ジャニーズのレコ大快進撃の源流、『ハッとして!Good』秘話

ジャニーズのレコ大快進撃の源流、『ハッとして!Good』秘話

その後のジャニーズ楽曲に影響を与えた、田原俊彦の名曲はどう生まれたか?

 今年の『輝く!日本レコード大賞』(TBS系、12月30日放送)では『特別音楽文化賞』が新設され、ジャニーズ事務所の創業者であるジャニー喜多川氏(享年87)が受賞。生前の功績が称えられた。

 ジャニーズ事務所は、1980年に田原俊彦の『ハッとして!Good』で初めて最優秀新人賞を受賞。翌年以降も近藤真彦、シブがき隊、THE GOOD Byeと続き、4年連続で栄冠を手にした。

 ジャニーズ繁栄のきっかけとなった1980年の『ハッとして!Good』はどのように誕生したのか。芸能研究家で『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)の著者である岡野誠氏が迫る。

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 1970年代のジャニーズ事務所は停滞期にあり、混沌としていた。1975年に郷ひろみが移籍し、1978年にフォーリーブスが解散。現在と異なり、グループでの活動はJOHNNYS' ジュニア・スペシャルやVIPなど数えるほどで、豊川誕や川崎麻世などソロ歌手を中心に売り出していた。

 1980年代以降に派手でキャッチーでキラキラ感溢れる“ジャニーズ歌謡”が定着したが、1970年代は未都由『帰っておいで』のように演歌っぽい曲調も見受けられた。

 そんな事務所の指針を決定づけた1曲がプロデューサー・ジャニー喜多川氏、ディレクター・羽島亨氏、作詞・作曲:宮下智氏、編曲・船山基紀氏による、田原俊彦の『ハッとして!Good』である。

 1979年秋から翌年春まで放送されたドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)で生徒の沢村正治役を演じて人気を得た田原俊彦は、1980年6月21日に『哀愁でいと』でデビュー。これはレイフ・ギャレットの『New York City Nights』のカバー曲だった。

 作詞家の小林和子氏は『金八先生』のVTRを取り寄せ、田原の演技をじっくり鑑賞した上で、〈寂しそうな役柄だったので、『哀愁』という言葉が彼に合うかなと思いました〉(拙著『田原俊彦論』より)と日本語詞を付けた。

 つまり、『哀愁でいと』の歌詞は“陰”のある沢村正治役のイメージから連想されたもので、1970年代ジャニーズの面影が残っていた。同曲は当時の人気番組『ザ・ベストテン』(TBS系)で3週連続1位に輝くなど大ヒットしたが、カバー曲のため、歌謡界で権威のある『日本レコード大賞』の選考では対象外となる。絶対に2曲目をヒットさせる必要があった。

 そんな重圧の中で生まれたのが、9月21日発売の『ハッとして!Good』だった。当初は別の曲に決まっていたが、直前にジャニー氏が却下。ディスコブームの流れからビージーズのようなサウンドを求めていた彼の意向を汲み、ディレクターの羽島氏が長くアメリカに留学していた作家の宮下氏に白羽の矢を立てた。

 出来上がってきた楽曲をダンスミュージックにするように依頼された編曲の船山氏は、グレン・ミラーのようなスウィングのリズムを取り入れた。すると、新時代の到来を予感させるような明るくてキラキラした曲調に仕上がり、キャッチーな歌詞も相まって田原俊彦の“陽”が引き出された。

 オリコンの歴代編曲家シングル総売上2位で、沢田研二『勝手にしやがれ』など2700を超える編曲を手掛けている船山氏は、羽島氏との対談で、〈「ハッとして!Good」は僕としても会心のアレンジだった。あんなに思い通りにいった曲は後にも先にもなかったよ〉(書籍『ヒット曲の料理人 編曲家・船山基紀の時代』(リットーミュージック)より)と振り返っている。

 天才たちの才能が掛け合わされた『ハッとして!Good』は、松田聖子の『青い珊瑚礁』や河合奈保子の『ヤング・ボーイ』などを抑え、ジャニーズ事務所初の『日本レコード大賞』最優秀新人賞に輝いた。

 その後も、ジャニー氏を始めとするカルテットが田原俊彦を通して“派手でキャッチーでキラキラ感溢れる歌”を生み出して行き、この系譜は現在のKing & Princeにも受け継がれている。ジャニーズ快進撃の源流は、1980年の『ハッとして!Good』にあったのだ。

【参考文献】羽島亨著『ヒット曲は発明だ!』(ポニーキャニオン音楽出版)

■文/岡野誠:ライター・芸能研究家。著書に『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記1979-2018』(青弓社)。同書には『哀愁でいと』『グッドラックLOVE』『抱きしめてTONIGHT』などの楽曲誕生過程も詳細に記されている。2020年2月8日13時半から、大阪・ロフトプラスワン WESTで元CHA-CHAの木野正人とトークイベント『“職業:男性アイドル”の考察とジャニー喜多川氏の果たした役割』を開催。

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