『グランメゾン東京』に緊張感与える玉森裕太というスパイス

『グランメゾン東京』に緊張感与える玉森裕太というスパイス

『グランメゾン東京』の撮影が行われたパリの三ツ星レストラン「ランブロワジー」(写真/ロイター/アフロ)

 作品の魅力を大きく左右するのが主演の脇を固める役者たちの存在だ。このクール、注目度ナンバーワンの日曜劇場の場合はどうか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

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 木村拓哉主演のTBS日曜劇場『グランメゾン東京』(午後9時)が、好評を博しています。視聴率も6話までの平均値が12.6%。秋に始まったドラマの中で頭一つ抜け出る勢いを見せている、と言っていいでしょう。

 このドラマは、パリで評判をとった天才シェフ・尾花夏樹(木村拓哉)の物語。使ってはいけないナッツオイルが混入し要人客が重篤なアレルギー症状をひき起こしてしまった失態でレストランは閉店。尾花は失意のどん底にいたが、女性シェフ・早見倫子(鈴木京香)と出会いもう一度奮起し、「グランメゾン東京」でリベンジを決意する。

 やはり見所は、キムタク演じる尾花夏樹の「求心力」にあるでしょう。パリ時代の仲間だった京野陸太郎(沢村一樹)、相沢瓶人(及川光博)と一人また一人、尾花のもとへ戻ってきて改めて最強のチームを形成。そして三つ星レストランを目指す波乱含みの成長プロセスが描き出されていきます。

 今回のキムタクは、ご本人自身にもまた、リベンジの意欲があったのではないでしょうか。SMAP解散の元凶と言われたり、「何をやってもキムタク」と演技についてもさんざん言われてきた。ここで反転攻勢をかけようと集中力を発揮するのは自然なこと。

 キムタク節と言われてきた軽いセリフ回しは影を潜め、手と体を使って正面から勝負する職人シェフ・尾花になりきっています。尾花はむしろコミュニケーションが不器用。軽口を封印するどころか直接的な表現が激し過ぎて相手との間に対立や摩擦を生む。しかし同時に、尾花の無骨さ、純粋さ、荒々しさがエネルギーとなって多くの人が引き寄せられていく。やはり、このドラマはキムタクの求心力が源になっていて、その周囲に人々が円陣を組むという構図です。

 しかし、私は円陣の外にいるもう一人の存在が気になります。何よりも、尾花のもとに「安易には近づかない」距離を保っている人。そう、かつて尾花の弟子だった若手料理人・平古祥平(玉森裕太)です。

 平古は、他とはひと味違うキャラクター。演じている玉森さんの冷静さ、内面に秘めた強さ、静かに観察するような知的距離感、安易に依存しない緊張感といったものが存分に役作りに反映され、この物語にピタリとはまっています。そう、鋭く薫る香料のように、ぴりっとスパイシーな刺激となっています。

 しかも尾花のもとに集結しなかっただけでなく、ライバルの丹後(尾上菊之助)のレストラン「gaku」のスーシェフになる、という驚きの展開。そもそも平古は師匠・尾花の能力に心酔し憧れていたはず。いったいなぜ、敢えてライバル店のシェフに就いたのか。

 あわせて尾花のパリの店の失態の原因がこの平古にあったことも明かされました。ナッツオイルを使う致命的なミスを招いた張本人が平古だったとは。しかし、それは悪意や意図したものではなく、まさしくミスだったというエピソード。さて、今後このエピソードはどんな伏線として生きてくるのか。尾花のライバルになった意味あいを、どう捉えたらいいのか。平古という人物が物語に謎と緊張感を与え陰翳を落としていて、惹き付けられてしまいます。

 ご存じKis-My-Ft2の玉森さんの所属はジャニーズ事務所。後輩としては木村さんの存在があまりにも巨大でビッグネーム過ぎて、一緒に演じるとなると普通なら萎縮しまうはず。玉森さんも重圧に包まれていることでしょう。しかしそれでも、尾花にどこか負けていない平古がいる。別の個性として、しっかりと役が立ち上がっている。尾花の大物語に溶け込んでしまうのではなく、ピリっとしたひと味を効かせている。その意味で役者・玉森さんに可能性を感じます。今後化ける逸材かもしれません。とにもかくにも平古の動向と今後の展開から目が離せません。

 

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