春風亭一之輔 七夜連続独演会はバカ噺で最高のフィナーレ

春風亭一之輔 七夜連続独演会はバカ噺で最高のフィナーレ

春風亭一之輔の七夜連続独演会の様子を紹介(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、前回の春風亭一之輔のネタ下ろし独演会シリーズ総集編の一夜から三夜に引き続き、四夜から最終日の七夜までの様子についてお届けする。

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〈第四夜〉一席目『普段の袴』は八五郎の言動のバカバカしさが桁外れな上に、周囲の皮肉な対応がまた最高。袴を借りに行くだけでこんなに笑わせるのは一之輔だけ。二席目は『二番煎じ』で、これは「四夜」でのネタ下ろし。志ん朝系の演出をほとんど変えず素直に演じた。

 圧巻だったのが三席目『らくだ』。一之輔版は屑屋のキャラが可愛くて全体のトーンが明るいのが魅力だが、今日は一段とハジケていて笑いどころが多く、酔った屑屋と半次の“立場逆転”の描き方も見事。終盤もテンションが下がらずサゲまで完演。聴き応え満点の熱演だ。

〈第五夜〉一席目『かぼちゃや』の与太郎は今日も真っ直ぐボケて可愛さ炸裂。二席目はデタラメを並べる隠居の暴走に八五郎が「これ『千早ふる』だろ!? ちゃんとやれよ!」と叱る『千早ふる』。度々脱線して「一之輔目線の漫談」を聞かせる隠居に八五郎が思わず「これ落語?」と尋ねてしまうメタ落語な一席。

 三席目は「三夜」でネタ下ろしした『柳田格之進』。一朝の「柳田の娘が他家へ嫁ぐ」ハッピーエンドにもう一幕加えて万屋と柳田との友情が復活するラストは感動的だ。一之輔に似合う大ネタに育った。

〈第六夜〉一席目は主人の留守に奉公人たちが「ラ・マルセイエーズ」を高らかに歌う『味噌蔵』。二席目は「三夜」でネタ下ろしした一之輔の“顔芸”炸裂の『睨み返し』。

 三席目は、『芝浜』の冒頭を演じて「でもこの財布、誰か落とした人が」「誰がだよ」「私が思うに……」という夫婦の会話から、「話は変わりまして」と、革財布の由来を語る新作『芝ノ浜由縁初鰹』、通称『ポル浜』へ。ポルトガル船から落ちて芝浜に漂着した男が銭形平次を巻き込んで繰り広げるスケールの大きな爆笑活劇で、小ネタの数々が回収されるカタルシスも含め、ちょっと三遊亭白鳥風(笑)。最後は「……っていうことじゃないかな」「そんなワケねぇだろ」と冒頭の魚屋夫婦の会話に戻ってサゲ。お見事!

〈第七夜〉一席目は遂に登場した十八番『粗忽の釘』。二席目、高座で一之輔が五本の指で「どれにしようかな……」と決めたのは、これまでさんざん「あんな噺は嫌い」と言っていた、まさかの『芝浜』! 一之輔は一朝譲りの志ん朝型で、美談すぎない程の良さが魅力だ。

 そして三席目は「五夜」でネタ下ろししてお気に入り演目となった『意地くらべ』。こういうバカバカしい噺で七夜を締め括るのが一之輔らしい。最高のフィナーレだった。

●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。

※週刊ポスト2019年12月13日号

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