ブルゾン、池崎、ノラ ナベプロピン芸人が一発屋にならぬ訳

ブルゾン、池崎、ノラ ナベプロピン芸人が一発屋にならぬ訳

今年、ブレイクした芸人の代表格、ブルゾンちえみ

 今、バラエティー番組で欠かせない存在となっているのが、ワタナベエンターテインメント所属のピン芸人たちだ。彼らの多くはブレイクしても、一発屋にならず末永く活躍している。その理由について、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 ブルゾンちえみさんとサンシャイン池崎さんがブレイクしてから、半年が過ぎようとしていますが、その勢いはいまだ健在。近年、芸人の消費されるスピードが速くなり、「一発屋は半年もたない」と言われていただけに、「意外だな」と思う人も少なくないでしょう。

 さらに、バブルキャラの平野ノラさんはブレイクから1年を超えましたし、熱血空回りキャラのあばれる君に至っては約3年半が過ぎました。すでに一発屋の範ちゅうを超える活躍を見せているのです。

 この4人の共通点は、所属事務所がワタナベエンターテインメント(渡辺プロダクション、通称ナベプロ)のピン芸人であること。同事務所はかつて、青木さやかさん、波田陽区さん、にしおかすみこさんなど多くの一発屋を輩出してきましたが、その後ブレイクしたイモトアヤコさんを筆頭に、息の長い活躍を見せるピン芸人が増えています。

 今なぜナベプロのピン芸人がブレイクしているのでしょうか? なぜ一発屋に終わらず息の長い活躍を見せているのでしょうか?

◆スタッフと視聴者にウケる人の良さ

 ブルゾンちえみさんの濃いメイクと「35億」、サンシャイン池崎さんのタンクトップ+ハチマキと「イエエエ~イ」「ジャスティス」、平野ノラさんの肩パットジャケット+ソバージュと「OKバブリー」「しもしも」を見れば分かるように、最大の特徴はインパクト十分のルックスと決めゼリフ。ただ、これだけなら典型的な一発屋になってしまいます。

 ナベプロのピン芸人が一発屋で終わらないのは、「にじみ出るような人の良さを感じさせる」から。思いも寄らないボケで爆笑を狙うのではなく、身の丈をわきまえた定番ギャグに徹するため、視聴者から見たら「安心・安定」、番組制作サイドから見たら「番組の流れを邪魔せず計算できる」存在なのです。

 また、人をおとしめるようなネタやコメントはせず、下ネタを使わないため、視聴率獲得のためにファミリー層を狙うテレビ番組との相性は抜群。元気で明るいイメージもあり、強いツッコミを受けてもイジメられているような印象を与えずに済みます。そのため、常に新しいものを求めるネットユーザーよりも、分かりやすい笑いを求めるテレビ視聴者のほうが評価は高いと言えるでしょう。

 人の良さを感じさせる芸風は、先輩の中山秀征さん、恵俊彰さん、ネプチューン、ビビる大木さんらを見ても一目瞭然。話術とコンビ芸が武器のよしもと、職人的な佇まいの人力舎、コメントの切れ味で勝負する太田プロなど、芸人らしさを前面に出す他事務所とは真逆のベクトルです。

◆早期ブレイクを狙う“促成栽培”

 ナベプロのピン芸人が一発屋で終わりにくいもう1つの特徴は、“促成栽培”であること。ブルゾンちえみさんは現在芸歴2年目の26歳ですし、あばれる君は芸歴5年目の27歳、厚切りジェイソンさんは何と芸歴4か月の28歳でブレイクしました。

 さらに、平野ノラさんもデビューが遅いため現在38歳ですが、まだ芸歴6年目の若手。思えばイモトアヤコさんは、芸歴2年目の21歳で『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)のレギュラーを勝ち取りました。

 他事務所と比べると明らかにブレイクの時期が早く、フレッシュさや勢いを強みにしているのです。そんな早期ブレイクに一役買っているのは、同社が運営する『ワタナベコメディスクール』。養成所の段階から早期ブレイクを目指して「どのキャラとネタでいくのか?」を考え、可能性のある生徒と契約し、テレビ局への売り込みだけでなく自社制作の番組に出演させるなど、早めに脚光を当てているのです。

 彼らは若く芸歴が浅い分、お世辞にもトーク力があるとは言えません。しかし、無理にうまいことを言おうとするのではなく、自然体のリアクションを押し出すことで、前述したような「若いから素直で一生懸命」と人の良さを感じさせています。

 余談ですが、私が何度か芸人同士の飲み会に参加したとき、ムチャ振りからのボケ合戦や大喜利がはじまることがありました。すると、よしもとや人力舎の芸人は次々に言葉を発していきますが、ナベプロの芸人が繰り出すのは表情や仕草。耳よりも目に訴えかけるようなイメージで笑わせようとするのです。

 たとえるなら、「話術を競うM-1ではなく、キャラの濃さを競うR-1狙い」というスタンス。だから、「多くのテレビ番組からオファーを受けやすく、番組内のワンコーナーでも使いやすい」ピン芸人を重点的に養成しているのでしょう。

 もともとITビジネスマンの厚切りジェイソンさんが土日を使って『ワタナベコメディスクール』に通っていたように、応募資格は15~45歳と門戸は広く、養成所の段階から早期ブレイクを意識しているのは間違いありません。一部で「タレントの使い捨て」「しっかり育てていない」などの批判も見られますが、他事務所のような「アラフォーになってようやくテレビに出られるようになった」と自虐話をする芸人ばかりなのもおかしい気がします。

◆芸風を生かしつつ活動の幅を広げる

 ブルゾンちえみさんは、現在ドラマ『人は見た目が100パーセント』(フジテレビ系)にメインキャストで出演し、演技の評判は上々。サンシャイン池崎さんも、リポーターやドッキリ芸人としての出演が増えていますし、『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)では意外な大喜利の技も見せました。

 共通しているのは、いたずらに持ちネタを消費していないこと。ベースの芸風を生かす形で活動の幅をジワジワ広げ、その中で人の良さを感じさせている様子がうかがえます。

 ここで挙げた以外も、「女芸人一の美人かつ変人」と言われる小杉まりもさん、東大大学院卒で外資系コンサル大手・マッキンゼー・アンド・カンパニーの勤務歴を持つ石井てる美さん、元サッカー日本代表の父を持ち芸歴3か月の20歳で『イッテQ!』出演を果たした森山あすかさんなど、ピン芸人の人材は多彩。先輩たちが一発屋で終わらない分、競争は熾烈ですが、下半期もナベプロから新たなスターが生まれるかもしれません。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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