草薙、ナダル、濱家…バラエティがグダグダ芸人で溢れる理由

草薙、ナダル、濱家…バラエティがグダグダ芸人で溢れる理由

グダグダキャラで注目のナダル

 テレビのバラエティ番組では数多くの芸人が活躍しているが、今注目は「グダグダキャラ」だという。いったいなぜか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 2日夜に放送された『27時間テレビ』(フジテレビ系)内のコーナー『さんまのお笑い向上委員会』で、お笑いコンビ・かまいたちの濱家隆一さんが繰り返しフィーチャーされ、ネット上で話題を集めました。

 同コーナーの出演者たちがスポーツ関連のコスプレをする中、濱家さんは「世界で初めてクラウチングスタートをした人」というマニアックなチョイス。しかし、濱家さんは生放送という緊張のためか痛風で左足が動かず、「肝心のクラウチングスタートができない」というグダグダの空気になってしまったのです。

 その後も濱家さんがグダグダになってしまうたびに相方の山内健司さんが、「余談なんですけど、濱家、同窓会に呼ばれなかったらしいんです」「余談なんですけど、濱家、初対面の音声さんに呼び捨てにされてました」「余談なんですけど、濱家、電話でタクシー呼んだんですけど、来なかったんです」などの冴えないエピソードで笑いを誘うシーンがありました。

 かまいたちと言えば、2017年に『キングオブコント』で優勝したほか、『M-1グランプリ』でも4位に輝くなど、お笑い賞レースの上位常連。さらにロケの技術も高く、『ロケ芸人最強決定戦 外王』(フジテレビ系)で昨年、今年と連覇した実力派です。彼らの実績やスキルを踏まえれば、あえて濱家さんのグダグダキャラを前面に押し出していることが分かるのではないでしょうか。

 しかし、グダグダキャラで活躍している芸人は、濱家さんだけではありません。宮下草薙の草薙航基さん、コロコロチキチキペッパーズのナダルさん、ダイアンの津田篤宏さんなど、20代の若手から40代の中堅まで、さまざまなキャリアの芸人があえてグダグダキャラを選び、バラエティへの出演機会を増やしているのです。

 なぜ芸人たちは「笑われる」「芸人として恥ずかしい」と紙一重のグダグダキャラを自ら選んでいるのでしょうか?

◆棲み分けが進むグダグダキャラ

 もともと多くのお笑いコンビには、「ネタを作る人はクレバー系の笑いを、ネタを作らない人は天然系の笑いを取ろう」という傾向が見られ、これがグダグダキャラのベースとなっています。

 実際、前述した4人でネタを書いているのは草薙さんだけ。その草薙さんも自らのグダグダな体験談をもとにしたネタが大半で、クレバー系の笑いを取ることはほとんどなく、「グダグダのキャラクターで笑いを取りたい」という意図が見えます。

 興味深いのは、草薙さんが「出てきたときからずっとグダグダ」、ナダルさんが「ムチャブリでグダグダにされる」、濱家さんが「相方がグダグダのエピソードを連発」、津田さんが「自らのギャグでグダグダになる」と、それぞれグダグダのタイプが異なること。ひとくくりにされがちですが、彼らはグダグダキャラを棲み分けしているのです。

 こういう状況になった理由として業界内で噂されているのは、主に以下の3点。

「『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)で出川哲朗さん、中岡創一さん、温泉同好会の女芸人たちがグダグダのやり取りで人気を得たから」「“マセキ(芸能社)3兄弟”と言われる出川哲朗さん、狩野英孝さん、三四郎・小宮浩信さんがグダグダキャラで多くの出演機会を得たから」「出川さんが国民的人気となったほか、アンガールズ・田中卓志さんが多彩なトークで笑いを取るようになるなど、グダグダキャラのステイタスが上がったから」などと言われています。

 しかし、これらの理由以上に大きいのは、各局のバラエティ制作スタッフがグダグダキャラを重宝しているから。むしろ、グダグダキャラを織り込んだ上で企画を立て、構成を練っているのです。

◆友人や同僚を見ているような親近感

 バラエティのスタッフがグダグダキャラを重宝する理由は、「視聴者に親しみやすさや、人柄の良さを感じさせ、穏やかな笑いにつなげられる」から。「芸人なのに笑いを取るのが得意ではなさそう」というキャラの彼らは、視聴者にとって最も身近な芸能人。どこか友人や同僚を見るような感覚があるものです。

 一方、スタッフにとって彼らは、「MCや共演者にツッコミを入れさせやすい」「強めのドッキリを仕掛けやすい」タイプの芸能人。たとえば、同じツッコミやドッキリをしても、グダグダキャラを起用したほうが「イジメている」「ハラスメントでは?」ではなく、むしろ「仲が良さそう」「愛されている」という雰囲気が出やすいのです。彼らがバラエティで重用されているのは、「イジメを助長する」「パワハラだ」という批判を防ぐための方法とも言えるでしょう。

 現在のバラエティには、今回挙げた芸人のほかにも、コウメ太夫さん、ハリウッドザコシショウさん、永野さん、阿佐ヶ谷姉妹などのスポット的に“グダグダ芸”を披露するタイプの芸人も頻繁に出演。さらにバラエティのスタッフは、芸人以外のタレント、アイドル、アーティストでも、グダグダキャラを積極的に起用して笑いにつなげています。

 芸能事務所や担当マネージャーも、「キャラが弱い」「トークが苦手」などのタレントに、「もっとグダグダなキャラにしてみたら?」と持ち掛けることもあり、しばらくはこの流れは続くのではないでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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