーナリズム」考

『とと姉ちゃん』に見る新旧「商品評価ジャーナリズム」考

『とと姉ちゃん』で当時の商品テストを緻密に再現

 コラムニストでデイトレーダーの木村和久氏が、近頃気になるニュースをピックアップし独自の視点で読み解きます。今回は依然、高視聴率を保持する『とと姉ちゃん』の劇中で注目を集めている“商品評価”について考察。

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 NHK朝ドラの『とと姉ちゃん』が、終盤近くになり、俄然面白くなってきました。当初は見てなかったのですが、アカバネ電器の社長役の古田新太が登場してから、対立構造がはっきりし、今は毎日ドキドキしながら見ております。古田は『あまちゃん』でも、秋元康風プロデューサー役で、美味しいところを持っていきました。NHKの誇る、名脇役って感じですかね。

 大筋は「あなたの暮し出版」が商品テストを厳正に行い、その評価が素晴らしく、40万部を越えるモンスター雑誌に成長していきます。それに対して、アカバネ電器の製品は、価格はお値ごろですが、使い勝手が悪いし壊れやすく、粗悪品と言わざるをえません。それを正直に記事に書かれて、アカバネ電器の売り上げが落ちてしまった。そこで赤羽社長は、様々な妨害工作をするという展開です。

 皆さんご存知の通り『とと姉ちゃん』のモデルとなったのは『暮しの手帖』という雑誌で、実際はドラマ以上の厳しい賞品試験を行いました。なにしろトースターのパン焼き試験では、焼いたパンが約4万枚、ベビーカーの耐久試験では、100キロもベビーカーを走行させたのです。昭和30年代の雑誌編集部が、こんなに熱かったとは、ほんと驚きです。

 そんな状況で『とと姉ちゃん』がどんどん面白くなってきた矢先、リアル世界では、某グルメ評価サイトの炎上騒動が起きました。ある店主が、グルメ評価サイトの方針にそぐわない契約をしたら評価を下げられ、それをSNSにアップしたら炎上となったのです。細かい内容は分かりませんが、私自身、ちょうどトレードをやっていたもので、運営元の親会社の株価が、1日で上下にブレまくり、まるでジェットコースターのようでした。

 せっかくなので、『暮しの手帖』と現代のグルメ評価サイトの方針の違いを、時代背景を考慮しつつ、考えてみたいと思います。

【1】広告を入れるか入れないか

『暮らしの手帖』は、創刊当時から広告を入れない方針でした。商品テストの人気はすさまじく、最盛期には部数100万部を超えたそうです。そりゃ100万部あれば、資金は潤沢で、それで商品を買い商品テストを繰り返せます。まさにジャーナリズムの理想形ですね。

 現代のグルメ評価サイトにおいては、広告を入れないのは至難の業です。稀有な例でいえば、『ミシュランガイド』とかね。あれはミシュランタイヤという大企業が、メセナとして始めた企画ですから、元々のお金はありました。食に関する造詣も深いフランスだからできたのです。

 そもそもグルメ評価サイトでは、広告はもちろん、評価される側から参加料や出店料を取るケースがあるので、その段階で公正な評価は難しくなります。しかも、評価するのが運営側か、ネット意見か、はたまたお金を払った人が高いポジションを得るのか…、仕組みがよく分かりません。別に、広告なしのジャーナリズムと謳っているわけではないので、騙してはないのですが。

【2】一方通行か双方向か

 昔の雑誌は、ほぼ一方通行に近かったようです。もちろん投書やアンケート、抗議の電話は受け付けますが、そこまでする人って、熱心な読者か記事を掲載された当事者ですよね。第三者である読者の多くはただ雑誌を買って読むだけ。でもそれが、素晴らしく有益な情報だったから、丸く収まっていたのです。

 時は移って現代。今はSNSが普及し、双方向に意見を言い合えます。ユーザーの感想、インプレッションが、評価の大事な判断材料になっています。そして、運営側が間違ったことや、危うい方向に向かったら、即座にユーザーが反応するので、セーブ機能が働きます。ただ意見は、常に賛成意見と反対意見があるので、SNSの意見ばかり気にしていると、運営側は思い切ったことができなくなる恐れもあります。ここが難しいところでしょう。

【3】匿名性の問題

 日本は匿名で意見を言う人が多いですね。マズい、つまらないと書かれてしまうと、それだけで営業妨害になりかねません。店側もたまったもんじゃないです。「じゃ、あなたは、どれだけの数の店を食べ比べて、マズいと言うんだ?」と、反論したくもなるでしょう。匿名の人で、批評と悪口の違いをよく分かってない方も多いようですし。

 というわけでグルメ評価サイトは、新たな転換期を迎えていると思います。まずもって、紹介する店が多すぎます。大手のチェーン店や地元の食堂とか入れてどうするの。評価が追いつかないし、評価してもしょうがないでしょう。

 加えて評価が細かすぎる。5段階評価の小数点以下までの点数評価をするところがありますが、オリンピックの体操の点数じゃないんだから、細かすぎです。ミシュランすら3段階しかないのですよ。

 そして広告と評価の、はっきりした区別をすべきです。

 ちなみに、私はゴルフ場の評価サイトをよく見ますが、一部の連中の低評価が名コースのランクを落とし、こっちから見れば「分かってないなあ…」という気分です。ちなみに自分の著書の書評も、書評サイトで一部の人にですが的外れな低い評価をされて、へこみました…。

 とまあ、ネットでみんなが好き放題評価するのは勝手ですが、取りまとめや編集がとても難しい。余計な情報が多すぎ、真の求める情報が埋もれてしまうのです。誰か簡潔で明解な評価サイトを作ってくれませんか? 「求むネット界の花森安治」って感じでしょうかね。


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