ラジオ聴取率過去最低水準も聴き方変化で「自由に聴く時代」

ラジオ聴取率過去最低水準も聴き方変化で「自由に聴く時代」

TBSラジオの橋本吉史プロデューサー

『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で、放送批評懇談会の第54回ギャラクシー賞『ラジオ部門DJパーソナリティ賞』を受賞した星野源(36才)は、受賞スピーチでこう語った。

「ぼくは小学生の時からラジオを聴いてて、家ん中では小学生の頃から深夜までAMを聴いていて、両親と一緒に仕事の手伝いとかで外に出る時とか車で移動するときは、いつもFMが車の中で流れていました。車の中では面白い世界中の音楽を毎日聴いて、そして家の中ではいろんな人たちの面白いおしゃべりをたくさん聴いていました。(中略)

 なのでこの場に立たせていただけて、受賞できたことは、目の前のひとりのリスナーの、ラジオの前でひとりで聴いている、もしくはラジコでイヤホンで聴いている、メールをくれたり、ツイッターとか実況してくれたりしてくれているリスナーのお陰だと思っています」

 星野は50年の歴史がある『オールナイトニッポン』(以下ANN)で火曜日を担当する。本人のラジオへの愛もすさまじいが、ファンの熱量もまたすごい。

 先月始まった冠番組『おげんさんといっしょ』(NHK)は、視聴者のツイート数が12万を超えた。1時間番組ながら『紅白』の3倍ものツイート数をたたき出し、この数字はラジオリスナーの動きと連動しているという見立てがある。

 TBSラジオの橋本吉史プロデューサーが解説する。

「もともと1つのものを語り合う文化がラジオファンにあったからこそ、あそこまで大きく動いたんだと思うんです。ラジオを聴くのは個人単位ですが、番組を通じて意見交換をすることで、“自分と同じ思いを持っている人がこんなにいたんだ!”とつながりが感じられて、わぁっとみんなで盛り上がっている感覚を共有する。パーソナリティーを中心に人が集まっている雰囲気。それってSNSと共通する感覚なんですよね」

 昨今、ラジオ全体の聴取率は元気がない。2017年2月の聴取率は、5.6%と過去最低記録にほぼ等しい寂しい数字となった。ただし、数字だけで語るのはいささか気が早い。現代ではその“聴き方“が大きく変化しているのだ。

 星野も受賞スピーチで話していた「ラジコ(radiko)」は、インターネットを介してラジオが聴けるサービス。ラジオの機材がなくても、パソコンやスマホがあれば簡単に視聴できる。特筆すべきは、ラジコの「タイムフリー」機能。過去1週間内に放送された番組を無料で聴くことができるため、聞き逃した番組もキャッチアップできる。

 同じくインターネット経由の配信サービス「ポッドキャスト」でも、お気に入りの番組をダウンロードして好きな時間に繰り返し視聴することができる。

 これらのラジオを取り巻く新しいサービスの始まりが、聴取率だけではラジオの影響を語れない理由だ。テレビ番組を録画して視聴する層が増えたため、表面上は視聴率が下がったように見える現象があるが、ラジオでも同様のことが起きている。トランジスタラジオでリアルタイムに周波数を合わせて聴くだけの時代から、よりラフで自由にラジオを楽しめる時代へと変化してきているのだ。

 脳画像診断医で「脳の学校」代表の加藤俊徳さんは、視覚的な情報がなく、“耳を澄ます”ことに意識を集中しなければいけないラジオの聴取を習慣づけることで、“聴く力”が育つと話す。

「人と人とのコミュニケーションは聴くことに依存しているんです。年を取ると怒りやすくなったり、誤解が生じやすくなります。それは相手が言っていることを充分聞いていなかったり、聞いたことをきちんと理解していなかったりすることが多いから。つまり〝聴く力〟が衰えているせいなんです。ラジオを聴くと、耳の内側にある側頭葉の言語野が刺激され、聴く力が育ちます。ラジオって聴いている最中はどのように話の展開が変わるかわからないですよね。聴くという一点に意識を向けるから、集中力もつくんです」

 おすすめは、布団の中で聴く“寝ながらラジオ”だという。

「暗闇で寝転がっていると、感覚が遮断されて、音にまつわる聴覚が研ぎ澄まされます。寝る間際にラジオを聴くと、音に対する習慣が身につく。だらだら流すのではなく、意識的に聞き耳を立てる。すると、英語の放送なら“英語脳”が育ちます」(加藤さん)

※女性セブン2017年6月29日・7月6日号

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